【F1 2022】シンガポールGP続報:3年ぶりの元祖ナイトレース、輝いたペレスの力走
2022.10.03 自動車ニュース![]() |
2022年10月2日、シンガポールのマリーナベイ・ストリートサーキットで行われた、F1世界選手権第17戦シンガポールGP。マックス・フェルスタッペンの2連覇がかかった元祖ナイトレースは、度重なるセーフティーカーやバーチャルセーフティーカーで荒れた展開となった。
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残り6戦、2連覇へのカウントダウン
ロシアGPが抜けたことで、シーズン後半の3連戦後に一息つくことができたF1は、シンガポール、日本と続く3年ぶりのアジアラウンド2連戦と、アメリカ、メキシコ、ブラジルのアメリカ大陸シリーズ、そしてアブダビでの最終戦を残すまでとなった。
これまでの16戦で11勝、たったひとりで70%近くの勝率を誇るマックス・フェルスタッペンの2年連続タイトル獲得は秒読み段階を迎え、シンガポールがチャンピオン決定の場所になることもあり得た状況。残り6戦で手に入る最大ポイントは164点、シンガポールを終え5戦となると138点に減る。すなわちシンガポールでフェルスタッペンのリードが138点以上になれば連覇達成となり、ランキング2位のシャルル・ルクレールとのポイント差116点、同3位のセルジオ・ペレスとの125点差を考えれば、ここでの結果がどうあれ、戴冠が間近であることは明らかだった。
こうして2022年シーズンに(やや早めの)クライマックスが訪れようとしていた一方、来季に向けた動きも活発化。2023年のF1カレンダーが発表され、ラスベガスGPが新たに加わり、中国GPとカタールGPが復活、フランスGPが脱落した結果、史上最多の24戦が組み込まれることとなった。さらに2021年から導入された「スプリント」は、これまでの倍となる6回の開催が決定した。
来季のシートも着々と埋まりつつあり、アルファタウリは角田裕毅の、またアルファ・ロメオはジョウ・グアンユーの残留を正式にアナウンス。またウィリアムズはニコラス・ラティフィを今季限りで放出することを決め、アルピーヌとハースを含め、未確定の残席はわずかとなった。
パドックではきな臭いうわさ話も飛び交っていた。FIA(国際自動車連盟)は、2021年シーズンに各チームが予算制限ルールを順守したかのような分析を終え、今後はその結果を通達するプロセスに入るが、この制限を破ったチームがいるとかいないとか。もちろんしかるべき発表を待つしかないのだが、昨季メルセデスと最終戦までやりあったレッドブルに疑惑の目が向けられているから穏やかではなく、チーム代表同士の“舌戦”も繰り広げられた。
チャンピオンシップは佳境、F1は興行的に活況。ドライバーマーケットは流動、うわさ話は花盛り。ロシアGP中止でぽっかり空いた秋のひと時、F1はかくもにぎやかだった。
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ルクレールが接戦を制しポール、フェルスタッペンはまさかの予選8位
史上初のナイトレースとして2008年に始まったシンガポールGP。直角コーナーとストレートが連続する、壁に囲まれた典型的な市街地コースの特性に加え、高温多湿の気候やバンピーな路面、そして長丁場のレースと、ドライバーにとっては過酷極まりないマリーナベイが舞台だ。
土曜日は昼間のうちにしこたま雨が降り、やんだ後もコースは所々でぬれた状態。予選には各車とも浅溝のインターミディエイトタイヤで出走し、トップ10グリッドを決めるQ3になるとドライのソフトタイヤで周回、コンディションが良化した終盤に向けて次々とタイムが更新され白熱した。
ポールポジションを獲得したのはフェラーリのルクレールで、跳ね馬が得意のコースで一矢報いたかっこう。前戦イタリアGPから2戦連続となる今季9回目、通算では18回目のポールとなった。予選2位はレッドブルのペレス、3位にはメルセデスのルイス・ハミルトンが続き、トップから3位までの差はわずか0.054秒という接戦だった。
フェラーリのカルロス・サインツJr.が4位、アルピーヌのフェルナンド・アロンソ5位、マクラーレンのランド・ノリス6位、そしてアルファタウリのピエール・ガスリーは7位。フェルスタッペンは、予選終了間際に予定より1周多く走れたことで燃料不足に陥る可能性があり、ポール獲得に十分なタイムを記録していながらチームからアタック中止を言い渡され、まさかの8位に沈んだ。
5列目には、ハースのケビン・マグヌッセン9位、そして初の母国GPを目前に控えたアルファタウリの角田裕毅が10位と入賞圏内からのスタートとなった。
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雨により1時間遅れでスタート、ペレスがトップ奪取
直前にバケツをひっくり返したような雨が降り、レースは予定より1時間5分遅れて始まることに。全車インターミディエイトタイヤを履いて迎えたスタートでは、ペレスが抜群の滑り出しで真っ先にターン1に飛び込むと、ルクレール、サインツJr.、ハミルトン、ノリスらを従えてオープニングラップを終えた。またフェルスタッペンはアンチストールが働き8位から一気に12位に落ちたものの、その後2周のうちに10位まで挽回した。
ウエット路面でトリッキーなコンディションとなったことで、セーフティーカーやバーチャルセーフティーカー(VSC)が頻発。まずは8周目、ニコラス・ラティフィのウィリアムズとジョウ・グアンユーのアルファ・ロメオの接触によりセーフティーカーが導入された。
各車のギャップが帳消しとなったことはフェルスタッペンに加勢し、11周目にレースが再開すると、それまで抜きあぐねいていたアストンマーティンのセバスチャン・ベッテルをかわし8位、程なくしてガスリーもオーバーテイクし7位と順調に駒を進めていたのだが、強敵アロンソには進路を阻まれ、しばしアルピーヌの後塵(こうじん)を拝することになる。
一方、首位ペレスと2位ルクレールは1秒半のギャップのまま付かず離れずで周回。3位サインツJr.以下は6秒以上後ろとなり、優勝は序盤から2台の間で争われることになった。
21周目、アロンソがトラブルを抱えエスケープロードでストップ、VSCが出ると、ピットレーンスタートで後方から追い上げていたメルセデスのジョージ・ラッセルがドライタイヤにスイッチする賭けに出た。しかし、路面の乾きは遅く、溝なしのスリックタイヤはまだリスクが高かった。
26周目、ウィリアムズのアレクサンダー・アルボンがターンで曲がりきれずウォールに突っ込み、フロントウイングを落としたことで再度VSC。その2周後にはアルピーヌのエステバン・オコンがトラブルでストップし3度目のVSCとなるも、多くのマシンはタイヤを替えずにコースにとどまり続けた。
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フェルスタッペンのタイトル確定はお預け、ペレスは審議の末に勝利確定
レースは1時間を過ぎ、まだ周回数は半分にも達していなかった。規定周回の61周完了の前に、スタートから2時間で終了するルールが適用されることが濃厚となっていた。
引き続きトップを快走するペレス、2位ルクレール、3位サインツJr.の後ろでは、目の前のフェラーリをなかなか抜けないでいたハミルトンがフラストレーションを募らせていた。33周目、7冠王者はたまらずコースオフ、ウォールに突っ込んでしまった。ピットでノーズを交換したハミルトンはその後も走行を続け、結果9位でフィニッシュすることになった。
もう1台のメルセデス、ミディアムタイヤで走行を続けていたラッセルがいよいよペースを上げてきているのを知ったフェラーリは、35周目、2位から抜け出せずにいたルクレールをピットに呼び、またレッドブルもペレスとフェルスタッペンにミディアムを与えた。
その直後、ドライタイヤに履き替えたばかりの角田がブレーキングポイントを誤り、壁に突き刺さってリタイア。セーフティーカー再登場。各車がドライタイヤに履き替えると、上位のオーダーは1位ペレス、2位ルクレール、3位サインツJr.、4位ノリス、5位フェルスタッペン、そして16番手スタートだったマクラーレンのダニエル・リカルドが運よくこのタイミングでタイヤを交換でき、6位につけていた。
40周目にレースが再開すると、フェルスタッペンがノリスを抜こうとインに飛び込んだのだが曲がりきれず、タイヤをロックさせてエスケープロードに突進。これでフラットスポットをつくってしまったフェルスタッペンは再度ピットインを余儀なくされ最後尾に落ち、最終的に7位でフィニッシュ。タイトル確定は次戦以降にお預けとなった。
首位をキープし続けてきたペレス陣営にも不穏な空気が流れていた。セーフティーカーとの間隔を規定の10車身以内に保たなかったことで審議対象となり、さらにパワーユニットの不調を訴えるようになったのだ。
レース終盤にDRSの利用が解禁され、ペレスの真後ろにつけていたルクレールに追い風が吹いているかにみえたのだが、ストレートで速いレッドブルゆえ、なかなかオーバーテイクには至らない。残り20分、ペレスはレース後に5秒ペナルティーが科されることも想定して猛スピードでルクレールとのギャップを拡大し、ルクレールに7.5秒もの差を築いてチェッカードフラッグが振られたのだった。
ペレスの審議結果が公表されたのは、ゴールから3時間近くたった後のこと。5秒加算のペナルティーと警告だけにとどまったことで、モナコGPに次ぐ今シーズン2勝目は確定。煌々(こうこう)とした人工光のもと、ひときわ光り輝いたメキシカンの力走にケチはつかなかった。そしてフェラーリはルクレール、サインツJr.でダブル表彰台となり、1-2フィニッシュの夢は幻に終わった。
フェルスタッペンの戴冠の機会は、次戦日本GPへ。3年ぶりの同GPは、鈴鹿サーキットで10月7日に開幕、9日にレースが開催される。
(文=bg)