第674回:「ポルシェヘリテージエクスペリエンス ハワイ」に参加 オープントップポルシェの変遷と進化を体感
2022.01.31 エディターから一言 拡大 |
真冬の日本を抜け出し、ハワイでクラシックポルシェの走りを味わうポルシェミュージアム主催のプログラム「ポルシェヘリテージエクスペリエンス ハワイ」に参加。太平洋に浮かぶ常夏の島で、歴代オープンモデルの魅力を再確認した。
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オープンモデルの変遷に触れる
「これは世界各地の文化、自然、歴史に触れることで、ポルシェの起源と伝統をクルマの中で体験することを目的としたプログラムです。本来なら2年前に中国で第1回を行う予定でしたが、COVID-19の影響で中止になったため、今回が初の試みとなります。なお2年後の第2回はドイツを舞台に行う予定です」と趣旨を説明してくれたのは、ポルシェミュージアムのアヒム・ステヤスカル館長だ。
米ハワイ島を舞台に、2021年12月に行われた2日間のメニューは、ハワイ火山国立公園、コーヒー農園、植物園といったスポットをクラシックモデルで巡りながら、ハワイの歴史、自然に加え、海洋温度差発電などの最新技術を学ぶというものだった。
今回われわれがドライブするのは、いずれもドイツ本国のミュージアムから持ち込まれた1956年の「356Aスピードスター1600」、1970年の「914/6」、1991年の「944ターボ カブリオレ」、1992年の964型「911カレラ2カブリオレ」、2002年の初代「ボクスター」という歴代のオープンモデルだ。
ちなみに各車のボディーに描かれた模様は、ツアーのテーマというべき5つのエレメント〜精神、風、水、火、地球〜をモチーフにしたものだという。
過去にも数度、ポルシェクラシックのプログラムに参加したことがあるが、朝から日没まで、高速道路、ワインディングロードを織り交ぜた風光明媚(めいび)なルートを、さまざまな年代のクラシックモデルで思う存分走ったのは今回が初めて。各車に乗りながら時代の変遷を感じられたという意味でも、素晴らしい経験だった。
ということで、簡単に5車の印象を紹介していくことにしよう。
ヘリテージモデルの魅力を再確認
356スピードスターはもともと北米市場の要望に応えて生まれた、安価で軽量なオープンモデルだ。いつ乗っても、強固なフロアパン、単純な構造ながらメカニカルグリップと乗り心地を両立したフロントトレーリングアーム、リアスイングアクスルのサスペンション、そして最高出力60PSながらもレスポンスがよく扱いやすい1.6リッターフラット4 OHVのハーモニーは見事の一言に尽きる。
またRRといっても、リアに重い6気筒を積んだナロー911のような神経質さはみじんもなく、スロットルペダルを踏みリアにトラクションをかけていればどんなコーナーでも駆け抜けていく人馬一体感は、歴代ポルシェのなかでも五指に入るといっていい。特に低いウインドスクリーン越しに風を受けながらハワイ島のワインディングロードを走るのは、掛け値なしに最高だ。
そんな356スピードスターに劣らぬインパクトがあったのが914/6だ。914の特徴は後の多くのミドシップスポーツに影響を与えたとされる見事なスペースユーティリティーと、安定したハンドリングにある。そこに4気筒よりも30PSパワフルな911用の2リッターフラット6を積むことで、バランスが崩れてしまうのでは? という心配は杞憂(きゆう)に終わった。むしろ914は6気筒を積むことが本意でつくられたモデルなのだと確信できるほど、パワーとハンドリングが高いレベルでバランスしていたのだ。
そのスタイルと価格がネックになり、販売上では成功を収められなかった914/6だが、1970年の時点でこれほどまでに完成度の高いミドシップスポーツは他になかったはずだ。ちなみに今回の試乗イベントで、ジャーナリストの間で取り合いになったのも、この914/6だった。
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大切なのは“ポルシェらしさ”
続いてドライブしたのは、最高出力220PSを発生する2.5リッター直4 SOHCインタークーラー付きターボエンジンをフロントに搭載する944ターボ カブリオレだ。試乗時は雨模様だったのだが、電動式のソフトトップ(最後のロックだけ手動)の耐候性はもちろん、2+2であることも手伝って、実用性はすこぶる高い。また小気味よく決まる5段MTと低回転でもトルクがある2.5リッターターボは扱いやすく、シャシーのバランスの良さもあって、とても30年前のクルマとは思えないほど速く、ストレスフリーで乗ることができる。
本来ならもっと人気が出て評価されてもいいモデルなのに……と思いつつ、964型911カレラ2と初代986型ボクスターに乗ってみる。
964はカブリオレということもあって、最高出力250PSを誇る3.6リッター空冷フラット6のサウンドが、ボディー後方からダイレクトに耳に届く。イージーなAT「ティプトロニック」で、海岸線を流して走るのも最高だが、いざマニュアルモードにすると思いのほかスポーティーに走れるのは意外な発見だった。
一方の986型ボクスターも、今乗ってみるとライトウェイトスポーツのように軽やかで、すべてがダイレクト。加えて初期の2.5リッターに比べて低速域でのトルクが増し、より扱いやすくなった2.7リッターフラット6も絶品で、5段MTを駆使しながらワインディングロードを走るのは文句なく楽しい。
同じ220PSのエンジンを積みながらも、944よりボクスターのほうが圧倒的に「ポルシェらしい」と感じるのは、直列か水平対向かというエンジン形式と、その搭載位置によるところが大きい。背後から響く水平対向エンジン独特の鼓動と、リアのトラクションを感じることで「ああ、俺はポルシェに乗っているんだ」と実感するのだ。
もちろんスポーツカーにとってスペックは大事だが、そうした「五感に訴える」部分も重要な要素なのだろう。それは、この先電動化の時代になってもポルシェらしさを的確に表現する、ひとつのポイントになるかもしれないと感じた2日間でもあった。
(文=藤原よしお/写真=ポルシェジャパン、藤原よしお/編集=櫻井健一)
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藤原 よしお
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