第635回:タウンスピードでも味わえるエアロダイナミクス 「モデューロX」自慢の“実効空力”を試す
2020.12.15 エディターから一言 拡大 |
“匠(たくみ)の技”によって仕立てられたコンプリートカー「モデューロX」では、日常的な速度域でも味わえる空力性能「実効空力」が追求されている。最新の「フリード モデューロX」とノーマルの「フリード」などを比較試乗して、その効果を味わってみた。
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カギはフロア下の空気の流れ
実効空力――開発陣がこんな言葉を使い始めたのは、2019年10月のベース車両のマイナーチェンジを受け、2020年5月にあらためて最新改良型が発売されたフリード モデューロXから。専用チューニングサスペンションの採用と空力性能の改善によって、ベース車両をしのぐ高い走りの質感を実現させるのが、ホンダの四輪車用純正用品の開発を担当するホンダアクセスが手がけるコンプリートカー、モデューロXに共通するコンセプトである。その中で、空力による改善をより印象的に表現すべく、前述のタイミングから用いることになったのが、実効空力というフレーズであるという。
ボディー下面中央の空気の流れを、流速を落とすことなくリアのディフューザーへと導いて高い直進性を狙った「S660」のように、実は新型フリード以前に登場したモデューロXでも、実効空力の考え方を採用したモデルは存在している。ただし、ボディーの上屋に新たなデバイスを加えることが難しいフリードのようなモデルでは、特に「床下部分でいかに性能を向上させるか」という点が重要になるという。
それを明確にするべく、実際に実効空力がいかなる役割を果たしているのかを検証するチャンスが用意された。サイドの「エアロフィン」、そして下部の「エアロスロープ」および「エアロボトムフィン」という3つの空力デバイスが装着されたフロントバンパーを装着した最新のフリード モデューロXと、サスペンションとホイールはモデューロX用ながらもバンパーを標準車用に付け替えた比較用モデル、さらには足まわりも標準仕様という3台のフリードを、サーキット上で乗り比べる“特別な試乗会”が開催されたのだ。
運転がうまくなったようだ
まずは標準仕様で走り始めると、当然ながらこれはこれでバランスが取れていて、大きな不満を感じさせられるポイントは全くない。全幅が1.7m未満に抑えられた“5ナンバー”サイズでありながらも、リアドアがスライド式のいわゆるコンパクトミニバンということで、根強い人気を保ち続けていることも理解できる。一方で、そうしたキャラクターゆえに走りのペースを上げていくと、だんだんとライン取りの自在度が低下していくことも明確ではある。
そこから“モデューロの足”(とホイール)を組み込んだモデルへと乗り換えると、向上しろが明確なのはまさに「その辺」のポイントだ。すなわち、ミニバンゆえにあきらめかけていたハンドリングの正確性が向上。一部をパイロンで規制した特設の“狭隘(きょうあい)路”上を、よりリラックスした気持ちで通り抜けられるようになっていた。
さらに、実効空力の向上を狙った本来のバンパーを装着した“真のモデューロX”へと乗り換えると、より緊張感が解けてさらにリラックスした走りを楽しめる。走行した順番的に「ドライバーがコースに慣れてきた」という点を差し引いても、3台の中で修正舵の必要性が最も少ないことは明らかだ。確かにその向上幅は、極端に大きいといえるものではない。が、一方でフとした拍子に「あれ? 運転がうまくなったかな?」と、そう感じさせる程度の違いがあることもまた実感ではあったのだ。
コーナー上に首都高速上の継ぎ目を模した障害物を置いてつくった段差を乗り越えるような場面でも、やはり真のモデューロXの挙動が最も落ち着いて感じられた。一方で、標準仕様に比べるとやや突き上げ感が強いとも思えたので、このあたりは人によって評価が変わるポイントかもしれない。
いずれにしても、「空力デバイスはレーシングスピードにならないと効かないわけではない」と証明をしてくれた、独自の進化を続けるモデューロXなのである。
(文=河村康彦/写真=郡大二郎/編集=藤沢 勝)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
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