日産リーフ G(FF)【試乗記】
大型帆船級の感動 2011.04.06 試乗記 日産リーフ G(FF)……409万3950円
日産が満を持して送り出したEV「リーフ」は、ふつうのクルマとどう違う? その走りと使い勝手をチェックした。
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充電にも作法あり
話題の電気自動車、「日産リーフ」で実用走行を試してみる。横浜市内ではちらほら見かける機会も増えてきて、その活発な走りっぷりや、思ったより大きく立派な(?)ボディに関心が集まっている。「電気自動車=エコ=質素=我慢して乗るクルマ」という図式は、リーフにはあてはまらないような気がする。
走りっぷりや使い勝手などは後回し、最大の関心事と思われる“電費”関連から始めよう。
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借用した時点で、クルマは100%の完全充電状態。この時、車載コンピューターの走行可能距離は169kmを表示した。が、20kmほど走ってみると、この数字が137kmに減る。平均電費は6.4km/kWh 。普通の内燃機関ならドンドン減る一方だが、電気自動車の場合には減速時の回生ブレーキで電力はプラスされる。走行条件によっては、減るだけではなく増える場合もあるのだ。
電池の残量を示すゲージは、全量12ブロックのうち3つほど消えている。ここで1回目の充電を試みる。
車載のナビで検索、充電器設置場所を探すとすぐ近くにある。シメシメと思って行ってみると、「本日閉店」。また同じ要領で近くを探す。「Dr.Drive」というENEOSの店が見つかる。そこで充電オーケーとなり、車検証を携えて「充電カード」を作ってもらう。手続き簡単で無料。そしてノーズの充電口を開けて、給油ホースならぬ太い電線のような充電ケーブルをつなぎ、いざ充電開始。
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ところが、「まだ残量が80%以上です」というメッセージとともに、充電を拒否される。「そうか、街なかでの急速充電可能量は80%までなんだ……」と知る。そこでまた走行を加えたのちに、同じガソリンスタンドにて充電。晴れて80%の充電をすませ、走行可能距離は94kmとなる。
“ガス代半額”の魅力
2日目は早朝にスタート。横浜から都内へと一気に50kmほど移動する。これで走行可能距離は51km、ゲージの残りは4ブロックとなる。帰路を考えたら、この辺が限界だ。またナビで近所の充電ポイントを探す。
最初に示された日産ディーラーは、まだ開店前。次は東京都内の区役所が表示された。行ってみると地下駐車場に充電施設がある。ここは1時間駐車無料となるハンコを押してくれて充電もオーケー。はたして充電スタンドには、367Vで60分、電気残量70%と表示される。クルマと充電器の表示値は必ずしも一致しない。まだそんなに残っているのか、と思いながら待つ。結局、32分で80%まで入り、ゲージは10ブロックに。走行可能距離は137kmにまで回復した。
伝票もなにも出てはこない。昨日のENEOSは13分=520円で、レシートのうえでは同じ額が値引き……ということで、いずれにせよ無料であった。そう、電気自動車の電気代は東京都や神奈川県では無料なのだ。
これでは電費の具体的な数字がでてこないので、一般的な家庭用電気の料金から計算すると1kWhが約26円、車載のドライブコンピューターが示す電費が今回の総平均で6.1km/kWhであるから、1kmあたり4.3円となる。充電スタンドを探して走る区間なども入れて、大ざっぱに言っても、1kmあたり5円(!)だ。
参考までに、ウチの「フィアット・パンダ」は、昨年1年間の総平均で13.8km/リッター=9.8円/kmである。パンダのガソリン代の約半分で済む計算となる。「15万円が、7万5000円かあー……」。年間で計算してみても、確かに魅力ではある。
そんなリーフは、走行感覚もまた普通のガソリンエンジン車とは異なる。電気モーターはとにかく静かで滑らか、振動は無いに等しい。だから乗り心地が大きく違う。大排気量の多気筒エンジンをもってしてもこれはかなわない。エンジンや駆動系はボディにマウントする際にゴムなどを介している。その重さや大きなマスは、路面からの凹凸に対してボディと別の動きをし、さらに遅れも加わる。
このゴムの固さが乗り心地にも関係する。振動が無いに等しい電気モーターはこの点でも有利だ。常にソリッドで身軽な感じ。余分な動きが無い。
静かなことはすばらしい!
ただし、総重量は1.5トンオーバーと決して軽くはない。バネ上とバネ下重量の関係からいえば、重量級のどっしりした慣性重量の恩恵を受ける。だから、路面と平行に移動するフラット感も上々。カッチリしたボディ剛性の高さやダンピングの確かさと相まって高級感を醸す。
これに電気モーター独特の、右足の動きに遅れのない、レスポンスのいい加速感。さらに、静粛な移動感覚も合わさって、普通のガソリンエンジン車とは明らかに異なる“異次元感覚”が味わえる。
電気モーターの加速感覚は、これまでに登場した他社の電気自動車でも同様に、滑らかで力強いものだが、リーフは、緩い加速中に更に踏み込んだ時のつながり具合や、加減速のG感覚が実にスッキリ、爽快だ。二次曲線的なたるみがなく、あくまでも“一直線”なのだ。これはターボの過給感覚やATのキックダウンなどとはまったく異なるレスポンスと滑らかさである。
また高速巡航については、陸上を走る乗り物のなかで最も静粛なものだ。この点、ハイブリッド車などとは一線を画する。エンジンをアイドリング回転に落とし、ギアをニュートラルに抜いたとしても、こんなに滑らかで静かな感覚は得られない。これに近い感動体験は何だろう? と、乏しいながら過去の経験から思い出すのは、大型帆船クルーズだろうか。エンジンを止めて風まかせに流されている時、振動や雑音が無いということはこんなにすばらしいものなのか、と妙に感心したことを思い出す。
リーフの電気自動車としての走行感覚は、想像していたよりも良好だった。実用性、つまり普通に使える自動車としてどうかといえば、1充電で走れる移動距離はおおむね100kmといったところで、心配性の人なら50kmに1回は充電所を探してウロウロすることになろう。だから、近距離専用と考えられる人、または何とかなると楽観的になれる人なら問題はない。探す手間をいとわない、また時間に余裕をもてるというなら、現状レベルのインフラでも“まったくのお手上げ状態”にはならないだろう。
これからの時代、電気自動車の世界には、自動車メーカーだけでなく家電メーカーやキットカーメーカーなども参入してくるだろうと言われている。個人的には、リーフのパーツを純正部品として販売し、排ガスレベルや燃費性能などを理由に走れなくなる、ちょっと古い年式のクルマなどが、再起できたらうれしいなと思う。
(文=笹目二朗/写真=峰昌宏)

笹目 二朗
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