マツダCX-30 20Sプロアクティブ ツーリングセレクション(4WD/6MT)/CX-30 XDプロアクティブ ツーリングセレクション(4WD/6AT)
これがジャストサイズ 2019.11.08 試乗記 マツダのブランニューモデル「CX-30」に試乗。(ほぼ)同じセグメントに同門の「CX-3」がいる中、新たなネーミングルールを用いてマツダが投入した小型クロスオーバーSUVはどんな特徴を備えているのだろうか。ガソリン車とディーゼル車の出来栄えを報告する。アドバンテージは立駐対応
「大きすぎても冒険できない。小さすぎても夢を見られない。等身大でいるのが、今は気持ちいい。私たちに、ジャストサイズのSUV」。これがマツダCX-30のキャッチコピーだ。適正なサイズ感が最大のアピール点となっている。ふと、疑問がよぎる。ちょうどいい大きさというのは、人によって感じ方が違うのではないか、と。
もちろん、マツダは綿密なマーケティング調査を行った上でCX-30のサイズを決めている。全長を4400mm以内に収めることが至上課題だったという。狭い道での取り回しや駐車のしやすさを考慮すると、この数字を超えることは許されなかった。ホイールベースを「マツダ3」の2725mmから2655mmへと縮めているのは、そういう事情があったからだ。
かくして、CX-30は売れ筋コンパクトSUVの「トヨタC-HR」や「ホンダ・ヴェゼル」と近いディメンションになった。3車とも全長は4400mm以内で、全幅は1800mmを下回る。マーケット的にはこのサイズが正解なのだ。ライバルに対するアドバンテージは全高である。C-HRは1565mm、ヴェゼルは1605mmで、CX-30は1540mm。立体駐車場に入るというのは、大きな購入動機になる。
マツダの中では、CX-3と「CX-5」の中間に位置する。ディーラーを訪れる顧客のほとんどは、CX-3ではなくCX-5と比較検討するのだという。CX-3はファミリー層には小さすぎて、選択肢からはずれるのだ。差は全長で120mm、全幅で30mmにすぎないが、使い勝手には大きな違いが生じるらしい。
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マツダ3とは逆の映り込み
販売店ではCX-30の運転席に座ってみる奥さまが多いそうだ。CX-5や「CX-8」では助手席や後席にしか興味を示さないのと対照的である。大きなSUVだと運転は夫に任せることに決めていて、CX-30は自分も運転するクルマという認識なのだろう。
マツダ3がクルマ好きに向けたモデルであるのに対し、CX-30はファミリー向けの実用車なのである。ビジネス的な観点では、CX-30のほうが大きな販売台数が想定されている。似たようなサイズなら、ハッチバックやセダンよりもSUVの人気が上回るのだ。
マツダの新世代商品群第1弾がマツダ3で、CX-30は第2弾。エクステリアデザインには類似点もあるが細部はかなり違う。ヘッドライトの形状はCX-30のほうがシャープで、側面への張り出しが大きい。リアエンドは抑揚を大きくしたダイナミックな造形になっている。デザインコンセプトは「スリーク&ボールド」だ。
面白いのは、サイドの光の映り込みが正反対になっていることだ。左側から見た場合、マツダ3は逆S字でCX-30は順S字である。その結果、マツダ3が前方から後方へシンプルなラインが通っている印象になり、CX-30は華やかさとにぎやかさが加わる。日本の美を追求するために「反り」「余白」「移ろい」を表現し、書道の「溜め」と「払い」がテーマになっているという。
デザインチームが力を注いだのは、室内空間の広さとスタイリッシュなフォルムを両立させることだった。ルーフを高く保ちながらも、Dピラーを寝かせることでスポーティーな印象に。さらに、ボディー下部の黒い樹脂部分を増やしてスリムに見せる効果を狙う。レッドやシルバーなどのボディーカラーでは意図したとおりになったが、グレー系だと溶け込んでしまって効果が得られないのは致し方ない。
MTはガソリン車のみ
試乗したのは2台。2リッターガソリンエンジンの「スカイアクティブG 2.0」と1.8リッターディーゼルターボエンジンの「スカイアクティブD 1.8」を搭載したモデルだ。火花点火制御圧縮着火(SPCCI)エンジンの「スカイアクティブX 2.0」搭載車は、2020年の発売になる。マツダ3で初採用されているが発売が延期されており、受注の割合は5%にとどまっているという。画期的な新技術ではあるものの、まだ価格分の魅力をアピールできていないのだろう。
ガソリン車はMTモデルだった。SUVでもMTで乗りたいという声が多く、無視はできない。初期受注の8%を占め、大半が年配の男性だそうだ。CX-3にもMTモデルがあるが、こちらはディーゼルエンジンとの組み合わせのみ。CX-30はガソリン車だけの設定で、どういうすみ分けなのかは謎である。
マツダ車の常で、運転席に座ると適正なドライビングポジションをとれる。車両構造技術「スカイアクティブビークルアーキテクチャー」の恩恵だろうか。シフトフィールやクラッチをつなぐ感覚も素直で、人間中心の設計をうたっているのはダテではないのだ。エンジンはトルキーとはいえないが、操作系がスムーズなおかげで神経質になる必要はない。動きが軽快なので、運転していてSUVに乗っているという感覚は薄かった。
統一感や一体感を重視したというインテリアは、マツダ3同様に雑味を排したもの。正面から左右までスムーズな造形になっていて、さり気ない上質感を生み出している。スイッチの操作感までつくり込んだという徹底ぶりなのだ。
ライバルをしのぐ荷室容量
ディーゼルエンジンは6段ATとの組み合わせを試した。発進から滑らかに回転が上昇し、十分なトルクを供給する。最高出力はガソリン車に劣るものの、乗りやすいのはこちらだろう。車外ではディーゼルらしい回転音が聞こえるが、車内ではしっかり遮断されている。ただし、最高出力が発生するのは4000rpmと高めなので、加速時には室内が少々にぎやかになる。
いい意味で、普通の実用車である。街なかを乗っただけだが、極端にスポーティーな味付けがされているのではないことはわかった。以前CX-3に乗った際に、ワインディングロードを楽しく走りまわってしまったことがある。ドライバーズカーとしてはすてきなクルマだったが、サスペンションの硬さには不満の声もあがったと聞く。ファミリーカーには穏健なセッティングが妥当なのだということを学んだはずだ。
CX-30は「人生の転換期」に対応したクルマなのだという。家族構成や生活形態の変化にともない、ライフスタイルが新たなステージに向かう際に選んでほしいということだろう。余裕のあるサイズでそれなりの上質感を持つというのが狙いどころだ。荷室は横幅が狭いようにも思えるが、実はライバルをしのぐ430リッターの容量を確保している。シートの調整やリアゲートの開閉が電動化されるなど、ちょっとしたぜいたく気分も味わえる。ホタルのように光が徐々に消えていくディミングターンシグナルは、流れるウインカーより上品だ。
狭い道を走ったり駐車を試みたりしたが、取り回しに苦労する場面はなかった。CX-3のサイズでなければどうにもならないという状況は少ないだろう。現在の日本では、これがジャストサイズなのである。他メーカーとガチで競合する激戦区に乗り込むのは、マツダが自信を持っているからに違いない。いよいよスカイアクティブと鼓動(こどう)デザインの真価が試されることになる。
(文=鈴木真人/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝)
テスト車のデータ
マツダCX-30 20Sプロアクティブ ツーリングセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1460kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ
トランスミッション:6段MT
最高出力:156PS(115kW)/6000rpm
最大トルク:199N・m(20.3kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(トーヨー・プロクセスR56)
燃費:15.6km/リッター(WLTCモード)
価格:297万円/テスト車=305万6880円
オプション装備:360°セーフティーパッケージ<360°ビューモニター+ドライバーモニタリング+フロントパーキングセンサー>(8万6880円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1179km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km /リッター
マツダCX-30 XDプロアクティブ ツーリングセレクション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4395×1795×1540mm
ホイールベース:2655mm
車重:1530kg
駆動方式:4WD
エンジン:1.8リッター直4 DOHC 16バルブ ディーゼル ターボ
トランスミッション:6段AT
最高出力:116PS(85kW)/4000rpm
最大トルク:270N・m(27.5kgf・m)/1600-2600rpm
タイヤ:(前)215/55R18 95H/(後)215/55R18 95H(トーヨー・プロクセスR56)
燃費:18.4km/リッター(WLTCモード)
価格:330万円/テスト車=338万6880円
オプション装備:360°セーフティーパッケージ<360°ビューモニター+ドライバーモニタリング>(8万6880円)
テスト車の年式:2019年型
テスト開始時の走行距離:1191km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(軽油)
参考燃費:--km /リッター

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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