コロナ禍も有事も影響なし ランボルギーニが絶好調なのはどうしてか?
2022.07.04 デイリーコラムキーは価格と収益性
新型コロナウイルス感染症を引き金とする経済の減速、長引く半導体不足、ロシアによるウクライナ侵攻など、自動車産業界を取り巻く環境は依然として厳しいものがある。なかでも、車両価格が2000万円を超えるラグジュアリーセグメントであれば、そうした影響はとりわけ深刻と推察されるが、実際のところはどうなのか? 「ランボルギーニ・カウンタックLPI800-4」の発表に合わせて来日したアウトモビリ・ランボルギーニのアジア・パシフィック責任者であるフランチェスコ・スカルダオーニ氏に尋ねた。
「私たちの生産やデリバリーに関して言えば、なにひとつ遅れは生じていません。ランボルギーニは大きなグループ(フォルクスワーゲン グループ)の一員であり、収益性に関して言えば、グループのなかでトップの存在です。したがって、部品供給に関しては優先順位が高く設定されています。これが生産やデリバリーに遅れが生じていない、第1の理由です」
例えば、1台の自動車を生産するのにどうしても欠かすことのできないICチップがあったとしよう。その価格自体は、もしかしたら100円程度かもしれない。しかし、これがいま手元に1個しかないとしたら、車両価格200万円のクルマと2000万円のクルマの、どちらをつくるのに用いるだろうか?
たとえ2台の利益率が同じであったとしても、2000万円のクルマをつくるために使うのが私企業としては当然の選択。まして2000万円のほうが利益率が高いとなれば、是が非でもそちらを優先したくなるはず。このように、必要な部品をグループ内で優先的に融通してもらえる体制が整っているからこそ、ランボルギーニは困難な時期でも生産を継続できたのである。
しかし、理由はそれだけではないとスカルダオーニ氏は語る。
2022年も期待は高まる
「私たちは長期戦略に基づいてパーツサプライヤーとの関係を築いており、彼らは、どのパーツがどの程度必要かをすべて把握しています。たしかに、ロシアのウクライナ侵攻は新たな脅威です。なぜなら、ウクライナの西部には私たちのキーサプライヤーがあり、そこでは労働力不足が現実に起こっているからです。しかし、私たちは素早くバックアップ体制を整えたので、何の遅れも生じていません」
事実、ランボルギーニのビジネスは、新型コロナウイルス感染症が世界的に流行したここ数年に関しても堅調に推移している。2019年、ランボルギーニは史上最高の8205台を販売。2020年にはパンデミックの影響で工場を一時閉鎖したため、販売台数は7430台に減少したものの、利益率としては史上最高を記録した。さらに2021年は販売自体も持ち直して8405台を達成し、過去最高記録を更新。この傾向は2022年の第1四半期も続いており、前年同期を上回る売上高と利益を達成するとともに、通期でも従来の記録を塗り替えると期待されている。
「パンデミックの間にも、私たちは5台のニューモデルを発表しました」とスカルダオーニ氏。
「そのほかにもさまざまなデジタルコミュニケーションツールを開発し、世界中のお客さまやメディア関係者との関係を維持できるように務めてきました。そうした活動が、お客さまがランボルギーニへの夢を抱いていただくと同時に、ランボルギーニファミリーの一員であるとの認識を深めていただくのに役立ったと考えています。このような下地があったからこそ、パンデミックが終わると同時にリアルなイベントを再開できたのです」
この日、発表したカウンタックのリバイバルモデルには、これまでランボルギーニがつくり続けてきたエンジン車を祝福し、その伝統を未来へとつなげていくという役割がある。
「来るべき電動化時代に向けても、ランボルギーニのDNAを守り続けていくことが重要だと考えています」
スカルダオーニ氏はそう語って、インタビューを締めくくった。
(文=大谷達也<Little Wing>/写真=webCG/編集=関 顕也)

大谷 達也
自動車ライター。大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌『CAR GRAPHIC』の編集部員へと転身。同誌副編集長に就任した後、2010年に退職し、フリーランスの自動車ライターとなる。現在はラグジュアリーカーを中心に軽自動車まで幅広く取材。先端技術やモータースポーツ関連の原稿執筆も数多く手がける。2022-2023 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考員、日本自動車ジャーナリスト協会会員、日本モータースポーツ記者会会員。
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