6気筒エンジン搭載車もデビュー マツダの近未来のSUV投入計画を読み解く
2021.10.27 デイリーコラム一気に5車種の導入計画を発表
マツダは10月7日に、来る2022年以降の「クロスオーバーSUV商品群の拡充計画」を発表した。それによると、2022年初頭にまずは北米で「CX-50」の生産を開始する。CX-50はエンジンを横置きするFFアーキテクチャーによる「スモール商品群」のひとつだそうだ。それに続いて、2022年から2023年にかけて、かねて開発中だったエンジン縦置きFRアーキテクチャーを土台とする「ラージ商品群」がいよいよ商品化される。
というわけで、今回発表された具体的な商品計画は、あらためて以下のとおりとなる(国名・地域名は主な導入市場)。
【スモール商品群】
- CX-50:米国
【ラージ商品群】
- CX-60(2列シート):日本、欧州その他
- CX-70(ワイドボディー2列シート):北米その他
- CX-80(3列シート):日本、欧州その他
- CX-90(ワイドボディー3列シート):北米その他
そもそも、将来的な商品計画をなぜこんなに一気に発表できるのか……というと、いわゆるスカイアクティブ世代以降のマツダではアーキテクチャーの開発時に、それを使う商品群をほぼすべて計画に盛り込んで設計を最適化する手法をとっているためだ。彼らが「一括企画」と呼ぶその手法は、現在のマツダの経営・技術戦略ではキモ中のキモである。よって、新しい縦置きアーキテクチャーが具体的な形になりつつある現時点で、将来的な商品計画はほぼ確定しているとみていい。
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新たにDセグメントに挑むマツダ
それはともかく、今回の発表から分かるのは、今後のマツダSUVの車名が、2020年に発売された「CX-30」と同様に“CX+2ケタ数字”が基本となることだ。また、新しい「CX-80」が現行「CX-8」の事実上の後継っぽいことからも分かるように、多少のズレはあるにしても、新車名の10の位の数字がクルマのクラスやセグメントを表していると思われる。
となると、「CX-90」は北米やロシア、豪州で販売されている「CX-9」の事実上の後継機種であり、CX-50は「CX-5」と同じCセグメント(ただし、CX-5の後継機種ではないという。それについては後述する)と推察できる。
そしてマツダとしては新たなセグメントとなる「CX-60」と「CX-70」は、実質的にはCX-80/90のショート版のようだ。サイズやメカニカルレイアウトとしては「BMW X3」や「メルセデス・ベンツGLC」に似たDセグメント級と考えるのが妥当だろう。
マツダはラージ商品群用のパワートレインとして、これまでの直列4気筒ガソリン/ディーゼルエンジン(スカイアクティブXを含む)に加えて、既報のとおりモジュラー設計の直列6気筒のスカイアクティブXとディーゼルを新開発。これらにターボチャージャーや48Vマイルドハイブリッド、プラグインハイブリッドなどを臨機応変に組み合わせることで、各国の環境政策に対応していく。
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北米で不可欠な6気筒
2019年春の決算報告会で、このラージ商品群の存在が明らかにされたとき、その凝った内容がマニア間で歓迎されるいっぽうで「今さら大排気量エンジンを新開発するのか?」とか「マツダの価格帯では分不相応では?」と賛否両論が巻き起こった。そして2020年にラージ商品群の投入延期が発表されると、アンチ派からは「それみたことか!」と揶揄する声が上がったのも事実である。
筆者もマツダのラージ商品群の成否に不安を感じなくもないひとりだが、マツダがラージ商品群、そして6気筒という上級エンジンを欲した理由は理解できる。
日本ではどことなく欧州風味を売りにしているマツダだが、その経営基盤を支えているのはやはり北米市場である。
北米はフトコロが深い市場なのでスモールカーも一定数は売れるし、マツダも北米で「CX-3」やCX-30、「マツダ3」も一応ラインナップしている。しかし、実際に量販となるのはCX-5以上だ。そのCX-5とて北米ではコンパクトSUVのあつかいで、若い女性ユーザーやセカンドカーの需要がメインである。
北米でファーストカー需要を想定するのは「マツダ6」やCX-9だが、その売り上げは芳しいとはいえないのが現状のようだ。その理由のひとつが北米ではいまだに“安物”とみられがちな4気筒エンジンしかないから……というのがマツダの解釈らしい。まあ、バイデン政権の今後の政策次第では北米でも電動化が一気に進む可能性もあるが、基本的にはまだしばらく6気筒の需要はありそうだ。
また、マツダの年間グローバル販売は現状150万台前後で、200万台が近未来の悲願……というレベルにある。これはたとえば欧州メーカーでいうとアウディとBMWグループの中間的な規模だ。つまり、自動車メーカーとしては明確に小さい。そんなマツダだが、トヨタなどとの資本業務提携を結びつつも、主要ラインナップにはすべて自前のアーキテクチャーを使い、世界的に資本関係を超えた共用化がトレンドの電気自動車(EV)でも、自社製プラットフォームでまかなうと公言している。彼らが健全に生き残るには、是が非でも一台あたりの単価や利益率を引き上げなければならない。そのためのラージ商品群でもある。
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先行き不透明な国内ラインナップ
ただ、われわれ日本人が今回の発表で気になるのは、スモール商品群のCX-50が現時点では北米生産の米国専用車としか発表されておらず、同時にマツダは「2012年の導入以来グローバルに好評をいただいているCX-5は、今後も継続的な商品改良によってデザイン進化やモデルラインナップの拡充を図るとともに、最新の安全技術やコネクティビティー機能を導入して商品力を強化し続け、今後もマツダのクロスオーバーラインナップのひとつとして大切に育てていく計画です」とコメントしていることだ。また、CX-3を含むBセグメントアーキテクチャーの未来像も、今回はまったく語られていない。
今回発表の第1弾となるCX-50は、アラバマ州に新たに建設されたトヨタとの合弁工場で生産される。トヨタはそこで北米向け「カローラ」をつくる。発表によると、同工場にはマツダとトヨタの各生産ラインが敷かれており、それぞれ独自性の高いモデルをつくるようだ。そのいっぽうで、CX-50にはトヨタ製ハイブリッドシステム「THS」が搭載されることも明らかになっており、やはり日本向けではないようだ。日本では現行CX-5が当面の主力となるのは、ウソではないのだろう。
日本市場ではそんなCX-5に加えて、Bセグメントハッチバックの「マツダ2」が双璧の主力商品である。しかし「デミオ」時代から数えて8年目に突入したマツダ2の次期モデルについては、情報がほとんど出てこない。藤原清志マツダ副社長兼COOも「小型車は当社の収益が厳しい領域」と明言しており、欧州ではトヨタから「ヤリス ハイブリッド」をOEM調達することも明らかになった……。
一時は導入が延期されつつも、ついに秒読み段階となったラージ商品群は本当に売れるのか、わが日本市場を支えているマツダ2は今後どうなっちゃうのか、そしてまさかの自前主義でいくらしいEVは大丈夫なのか……と、マツダの今後についてはよくも悪くも注目である。ただ、これらのマツダ戦略がもくろみどおりに成功したあかつきには、小規模メーカーが生き残る方策として格好のモデルケースになるであろうことも確かである。
(文=佐野弘宗/写真=マツダ、トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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