プジョー308 GTハイブリッド(FF/8AT)
こんなのなかった! 2022.05.17 試乗記 フルモデルチェンジで3世代目に進化した、プジョーの基幹モデル「308」。そのなかでも目玉とされる、プラグインハイブリッド車の仕上がりは? 日本でのデリバリーに先駆けて、本国フランスで試乗した。歴代屈指の“うまいデザイン”
Cセグメントのハッチバックといえば、クラスの主役は「フォルクスワーゲン・ゴルフ」。ところが最近、耳にするのはプジョー308の話題がほとんどだ。新型が日本に導入されたばかりというタイミングの問題も大きいのだろうが、どうやらそれだけじゃなさそう。なんだかやたらと好評なのだ。ゴルフを超えたんじゃないか? なんて声すら聞こえてきたくらい。2021年に発表されたときの写真を見て、個人的にはプジョーのハッチバックで歴代トップを争うくらいにカッコいいと感じて実車を見る日を楽しみにしていた身としては、期待感は膨れ上がる一方である。
ところがガックリと肩を落とすほど巡り合わせが悪く、すでに上陸を果たした1.2リッターのガソリンターボにも1.5リッターのディーゼルターボにも触れるどころか見ることもかなわないまま、僕はフランスに飛ぶことになった。そしてプジョーのお膝元であるポアシーを起点に、少し遅れて日本に上陸する308のプラグインハイブリッドモデルに試乗することになったのだった。
生まれ故郷で初めて見たからというようなミーハーなフィルターが仮にかかっていたとしても、実車を前にしたときのファーストインプレッションは変わらなかっただろう。なにせ、すでに白状したとおり、最初に写真を見た段階から相当に好印象だったのだから。9年ぶりにフルモデルチェンジが行われた新しい308のスタイリングは、かなり控えめに言ってもよくまとまってると思う。落ち着きのある大人っぽさと筋肉質な躍動感。それが均整のとれた低く幅広い5ドアハッチバックのボディーに矛盾なく共存している。
拡大されて立体感を増したフロントグリル、中央でそれを引き締める新しいロゴのエンブレム、フロントに輝く牙とリアを引き締める鉤(かぎ)爪、くっきりと浮かび上がる四肢のフェンダー、塊の中に巧みに埋め込まれたカナードやサイドスカートと奥深いルーフスポイラーといった空力パーツ。凝ったディテールをあちこちに見ることができる。先代はもっとコンサバティブな印象だったが、新型はもっと華やかな印象。ただし、目にうるさいような感じも嫌みっぽいような印象も、どこにもない。この抑え方のうまさが、とてもプジョーらしいと思う。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
大きくなってもいいじゃないか
同じようにうまさを感じたのは、インテリアのデザインだ。シャープな直線とフラットな面を巧みに組み合わせ、操作や確認に必要なものをはっきりとドライバー側に向け、運転席側と助手席側の奥行きを違えて見せるような造形を形づくることで、いかにも“操縦席”といった雰囲気をつくり上げている。八角形に近い小径ステアリングホイールよりも上にメーターを見る、おなじみの「iコックピット」には好き嫌いもあるだろうけど、運転に集中しやすい雰囲気がさらに増してることは確かだ。それに各部の質感も、だいぶ高い。昔のこのクラスのフランス車のチープさが心に強烈に植えつけられている人にとっては、隔世の感どころの話じゃないだろう。
とっくにご存じの方も多いだろうが、新しい308はボディーがちょっとばかり大きくなっている。日本仕様の数値が出ているのでそちらベースでお話しするなら、全長4420mm、全幅1850mm、全高1475mmで、ホイールベースは2680mm。先代と比べると全長で145mm、全幅で45mm、全高で5mm、ホイールベースで60mmほど拡大されてる計算だ。現行のゴルフと比べても、全長で125mm、全幅で60mm、ホイールベースで60mm大きく、全高は一緒。明らかにひとまわり大きいといったところで、Cセグメントのハッチバックもここまできたか、というような大きさではある。
この大型化を嘆く声も少なくなさそうな気はするが、けれどそれが居住スペースの拡大につながっているのも確かだ。特に足元まで含めた後席まわり。とりわけ足元は旧型ではちょっと窮屈さを感じたものだが、新型ではだいぶゆとりが確保されていて、ほとんど苦しさを感じることがない。この大きさには「日本の裏道では難儀するかも」と考える人も多いだろうけれど、フランスだって一歩入り込めば似たり寄ったりだ。コレはもうそういう時代なのだと割り切るか、もっと小さなクルマを選ぶべきか、といったところだろう。
“スポーツ心”を満たしてくれる
いや、もうそんなもろもろはとっくに知ってるんだから肝心のプラグインハイブリッドの話をしろ、という声が聞こえてきそう。308プラグインハイブリッドのパワートレインは、最高出力180PSと最大トルク250N・mを発生するピュアテックの1.6リッターターボに、110PSと320N・mを発生するモーターと容量12.4kWhのバッテリーを組み合わせたもの。システム合計では225PSと360N・mという、308のなかでは最も力強いものとなっている。満充電に必要な時間は、3kWの充電器でおよそ5時間、6kWではおよそ2.5時間といわれている。WLTCモードでは最大64kmのEV走行が可能とされているから、人によっては一日をEV走行でまかなうこともできるかもしれない。
このパワートレインの採用は、308の魅力をより大きなものにしていると僕は思う。昨今のCセグメントのハッチバックには安っぽさを感じさせるクルマはだいぶ少ないのだけど、はっきりと高級感に浸らせてくれるようなクルマが多いというわけでもない。このクルマはバッテリーの残量があるときにはなるべくモーターだけで走らせようとする性格で、モーターのみで発進し、そのまましばらくはEVとしての魅力を味わわせてくれる。その滑らかさと静かさ。これは内燃機関のクルマがどう頑張っても手に入れることができないものだ。
もちろん充電量が不足していたりアクセルペダルを深く踏み込んだりすればエンジンが起動するわけだが、かといって内燃機関に火が入った瞬間に妙な振動やがさつな音を伝えてくるわけでもない。EV走行からハイブリッド走行への移行は、とてもスムーズだ。減速のときの回生ブレーキとブレーキペダルによる制動の協調制御もうまくいっていて、不自然な感覚を伝えてくることもない。かなり洗練されているといっていいだろう。
そのうえ、走行モードで「スポーツ」を選んで元気よく走っていきたいときには、1.6リッターのターボエンジンと電気モーターの相乗効果で、素晴らしくたくましい加速を披露してくれる。この1.6リッターのピュアテックエンジンはもとより低速トルクが豊かな部類だが、そこにモーターアシストの瞬発力が加わって出だしからして鋭いし、そこから6000rpmあたりまで気持ちいい伸びをみせながら爽快にスピードを稼ぎ出していく。サウンドも悪くない。頑張ってスポーツ仕立てにしつらえたような印象はないけれど、それでも十分にスポーツ心は刺激されるし、実際に得られる速さにも全く不満はない。ガソリンエンジンの308と比べると300kg以上も重量が増しているはずなのに、それを補うどころか楽々はるかに上回って感じられるパフォーマンスを見せてくれるのだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
どのプジョーよりもいい乗り味
その重量増によるデメリットは、こと“曲がる”という面においてもまず感じることがない。重たいバッテリーを後席の下あたりに配置して重心の高さと重量の前後バランスを調整しているため、一般的な内燃機関を積んだ前輪駆動のクルマよりもフットワークがいいように感じられるほどだ。かなり低い位置にある軸を中心にロールしていく感覚を伴いながら、重荷の存在を感じさせることなく、クルンと気持ちよく曲がってくれる。
もっともそれは、前輪駆動なのに後輪が車体をコーナリングラインにのせていくような感覚のある、ロールを深めるに従って巧みにトーインを強めていくプジョーならではのサスペンションセッティングがあってこそ。ステアリングそのものはちょっとばかり操舵感が軽いようにも思えるが、操作に対する反応はいいし、そのステアリングやシートから伝わってくる、常に四肢が路面をつかんでいるかのような“猫足”感覚が濃厚で、それが何より素晴らしい。これまた頑張ってスポーツ仕立てにしつらえたような印象はないのだけれど、軽やかというより速やかでたおやかなそのテイストは、しっかりとスポーティーだし、はっきりと気持ちいい。だから速度の多寡にかかわらず、うねうねとカーブが続くような道を走るのが、とても楽しい。つまりドライビングすることそのものが楽しい、というわけだ。
そしてもうひとつ無視することができないのは、乗り心地のよさだろう。剛性の高さを感じさせる車体によく動く足。さらには重さが余計な振動を抑えてくれることもあって、“プジョーらしい”と形容されることの多い独特のしっとり感が色濃くなってる印象なのだ。そのあたりの足腰の動きの絶妙さがもたらしてくれる乗り味のよさは、これまで体験したどのプジョーよりも上をいっている、と断言してもいい。
未試乗だから絶対ということはできないものの、ガソリンエンジンの308もディーゼルエンジンの308も、このプラグインハイブリッドを超えてはいないんじゃないか? と思う。総合得点はとにかく高いのだ。……ホメ過ぎに感じられるだろうか? もしそう思われるのなら、日本に上陸したタイミングでまずメートル原器のフォルクスワーゲン・ゴルフに試乗してからプジョーのショールームに行き、ガソリンとディーゼルの308に試乗してからプラグインハイブリッドに乗ってみてほしい。おそらく軽い驚きを感じるはずだと思うから。
(文=嶋田智之/写真=ステランティス/編集=関 顕也)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
プジョー308 GTハイブリッド
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4420×1850×1475mm
ホイールベース:2680mm
車重:1660kg
駆動方式:FF
エンジン:1.6リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:180PS(132kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:250N・m(25.5kgf・m)/1750rpm
モーター最高出力:110PS(81kW)/2500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-2500rpm
システム最高出力:225PS
システム最大トルク:360N・m
タイヤ:(前)225/40R18 92Y/(後)225/40R18 92Y(ミシュラン・プライマシー4)
ハイブリッド燃料消費率:19.1km/リッター(JC08モード)、17.6km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:70km(JC08モード)、64km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:70km(JC08モード)、64km(WLTCモード)
交流電力量消費率:200Wh/km(WLTCモード)
価格:490万6000円/テスト車=--万円
オプション装備:--
※スペックは日本仕様車のもの
テスト車の年式:2022年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
拡大 |

嶋田 智之
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。






















































