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メルセデスAMG GLC43 4MATICクーペ(4WD/9AT)

わがまま 全部盛り 2020.08.26 試乗記 生方 聡 プレミアムブランドにおける今日のトレンドのひとつであるSUVクーペをベースに、AMGが走りを仕立てた「メルセデスAMG GLC43 4MATICクーペ」。SUVで、クーペで、しかもAMGという欲張りな一台は、どのようなクルマに仕上がっていたのか? その実力を確かめた。
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思わず道を譲りたくなる

週末の高速道路に渋滞が戻ってきた。こんなときはイライラせず、アダプティブクルーズコントロールにアクセル操作をまかせて、クルマ観察を楽しむようにしているのだが、あらためて路上を見まわすと、ここ日本もSUVブーム真っただ中であることを実感する。その中心は日本メーカーのコンパクトSUVだが、大きく派手なクルマが多いだけに、BMWの「X4」や「X6」、メルセデス・ベンツの「GLCクーペ」や「GLEクーペ」といった、いわゆるSUVクーペについ目がいってしまう。

特にこの日の渋滞では、立て続けに3台のGLCクーペに遭遇し、そのスタイリッシュな後ろ姿に目を奪われてしまったのだが、数日後、そのAMGモデルである「GLC43 4MATICクーペ」に試乗することになったのは何かの縁だろうか。

ふつうのGLCクーペでも十分派手なルックスだが、このAMG GLC43 4MATICクーペは、標準モデルに比べて全幅が40mm幅広く、全高が20mm低いワイド&ローのフォルムを与えられているうえに、「メルセデスAMG GT」をほうふつとさせる垂直フィンデザインのAMG専用ラジエーターグリルを手に入れたことで、押しの強さは天下一品。バックミラーにその姿を確認したら、すぐに道を譲りたくなるような、強い存在感の持ち主である。

リアへ向けて流れ落ちるようなルーフラインが特徴的な、メルセデスの「GLCクーペ」。日本導入は2017年2月で、2019年10月にAMGモデルともどもマイナーチェンジを受けた。
リアへ向けて流れ落ちるようなルーフラインが特徴的な、メルセデスの「GLCクーペ」。日本導入は2017年2月で、2019年10月にAMGモデルともどもマイナーチェンジを受けた。拡大
試乗車には本革シート(写真)やBurmesterサラウンドサウンドシステムなどからなる「レザーエクスクルーシブパッケージ」が装備されていた。標準仕様の「GLC43」には、合成皮革のAMGスポーツシートが装備される。
試乗車には本革シート(写真)やBurmesterサラウンドサウンドシステムなどからなる「レザーエクスクルーシブパッケージ」が装備されていた。標準仕様の「GLC43」には、合成皮革のAMGスポーツシートが装備される。拡大
マイナーチェンジによって10.25インチにワイド化されたディスプレイ。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」が搭載されている。
マイナーチェンジによって10.25インチにワイド化されたディスプレイ。対話型インフォテインメントシステム「MBUX」が搭載されている。拡大
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昔ながらのインパネがなじむ

GLC43 4MATICクーペにこのAMG専用ラジエーターグリルが採用されたのは、2019年冬にデリバリーが開始されたマイナーチェンジ版から。それとともに、搭載される3リッターV6ツインターボエンジンもパワーアップが図られている。GLCクーペの「220d」と「300」がそれぞれ2リッター直列4気筒のディーゼルターボとガソリンターボを搭載するのに対して、このAMG GLC43 4MATICには3リッターV6ガソリンのツインターボエンジンを採用。マイナーチェンジ前に対し、ターボの大型化などにより最高出力は23PS(17kW)アップの390PS(287kW)となった。最大トルクは520N・m(53.0kgf・m)に及ぶ。

これに組み合わされる4WDは、前:後ろ=31:69とリア寄りのトルク配分を基本とする「AMG 4MATIC」で、後輪駆動に近いスポーティーな走りが期待できる。

運転席に陣取ると、「Cクラス」由来のコックピットが妙に落ち着く。最近のメルセデスのインテリアは、メーター部のひさしを廃止し、12.3インチのティスプレイ2枚を統合したワイドスクリーンを装備している点が特徴だが、このGLCクーペでは、メーターパネルとダッシュボード中央に位置するインフォテインメントシステムのディスプレイが独立している。メルセデスとしては古い様式ではあるが、こちらのほうがなじむというか、ホッとするというのが個人的な感想だ。

縦格子のフロントグリルは往年の公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に参戦した「300SL」をモチーフにしたもの。今日におけるAMGモデルのトレードマークだ。
縦格子のフロントグリルは往年の公道レース「カレラ・パナメリカーナ・メヒコ」に参戦した「300SL」をモチーフにしたもの。今日におけるAMGモデルのトレードマークだ。拡大
3リッターV6ツインターボエンジンのアウトプットは、520N・mという最大トルクはそのままに、最高出力は23PSアップの390PSとなった。
3リッターV6ツインターボエンジンのアウトプットは、520N・mという最大トルクはそのままに、最高出力は23PSアップの390PSとなった。拡大
最新のメルセデス車では、2枚の巨大スクリーンによってインターフェイスを構成するのが主流だが、「GLC」シリーズでは、バイザー付きのメーターパネルとインフォテインメントシステム用のディスプレイが独立して装備される。
最新のメルセデス車では、2枚の巨大スクリーンによってインターフェイスを構成するのが主流だが、「GLC」シリーズでは、バイザー付きのメーターパネルとインフォテインメントシステム用のディスプレイが独立して装備される。拡大

太いトルク 鋭いレスポンス

一部にパンチング加工が施されるステアリングホイールは、タッチ式のコントロールボタンが備わるなど、使い勝手のよい最新の仕様にアップデートされている点がうれしいところ。早速スタートボタンを押すと、太いエキゾーストノートを伴いながら、自慢の3リッターV6エンジンが目を覚ました。

このクラスにおけるSUVのエンジンがディーゼルにシフトしているだけに、パワフルなガソリンのツインターボは実に新鮮だ。3リッターと排気量に余裕があるぶん、低回転から強力なトルクを発生。1000rpmを上回ったあたりからすでにその実力の片りんは感じられ、街中から高速走行まで、ふだんの走りなら2000rpm以下で事足りる。控えめな走行モードの「コンフォート」を選んでも、アクセルペダルに対するエンジンのレスポンスは鋭く、右足をさらに深く踏み込みたいという衝動に駆られるのだ。

そんな誘惑に負けて右足に力を込めると、快音とともに、2000rpm台後半あたりから6000rpm超えまで一気にエンジンが吹け上がる。AMGの名にふさわしい強烈な加速は、SUVにしておくのが惜しいほどだ。

排気量に余裕があるため、トルクは低回転域から十分に力強く、アクセル操作に対するレスポンスも鋭い。
排気量に余裕があるため、トルクは低回転域から十分に力強く、アクセル操作に対するレスポンスも鋭い。拡大
ステアリングホイールには、表面を上下左右になでたり、押し込んだりすることで、メーターの表示などを操作できるタッチ式のコントロールボタンが配されている。写真の黒いボタンがそれだ。
ステアリングホイールには、表面を上下左右になでたり、押し込んだりすることで、メーターの表示などを操作できるタッチ式のコントロールボタンが配されている。写真の黒いボタンがそれだ。拡大
メーターはフルデジタル(「GLC220d」を除く)で、AMGモデルにはGセンサーやブースト計などの機能も備わる「AMGメーターパネル」が装備される。
メーターはフルデジタル(「GLC220d」を除く)で、AMGモデルにはGセンサーやブースト計などの機能も備わる「AMGメーターパネル」が装備される。拡大

“クーペ”でも優れた実用性

AMG GLC43 4MATICクーペには、AMGモデル用に開発された「AMG RIDE CONTROL+エアサスペンション」が装着される。前:255/45ZR20、後ろ:285/40ZR20サイズのタイヤとともに3リッターV6ターボのパワーをしっかりと受け止め、またコーナリング時のロールを抑えてくれるおかげで、安心してカーブに進入していけるのが頼もしいところだ。

一方、荒れた舗装路ではややピッチングが目立つようになり、乗り心地もラフになってくる。目地段差を越えたときには乗員にショックを伝えがちで、快適さという点ではガマンを強いられることもあった。むしろ割り切って「スポーツ」モードを選び、硬めの乗り心地と引き換えにボディーの動きを抑えたほうが、このクルマのキャラクターには合っているかもしれない。

ところで、クーペを名乗るこのクルマには、ルーフラインが低めということもあって、後席やラゲッジスペースが狭いというイメージを持っていたが、実際に乗り込んでみると、後席はヘッドルーム、ニールームともに十分な余裕があるし、ラゲッジスペースも奥行きや幅に不満はなく、多少天地が低いだけで十分な容量を確保している。SUVの「GLC」と比べても50リッター小さいだけであり、ラゲッジスペースの天井まで荷物を満たすという使い方でなければ、GLCクーペでも困ることはないだろう。

パッケージについてはクーペの弱点を克服しているGLCクーペ。そのAMG版であるAMG GLC43 4MATICクーペは、SUVの存在感とクーペのかっこよさ、そしてスポーツカーの興奮を一度に手に入れられるという意味で、欲張りなクルマ好きが選ぶ新しい時代のハイパフォーマンスモデルといえそうだ。

(文=生方 聡/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)

AMGモデルには全車「AMG RIDE CONTROL+エアサスペンション」が装備されており、「AMGダイナミックセレクト」で選択されるドライブモードに応じて、減衰特性が変化する。
AMGモデルには全車「AMG RIDE CONTROL+エアサスペンション」が装備されており、「AMGダイナミックセレクト」で選択されるドライブモードに応じて、減衰特性が変化する。拡大
低められたルーフラインが特徴の「GLCクーペ」だが、そもそものボディーサイズが大きいためか、後席に窮屈さは感じなかった。
低められたルーフラインが特徴の「GLCクーペ」だが、そもそものボディーサイズが大きいためか、後席に窮屈さは感じなかった。拡大
荷室容量は5名乗車時で500リッター、後席をたたんだ状態で1400リッター。大開口のテールゲートにより、積載性にも優れる。
荷室容量は5名乗車時で500リッター、後席をたたんだ状態で1400リッター。大開口のテールゲートにより、積載性にも優れる。拡大
SUVの走破性と機能性、クーペの伸びやかなスタイリング、そしてAMGのスポーティネスを併せ持つ「AMG GLC43 4MATICクーペ」は、欲張りなクルマ好きにもお薦めのハイパフォーマンスカーとなっていた。
SUVの走破性と機能性、クーペの伸びやかなスタイリング、そしてAMGのスポーティネスを併せ持つ「AMG GLC43 4MATICクーペ」は、欲張りなクルマ好きにもお薦めのハイパフォーマンスカーとなっていた。拡大

テスト車のデータ

メルセデスAMG GLC43 4MATICクーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4670×1930×1625mm
ホイールベース:2875mm
車重:1930kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:390PS(287kW)/6100rpm
最大トルク:520N・m(53.0kgm)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)255/45ZR20 105Y XL/(後)285/40ZR20 108Y XL(ミシュラン・ラティチュードスポーツ3)
燃費:9.6km/リッター(WLTCモード)
価格:980万円/テスト車=1057万9000円
オプション装備:レザーエクスクルーシブパッケージ(55万2000円)/ガラススライディングルーフ<挟み込み防止機能付き>(13万円)/メタリックペイント<イリジウムシルバー>(9万7000円)

テスト車の年式:2020年型
テスト開始時の走行距離:2826km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3)/高速道路(7)/山岳路(0)
テスト距離:238.7km
使用燃料:26.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:8.9km/リッター(満タン法)/8.6km/リッター(車載燃費計計測値)

メルセデスAMG GLC43 4MATICクーペ
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メルセデスAMG GLC43 4MATICクーペ(4WD/9AT)【試乗記】の画像拡大
 
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生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

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