第709回:四季を通じて“安心安全”を提供 「グッドイヤー・ベクター4シーズンズGEN-3」を試す
2022.07.26 エディターから一言![]() |
グッドイヤーのオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズ」シリーズに、プレミアムな新製品「GEN-3/GEN-3 SUV」が登場。従来品でも定評のあったウインター性能はどう進化しているのか? 発売を前に、冬の女神湖で実力を確かめた。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
オールシーズンタイヤのパイオニア
春、夏、秋に加えて、冬の雪道でも走行可能なタイヤとして近年注目を集めているオールシーズンタイヤ。そのブームの火付け役であるグッドイヤー・ベクター4シーズンズの最新モデルが、いよいよ日本でも発売になった(参照)。
サマータイヤとほぼ同じ感覚で使えることや、突然の雪でも走行できることはもちろん、冬の前後でタイヤの履き替えが不要なこと、外したタイヤの保管場所が要らないことなどから、年に数回しか雪が降らないエリアのドライバーから支持を集めているのがオールシーズンタイヤだ。
そのパイオニアといえるグッドイヤーは、2016年に、それまでヨーロッパから輸入していたベクター4シーズンズを日本国内生産に切り替え、サイズバリエーションを拡大。名前も新たに「ベクター4シーズンズ ハイブリッド」として発売した。ヨーロッパでウインタータイヤであることを示す“スノーフレークマーク”に加え、こちらの製品では独自にウインタータイヤであることを表す“SNOW”の文字も追加。高速道路等で冬用タイヤ規制に遭遇しても、堂々と走行できるのがうれしい製品だった。
その後、先手を取った商品展開やPR活動が実を結び、グッドイヤーのオールシーズンタイヤが日本でも市民権を得たのはご存じのとおり。私自身も、ベクター4シーズンズ ハイブリッドを愛車に装着して以来、オールシーズンタイヤは手放せない存在になっている。
上位モデル「ベクター4シーズンズGEN-3」登場
このほど、そのベクター4シーズンズ ハイブリッドの上位モデルにあたるベクター4シーズンズGEN-3が、日本に上陸した。これまでのベクター4シーズンズ同様、四季を通じて安全・快適なドライブが楽しめるオールシーズンタイヤで、メインのヨーロッパ市場の要求に合わせ、スノー性能に加えてドライ性能やハンドリング性能をさらに高めたという。
ベクター4シーズンズは、以前より方向性のある特徴的なV字型パターンを採用しているが、GEN-3のそれは従来品に比べて細かいパターンとなっており、またセンターに向かって溝の幅を狭くするなど、各部のデザインを最適化。パターンノイズを36%、ロードノイズを31%低減させることに成功したという。
また、これまでとは異なる大型のサイプをトレッド中央部に配置して排雪性を高め、雪上グリップ性能を向上。一方、トレッド下部のゴム層とショルダーブロックを強化することでタイヤの変形を抑え、優れたハンドリング性能も実現しているという。さらに、底にいくほど幅が広くなる溝のデザインにより排水性を高め、ウエット性能を確保。このように、ベクター4シーズンズGEN-3は同ハイブリッドに対し、スノーブレーキ、ハンドリング、ドライブレーキ、ウエットブレーキと、多方面で性能の向上を図っている。加えて先述したとおり、新しいトレッドパターンでノイズの低減を実現しているのも見逃せないところだ。
タイヤサイズは15インチから20インチを用意。乗用車向けが21サイズ、SUV向けのベクター4シーズンズGEN-3 SUVが5サイズ設定されている。
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
一段とアップしたスノー性能
ベクター4シーズンズGEN-3の発売を前に、その性能を冬の女神湖と周辺の一般道で試すことができた。まずはGEN-3とハイブリッド(ともに205/60R16 92H)を装着した試走車を女神湖で乗り比べ、その違いをチェックする。
ベクター4シーズンズ ハイブリッドは、雪上であれば走りだしからしっかりと路面を捉え、コーナーでも進入速度に気をつけさえすれば予想以上にちゃんと曲がり、またブレーキも不安がない。スタッドレスタイヤと同じレベルとはいかないまでも、十分安心して走行できる性能を有している。これに対してGEN-3は、目に見えて雪上でのグリップが向上しており、コーナリング時の外への膨らみも小さく、直進時の安定感もワンランク上の印象だった。
ちなみに、この日の女神湖は氷が露出している部分があったが、スタッドレスタイヤに比べてオールシーズンタイヤのアイス性能が低いことも実感した。25km/h程度であればなんとかコントロールすることは可能だが、安全を考えるとオールシーズンタイヤで凍結路を走るのは避けるべきだろう。
続いて、ベクター4シーズンズGEN-3 SUV(225/65R17 106V)が装着された「ジャガーEペース」で一般道を走行する。このタイヤも、圧雪路では直進、コーナリングともに高い安定感を発揮し、女神湖での試走以上にリラックスしてドライブを楽しむことができた。4WDとの組み合わせなら、まさに鬼に金棒といったところだ。
バンやトラック用の「カーゴ」もオススメ
この日は、2021年夏に発売された商用車向けオールシーズンタイヤ「ベクター4シーズンズ カーゴ」も試すことができた。
四季を通じて使え、必要十分な雪上性能を誇るのは、乗用車向けのベクター4シーズンズ ハイブリッド/GEN-3と同様。サイドウォールにスノーフレークマークが刻まれ、冬用タイヤ規制に対応するのもこれらと同じである。一方で、かねてロングライフ性能や低転がり抵抗性能に配慮した設計を採用している点は、経済性を重視する商用車向けタイヤらしいところだ。
145/80R12タイヤが装着されたFFの「ホンダN-VAN」では、雪道のグリップはGEN-3を上回る印象で、発進時、停止時のグリップに不安はなく、コーナーも思いどおりに駆け抜けることができる。直進安定性もまずまずで、その運転のしやすさは驚くほどだった。これなら突然の雪で足止めを食らうことはなくなるだろうし、雪予報を前にタイヤショップに駆け込む必要もないだろう。
非降雪地域のユーザーにとって、オールシーズンタイヤは安心で快適なカーライフを支える新しい選択だ。今回の試乗は雪上のみだったが、走行の大半を占めるドライ路面での静粛性や乗り心地も気になるところで、機会があればそういった環境であらためて試乗したいと思う。
(文=生方 聡/写真=webCG、日本グッドイヤー/編集=堀田剛資)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー 2025.9.5 かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。
-
第842回:スバルのドライブアプリ「SUBAROAD」で赤城のニュルブルクリンクを体感する 2025.8.5 ドライブアプリ「SUBAROAD(スバロード)」をご存じだろうか。そのネーミングからも想像できるように、スバルがスバル車オーナー向けにリリースするスマホアプリである。実際に同アプリを使用したドライブの印象をリポートする。
-
第841回:大切なのは喜びと楽しさの追求 マセラティが考えるイタリアンラグジュアリーの本質 2025.7.29 イタリアを代表するラグジュアリーカーのマセラティ……というのはよく聞く文句だが、彼らが体現する「イタリアンラグジュアリー」とは、どういうものなのか? マセラティ ジャパンのラウンドテーブルに参加し、彼らが提供する価値について考えた。
-
第840回:北の大地を「レヴォーグ レイバック」で疾駆! 霧多布岬でスバルの未来を思う 2025.7.23 スバルのクロスオーバーSUV「レヴォーグ レイバック」で、目指すは霧多布岬! 爽快な北海道ドライブを通してリポーターが感じた、スバルの魅力と課題とは? チキンを頬張り、ラッコを探し、六連星のブランド改革に思いをはせる。
-
第839回:「最後まで続く性能」は本当か? ミシュランの最新コンフォートタイヤ「プライマシー5」を試す 2025.7.18 2025年3月に販売が始まったミシュランの「プライマシー5」。「静粛性に優れ、上質で快適な乗り心地と長く続く安心感を提供する」と紹介される最新プレミアムコンフォートタイヤの実力を、さまざまなシチュエーションが設定されたテストコースで試した。
-
NEW
フォルクスワーゲン・ゴルフRアドバンス(前編)
2025.9.7ミスター・スバル 辰己英治の目利き「フォルクスワーゲン・ゴルフ」のなかでも、走りのパフォーマンスを突き詰めたモデルとなるのが「ゴルフR」だ。かつて自身が鍛えた「スバルWRX」と同じく、高出力の4気筒ターボエンジンと4WDを組み合わせたこのマシンを、辰己英治氏はどう見るか? -
ロイヤルエンフィールド・クラシック650(6MT)【レビュー】
2025.9.6試乗記空冷2気筒エンジンを搭載した、名門ロイヤルエンフィールドの古くて新しいモーターサイクル「クラシック650」。ブランドのDNAを最も純粋に表現したという一台は、ゆっくり、ゆったり走って楽しい、余裕を持った大人のバイクに仕上がっていた。 -
BMWの今後を占う重要プロダクト 「ノイエクラッセX」改め新型「iX3」がデビュー
2025.9.5エディターから一言かねてクルマ好きを騒がせてきたBMWの「ノイエクラッセX」がついにベールを脱いだ。新型「iX3」は、デザインはもちろん、駆動系やインフォテインメントシステムなどがすべて刷新された新時代の電気自動車だ。その中身を解説する。 -
谷口信輝の新車試乗――BMW X3 M50 xDrive編
2025.9.5webCG Movies世界的な人気車種となっている、BMWのSUV「X3」。その最新型を、レーシングドライバー谷口信輝はどう評価するのか? ワインディングロードを走らせた印象を語ってもらった。 -
アマゾンが自動車の開発をサポート? 深まるクルマとAIの関係性
2025.9.5デイリーコラムあのアマゾンがAI技術で自動車の開発やサービス提供をサポート? 急速なAIの進化は自動車開発の現場にどのような変化をもたらし、私たちの移動体験をどう変えていくのか? 日本の自動車メーカーの活用例も交えながら、クルマとAIの未来を考察する。 -
新型「ホンダ・プレリュード」発表イベントの会場から
2025.9.4画像・写真本田技研工業は2025年9月4日、新型「プレリュード」を同年9月5日に発売すると発表した。今回のモデルは6代目にあたり、実に24年ぶりの復活となる。東京・渋谷で行われた発表イベントの様子と車両を写真で紹介する。