冒険ライダーの心をくすぐる「ホンダCT125ハンターカブ」の魅力と新しい楽しみ方
2020.04.06 デイリーコラムおかげさまで大人気
2020年6月26日に発売されるホンダのニューモデルが「CT125ハンターカブ」(以下、CT125)である。その日までまだたっぷりと時間があるにもかかわらず、すでに8000台という年間販売計画台数(国内)をクリア。2019年の東京モーターショーで披露された時の歓迎っぷりが、そのまま受注につながっている格好だ。
四輪の市場規模からすれば、8000台はどうってことない数字に見えるに違いない。同じくホンダの新型「フィット」は年間12万台を見込んでおり、台数に主眼を置いていない(であろう)オープン2シーターの「S660」ですら、年間9600台の需要(2015年3月当時)を想定していた。
ただし、二輪界においてこれはかなり強気である。CT125のベースになった「スーパーカブC125」のそれは3000台にすぎず、最もベーシックな「スーパーカブ」は2万2000台を掲げているが、これは「50」や「110」といった4機種のシリーズをすべて合わせたもの。CT125に近いコンセプトを持つ「クロスカブ」も「50」と「110」の2機種でようやく5200台である。
このことからも分かる通り、単一機種で8000台というのは突出している。さらに言えば44万円というかなりの高価格にもかかわらず、それを達成してしまったのだ。
CT125が広く受け入れられようとしている理由はどこにあるのか?
まず、ネオクラシックとアドベンチャーというふたつの要素が兼ね備えられていることが挙げられる。1981年に登場した“オリジナル”のハンターカブ「CT110」の雰囲気が見事に再現され、クロスカブ50/110ではやり切れなかった「ここがこうだったら」がすべて盛り込まれている。
アップタイプのマフラー、ハイマウントのエアクリーナー吸入口、ロングストロークのサスペンション、エンジンを保護するためのプロテクター、頑強な大型リアキャリア……といった専用パーツがそれで、これらはCT110的であるのと同時に、すべてアドベンチャー的でもある。小さなボディーにタフな機能を詰め込んだその様に、多くの人が「スズキ・ジムニー」や「カシオG-SHOCK」に通じる本気のサバイバル力を感じているのだ。
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「乗ってみたい」と思わせるパッケージの妙
CT110にはあり、CT125では省略された装備もある。副変速機がそのひとつだ。4段ギアボックスの減速比を「H」(ハイ)から「L」(ロー)に切り替えられるこの仕組みは、登坂力を高めるためのもの。牧場の急斜面や狩猟場のぬかるみで威力を発揮する、超実用のサブトランスミッションである。もっとも、日本の環境で必要とされる場面は少なかったせいか、CT110では海外仕様車に限って装備されていた。
ちなみに、副変速機の需要が国内でまったくなかったのかといえば、そうでもない。この機構はCT110の国内導入より13年も前、1968年に登場した「CT50」に「スーパートルク」という呼称で搭載され、4.8PSの限られたパワーを後押しした。もうひとつちなみに、「ハンターカブ」という呼称は日本独自のものだ。1962年に登場した「ハンターカブ55」に採用されたのが最初で、実際にカタログのビジュアルにはキジを撃つハンターが登場。「走る+射つ」「カブで射つ!」というコピーが踊っていた。
さて、確かなヒストリーと機能美を持つCT125だが、そうしたことを抜きにして、ごく単純に「乗ってみたい」「扱いやすそう」と思わせるパッケージのよさにも魅力がある。
800mmのシート高が良好な足つき性と、その低重心設計が抜群の安定性を実現。120kgの装備重量はスーパーカブC125より10kg重いものの、強化されたフレームや足まわりのことを思えば納得の数値だ。重いといってもバイクとしては十分に軽い。
誰が乗っても不安なく走り出せ、かといって簡単過ぎない操作方法も絶妙だ。スーパーカブでおなじみのロータリー式トランスミッションは、マニュアルのだいご味とオートマチックの安楽さを両立。バイクに慣れている人は「なにをいまさら」と思うかもしれないが、免許取り立てのビギナーや、久しぶりにバイクの爽快さを味わいたいと思い立ったリターンライダーにとって、これほど心強い機構はない。
一生遊べる無敵のコンビネーション
こうした利便性や安心感が、愛玩的なデザインに凝縮されているのだからヒットもうなずけるというものだ。スニーカー感覚での普段使いはもちろん、山へ分け入るような非日常ユースまで幅広くカバー。高いスキルがなくても“二輪+二足”でそれをかなえてくれるバイクは、他にそう多くはない。「CRF1100Lアフリカツイン」には無理でも、CT125ならたどり着ける場所があり、見られる景色があることを教えてくれる。
快適なツーリングや環境が整えられたアウトドアではなく、冒険や挑戦の成分が多めな旅に出たくなった時に、CT125は最適だ。ただ、今ディーラーに駆け込んでも納車にはしばらくかかりそうなので、それを待つ間、ホンダの軽トラック「アクティ トラック」も手に入れておくというのはどうだろう?
そしてCT125が納車されたあかつきには、アクティにそれを載せて出掛け、いい稜線(りょうせん)を見つけたら荷台から降ろしてトレールランを楽しむ。そうやって少しずつ全国を巡れば、一生充実したモーターライフを送れると思う。
突拍子もないことを言い出しているようだが、価格を見ると意外と現実的である。というのも、アクティの最上級グレード「TOWN」(4WD/5MT)の車体価格は123万2000円で、これにCT125の44万円を足しても167万2000円である。CRF1100Lアフリカツインのベーシックグレードが161万7000円、最上級グレードが190万円を大きく超えることを踏まえると、なんだか“軽トラ+バイク1台”の組み合わせのほうに、夢の広がりを感じないだろうか?
人ごとだと思ってテキトーなことを言うな、とお叱りを受けそうだが、私はすでにこれを実践している。組み合わせこそ異なるが、半年ほど前にスズキの「バンバン200」(新古車で約40万円)と「スーパーキャリイ」の「L」(4WD/5MT、119万3500円)を同時購入。時間を見つけてはひとり旅を満喫しているのだ。これがもうたまらなく楽しい。「移動する」「登る」「越える」「眺める」といったあれこれを、必要最小限のスペックとサイズ、スペースで満たしてくれる最良の選択がバンバンであり、スーパーキャリイだった。
今ならバンバンがCT125に代わっていてもなんら不思議ではない。それだけの価値があるヘビーデューティーギアである。
(文=伊丹孝裕/写真=本田技研工業、スズキ、伊丹孝裕/編集=堀田剛資)
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伊丹 孝裕
モーターサイクルジャーナリスト。二輪専門誌の編集長を務めた後、フリーランスとして独立。マン島TTレースや鈴鹿8時間耐久レース、パイクスピークヒルクライムなど、世界各地の名だたるレースやモータスポーツに参戦。その経験を生かしたバイクの批評を得意とする。
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