第606回:世界最大のバイクショー「EICMA」を取材 現地で感じた“変化の兆し”とは?
2019.11.23 エディターから一言 拡大 |
世界中のバイクメーカーや用品メーカー、部品メーカーが一堂に会する、国際規模のバイクショー「ミラノモーターサイクルショー」(EICMA)が、今年(2019年)も11月5日~11日の日程で開催された。あまたの新製品が発表される現場ならではの“すごみ”とともに、会場で感じた“変化の兆し”とは?
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“事件がおきる現場”としてのEICMAのすごみ
今年もEICMAは盛大だった。毎年11月の2週目を使い、イタリア・ミラノのエキシビション会場「Fiera Milano-Rho(フィエラ・ミラノ=ロー)」で開催されるこのイベントは、主に翌年発売が予定される最新モデルを発表する見本市。世界中の二輪車メーカーおよび二輪用品メーカー、そしてパーツメーカーなどが参加する。
主催者発表によると、100年以上の歴史を持ち今年で開催77回目を迎えたEICMAは、プレスデーを含めた6日の会期で80万人に迫る来場者を記録。昨年(2018年)から2つパビリオンを増やし、合計8つのパビリオンに40を超える国と地域から1887の出展社がブースを構えたという。
各社の出展内容を見ても、今年はホンダが「CBR1000RR-R FIREBLADE(ファイアーブレード)」を発表。2008年以来11年ぶりに、自社製スーパースポーツモデルをエンジンからフレームまで一新するフルモデルチェンジを行うと同時に、世界共通で“ファイアーブレード”をモデル名に明記した。
またカワサキは、イタリアの老舗スポーツバイクメーカー「bimota(ビモータ)」と合弁会社を設立。「カワサキ・ニンジャH2」のスーパーチャージャー付きエンジンと、ビモータ伝統のセンターハブステアを採用した新型車「ビモータTESI H2(テージ エイチツー)」を発表し、周囲を驚かせた。
いずれも前々からウワサはあったものの、やはり実際の発表の場には独特の雰囲気がただよい、またその現車も、映像では伝わらない迫力や匂い立つオーラに包まれている。
こうした“事件の現場”として、EICMAはいまだ最高の場所なのだと再認識した。
トレンドの変化は“長い目”で取材しないと分からない
また、今年は電動バイクメーカーの出展が多く見られた。EICMAはこれまでにも積極的にこうしたメーカーの参加を促しており、今回もすでに欧州やアメリカで販売実績を持つ複数のブランドがブースを出展。加えて、スタートアップ的な新興ブランドも見られた。
一方、用品・アパレル関連では、ライディングウエアブランドが展開するエアバッグアイテムのシェア争いが激化していると感じた。アルパインスターズやダイネーゼ、イン&モーションという、MotoGPでも認可を得ているエアバッグシステムのトップブランドは、エアバッグの体験やシステム認知のための展示を積極的に行い、さらに新しいエアバッグシステムを持つブランドも複数出展していた。
しかし、こういった新しいシステムを用いたアイテム&ブランドの出展には潮流があり、そのカテゴリーの市場での価値や、他の技術やプロダクトとの連携によって、トレンドがあまりに早く動いてしまう。したがって、「去年盛り上がった“アレ”が今年は全然」なんてこともある。
淘汰(とうた)にはさまざまな理由があり、顛末(てんまつ)を見極めるには状況を注意深く掘り下げる必要がある。今の時点におけるブース出展の有無だけでは量れないのだ。
ここまでは過去のEICMAにも共通する事象だが、今回は大きな変化も見られた。ドゥカティとヤマハが、EICMA会期中にプレスカンファレンスを行わなかったのだ。
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SNSの普及がもたらしたメーカーの姿勢の変化
ドゥカティとヤマハはイタリアでの人気が高く、EICMAでは“主役”ともいえるブランドだ。そんな彼らがEICMAでニューモデル発表の場を設けなかったのは、大きな変化だったといえるだろう。
プレスカンファレンスがない代わりに、彼らは別の場所や方法でニューモデルをお披露目した。ドゥカティは約2週間前にイタリア・ミサノでニューモデル発表会を開催。その様子はSNSを通して世界中にライブ配信された。また、ヤマハはプレスデー2日前の現地時間11月3日21時に、自身のSNSチャンネルでニューモデル紹介の動画を配信した。
現在、二輪メーカーはSNS運用に力を入れており、それらを利用すれば数万人(メーカーよっては数十万人)に直接コンタクトできる。特にヤマハとドゥカティは、SNSを積極的に活用しているブランドだ。それらを駆使すれば、プレス向けにわざわざ発表会を行う必要がない、という考え方もある。
同時に、EICMAの一般公開日に向け期待感を爆発させるプレスカンファレンスを行わないということは、両メーカーのマーケティング戦略における“EICMAの立ち位置”が変わってきた、という見方もできる。
この判断に他メーカーが追随する可能性も大いにあるだろう。そうなれば、先に述べた“事件現場”としてのEICMAの価値は、変化を余儀なくされるのかもしれない。
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製品の訴求からブランドコミュニケーションへ
EICMAに期待する役割の変化という意味では、今回、より積極的なチャレンジを見せたのはBMWだったのではないだろうか。
EICMAではほとんどの二輪メーカーが、ニューモデルを含む全ラインナップをブース内に並べ、来場者がそれらに触れられる環境をつくっていた。しかし今年のBMWは、新たに発表した3モデルを、カラーバリエーションを含めてブースの“端”に展示。主力である「GS」シリーズや「R nineT」シリーズはさらに端に追いやり、展示車が無いモデルファミリーさえあった。
そこまでしてBMWは、ステージを中心にすり鉢状の観客席を確保。そこで何度もニューモデルの発表と詳細の説明を行い、またファクトリーライダーのトークショーや、話題のコンセプトモデル「コンセプトR18」のデザインを題材にした開発者のトークショーを実施するなど、さまざまなコンテンツを用意した。
要するに、ただ新しいモデルに見て触れられる場を設けるだけではなく、ブランドの認知度を高めるためのコミュニケーションの場としたのだ。この試みがBMWにどういう結果をもたらすのか。それを知るには、もう少し時間が必要だろう。EICMA直前に東京モーターショーを見ただけに、筆者自身が必要以上に深読みしてしまい、こんなデリケートな反応をしてしまったのかもしれないが……。
いずれにせよEICMAは、今年もトピックにあふれていた。今回筆者は、初日から土曜日までずっと会場にいたが、それでも各所を注意深く見てまわり、話を聞くには時間が足りなかった。来年は、最終日の日曜まで会場にいたいと思う。
(文と写真=河野正士/編集=堀田剛資)
◆ミラノモーターサイクルショー「EICMA」のフォトリポートはこちら
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河野 正士
フリーランスライター。二輪専門誌の編集部において編集スタッフとして従事した後、フリーランスに。ファッション誌や情報誌などで編集者およびライターとして記事製作を行いながら、さまざまな二輪専門誌にも記事製作および契約編集スタッフとして携わる。海外モーターサイクルショーやカスタムバイク取材にも出掛け、世界の二輪市場もウオッチしている。
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