第32回:冬こそキャンピングカーに乗るべきだ!? 極寒車中泊のススメ
2021.03.16 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ人生初のキャンピングカー!
コロナななか、楽し過ぎてちと申し訳ないお話ですが、個人的に大発見がありました。それは極寒車中泊のススメ=キャンピングカーは冬に使ってこそ楽しい! ってお話です。
不肖・小沢、実は昨夏に人生初のキャンピングカーを購入しておりました。ところが正直あまり使えておらず。なぜなら登山も釣りもやらないため、自身に夏向きの趣味があまりないからです。それとコロナ禍でなんとなくはばかられるムードもあり、活動を自然とセーブしておりました。
しかし、冬から春にかけてこそ雪山バカたる小沢コージの出番。残念ながら緊急事態宣言が再発令されてしまいましたが、最初の発令との合間を縫って出かけたらこれが楽しい&快適なこと! 漠然とキャンピングカーって夏に使うものでしょ? と考えがちですが、個人的には冬こそキャンピングカー、全天候かつオールシーズンタイプの春夏秋冬レジャーカーであることを痛感したのです。
ってなわけでこの冬の総決算リポートを!
進化する和製キャンピングカー!
人生初購入したのはYouTubeチャンネルの『KozziTV』でも先日公開した小型トラックのキャンピングカーです。というのも、現在の日本で選びやすいキャンピングカーはざっくり3種類。それは小沢も乗ってる「トヨタ・カムロード」ベースの「キャブコン(キャブオーバーのコンバージョン)」と「トヨタ・ハイエース」ほかをベースとした「バンコン(バンのコンバージョン)」、そして軽自動車ベースの「軽キャンパー(文字通り軽のキャンピングカー)」です。かつてキャンピングカーといえば全長5m超が当たり前というアメリカからの輸入物が多く、その手も相変わらずキャンピングカーらしくて人気なのですが、ここ20年ほどの間に日本の道幅やサイズ、風土に合わせた進化を遂げた新たなキャンピングカーが続々とつくられており、それがこの3タイプなのです。
ぶっちゃけ価格は張りますが、最も空間効率がいいのはキャブコン。なぜなら全長5m弱×全幅2m強というコインパーキングにギリギリ止められる床面積の中にキングサイズ、もしくはダブルサイズ以上のベッドが前後2カ所と、大人4~5人が同時に座れるダイニングスペースが設けられているのです(小沢号の場合)。イメージ的には「動く2DKマンション」って感じ。
かたやバンコンはハイエースや「日産キャラバン」がベースでこちらもダブルサイズ以上のベッドを2つ設置できますが、1つを片付けないとダイニングスペースがつくれません。そこが夜寝るときに面倒で、イメージ的には「1DKマンション」。
最後の軽キャンパーはベッドルームが1つで、そこがリバーシブル機構によってダイニングにもなる「ワンルームマンション」って感じ。
価格的にはキャブコンが700万円前後でバンコンが500万円前後、軽キャンパーが200万円前後というところ。小沢が購入したのはキャンピングカーの国内最大手であるナッツRVのベストセラー「クレソンボヤージュ」のプレミアムアウトレットモデル。走行3000km以下のプレミアム中古車でクオリティーはほぼ新車並み。装備を含めると新車で800万円以上するシロモノですが、購入価格は668万円! 購入顚末(てんまつ)記や使ってみてのコスパは今後詳しくリポートいたしましょう。
なぜ真冬にキャンピングカーなのか
論より証拠、小沢が緊急事態宣言の再発令前にヤングなメンバー2人と向かったのは群馬県の丸沼高原スキー場です。標高2000mと国内最高峰のゲレンデで、東京から3時間前後でサラサラのパウダースノーが味わえる人気スポット。
そこでまず試したかったのは実は断熱性です。繰り返しますが、キャンピングカーは夏に使うものと思ったら大間違い。
キャンピングカーは何人寝られるか、何人で食事ができるか、車内で大人も立てるか、キッチン、冷蔵庫、最近では家庭用エアコンや電子レンジがあるかといった、まずはスペースや設備の面に注目が集まりがちですが、最大のキモは「断熱性」。ここがオールシーズンで使ううえで最も効いてくる根本的な性能であり、小沢のクレソンボヤージュにも専用の35mm厚の断熱スチレンフォームを樹脂で挟んだパネルが天井とサイド、床に使ってあり、暖房ひとつあれば真冬でも上はTシャツで過ごせるという触れ込みのシロモノなのです。
さらに、キャンピングカーファン以外にはほぼ知られていませんが、もうひとつ重要なのが「暖房性能」。特に最新国産キャンパーではほぼ当たり前となったFF(強制排気)ヒーターがキモ。キャンパーを買ったことを伝えると「一晩中エンジンかけてるんですか」とか「ウルサくないですか」とか聞かれますが、そういうのとは全くの無縁。キャンパー用FFヒーターは、いわばガソリンか軽油を使った専用石油ファンヒーターであり、燃料は別系統を使ってクルマの燃料タンクから取るので給油の手間がないだけでなく、一晩使っても燃料消費量は2リッターくらいと超効率がいい。
車外から吸気して燃焼させるので一酸化炭素中毒の心配がなく、別系統のサブバッテリーで稼働しているため、仮にそちらを使い切ってもメインの鉛バッテリーでエンジン始動はできるし、走り始めればメインとサブを同時に充電するのでバッテリー上がりの心配もありません。
しかも、わがクレソンボヤージュは自慢の専用電装システム「エボライト」を搭載! 3つの高効率なディープサイクル鉛バッテリーによって家庭用エアコンを8時間も動かせます。4~5時間の走行で3つのバッテリーがフル充電になるし、しかも今回は冬でエアコン(=クーラー)を必要としないため、オーディオやパソコン、タブレットを一晩どころか一日中使っていても電気は切れません。ついでに小沢仕様には太陽光パネルも付いているため、よほどのことがない限りバッテリー切れなし! 無人島に行っても給油さえしてれば平気で1週間は暮らせる仕様なのです(無人島で給油できるかはさておき)。
男の実力が試される
実際、小沢は今回3人で2泊3日のスノボ旅を決行しましたが、全く困る気配なし。車内泊は快適至極で大人1人と子供2人がゆったり寝られて食べられるし、スノボが終わったら帰りは日帰り温泉に入って道の駅で飯食って駐車場(に止めたクレソンボヤージュ)で寝るだけ。コスト節約になるし、楽しいのでみんな大喜び。唯一の問題は、電気圧力釜でカレーをつくったらクルマ中がカレー臭くなってしまったことぐらい。つくづくキャンピングカーも換気は大切です。
気になっていた断熱性も問題なく、外気がマイナスになる雪山だけにFFヒーターは常時つけっぱなしでしたが、寝ている間は絞っていたので問題なし。車内の乾燥が多少気になりましたが、そこはタオルを干すことで対応。
ちなみにかかった経費ですが、東京の練馬インターチェンジと群馬の水上インターとの往復で高速代7800円と、往復約500kmで使った軽油約68リッター=約8000円の合計1万5800円が交通費。あとはリフト代と食事代で、ぶっちゃけリフト代が一番かかりました。
最後に、スリリングだったのが雪の坂道。わがクレソンボヤージュは燃費も考えてあえて4WDではなくFR車を選びました。最も気になっていたのが走破性で、そのために装着料込みで13万円以上もするブリヂストンのトラック用スタッドレスタイヤ「ブリザックVL1」を選択。
これがやはり正解で、平地の雪道では乗り心地こそ多少硬めですが、全く問題なくグリップ! 目の前でFFの「ダイハツ・タフト」が往生していた雪坂ではさすがに焦りました。ここではクレソンボヤージュも一度リアタイヤが空転し始めたものの、パーシャルスロットルを駆使してギリギリで脱出!
正直、雪道慣れしてないと厳しい部分もありますが、つくづく冬のキャンピングカー旅は最高!! ついでに男の実力も試されます。
春スノボにも行く予定だし、暖かくなったら別のところにも行くので、またリポートしますね!
(文と写真=小沢コージ/編集=藤沢 勝)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第49回:国交省を再直撃! 結局なにが問題なのか? トヨタは悪くない……は本当なのか? 2024.6.17 ダイハツの出荷再開で一件落着のように思われていた自動車メーカーによる認証不正問題が、再びキナ臭くなってきた。「より厳しい試験のデータだから問題ない」という声も聞かれたが、それは本当なのだろうか。小沢コージが国交省の担当者に聞いた。
-
第48回:しょ、植物からクルマをつくるだとぉ! トヨタ車体の「タブウッド」に結構驚いた件 2024.6.4 小沢コージが「人とくるまのテクノロジー展2024」で見つけたのはトヨタ車体が手がける「タブウッド」だ。ある種の自動車用合成素材だが、なんと主要な材料のひとつに木材が使われているのである。エンジニアをつかまえてアレコレ聞いてきました。
-
第47回:都庁の担当者を質問攻め! フォーミュラEができたんだから公道F1グランプリできませんか? 2024.4.17 2024年3月末に東京で開催されたフォーミュラEの「東京E-Prix」。日本初上陸ということで大いに盛り上がったわけだが、日本では異例の公道フォーミュラレースの開催にはどんな障壁があり、それをどう乗り越えたのか。小沢コージが東京都の担当者に聞いてきた。
-
第46回:新型「スイフト」の開発トップを直撃! 「お値段以上スズキ作戦」に驚く 2024.2.22 フルモデルチェンジした「スズキ・スイフト」のチーフエンジニアを小沢コージが直撃! ライバル各社がストロングハイブリッドで競う市場に、あえてマイルドハイブリッド一本足打法で臨むのはなぜか。そこにはスズキならではの深い深~い理由があった。
-
第45回:小沢コージが聞いた大規模改良型「ロードスター」で「990S」廃止の真相 敵はハッカーだった! 2024.2.9 小沢コージが最新型「マツダ・ロードスター」の開発トップを直撃インタビュー! 新開発のLSDやアダプティブクルーズコントロールの搭載などに注目が集まるが、大規模改良の主眼はまた別のところにあった! 将来のロードスター像なども含めて詳しく聞いてきました。
-
NEW
走りも見た目も大きく進化した最新の「ルーテシア」を試す
2025.10.8走りも楽しむならルノーのフルハイブリッドE-TECH<AD>ルノーの人気ハッチバック「ルーテシア」の最新モデルが日本に上陸。もちろん内外装の大胆な変化にも注目だが、評判のハイブリッドパワートレインにも改良の手が入り、走りの質感と燃費の両面で進化を遂げているのだ。箱根の山道でも楽しめる。それがルノーのハイブリッドである。 -
NEW
新型日産リーフB7 X/リーフAUTECH/リーフB7 G用品装着車
2025.10.8画像・写真いよいよ発表された新型「日産リーフ」。そのラインナップより、スタンダードな「B7 X」グレードや、上質でスポーティーな純正カスタマイズモデル「AUTECH」、そして純正アクセサリーを装着した「B7 G」を写真で紹介する。 -
NEW
新型日産リーフB7 G
2025.10.8画像・写真量産BEVのパイオニアこと「日産リーフ」がいよいよフルモデルチェンジ。航続距離702km、150kWの充電出力に対応……と、当代屈指の性能を持つ新型がデビューした。中身も外見もまったく異なる3代目の詳細な姿を、写真で紹介する。 -
NEW
第87回:激論! IAAモビリティー(後編) ―もうアイデアは尽き果てた? カーデザイン界を覆う閉塞感の正体―
2025.10.8カーデザイン曼荼羅ドイツで開催された欧州最大規模の自動車ショー「IAAモビリティー2025」。クルマの未来を指し示す祭典のはずなのに、どのクルマも「……なんか見たことある」と感じてしまうのはなぜか? 各車のデザインに漠然と覚えた閉塞(へいそく)感の正体を、有識者とともに考えた。 -
NEW
ハンドメイドでコツコツと 「Gクラス」はかくしてつくられる
2025.10.8デイリーコラム「メルセデス・ベンツGクラス」の生産を手がけるマグナ・シュタイヤーの工場を見学。Gクラスといえば、いまだに生産工程の多くが手作業なことで知られるが、それはなぜだろうか。“孤高のオフローダー”には、なにか人の手でしかなしえない特殊な技術が使われているのだろうか。 -
EV専用のプラットフォームは内燃機関車のものとどう違う?
2025.10.7あの多田哲哉のクルマQ&A多くの電気自動車にはエンジン搭載車とは異なるプラットフォームが用いられているが、設計上の最大の違いはどこにあるのか? トヨタでさまざまな車両の開発を取りまとめてきた多田哲哉さんに聞いた。