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第746回:雨も風もなんのその! 「ポルシェフェスティバル」の盛況ぶりを目の当たりにする

2023.06.05 エディターから一言 鈴木 真人
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歴史的名車がずらり

ブランド生誕75周年を祝うポルシェフェスティバルは、時ならぬ台風襲来で開催が危ぶまれる事態になっていた。アジア最大のコミュニティーイベントが行われたのは6月3日から2日間。会場は千葉県木更津市に位置するポルシェ・エクスペリエンスセンター東京(PEC東京)である。前日はアクアラインが通行止めになっていたので心配したが、幸いにも風雨は収まりつつあった。

直接会場に向かったのではない。日本全国からポルシェファンが集まるので、エクスペリエンスセンターの駐車場ではキャパシティー不足なのだ。近隣の駐車場にクルマをとめて、そこからバスで向かうという段取りである。朝9時に到着すると、ラウンジはすでに熱気があふれていた。

当初の予定では午前10時にオープニングセレモニーが行われることになっていたが、天候を考慮して1時間遅らせることに。せっかく来たのはいいが、参加者は待ちくたびれてしまうのではないかと不安になった。杞憂(きゆう)である。ポルシェの歴史的名車が展示されていて、見ているだけで飽きない。

ラウンジの中央に鎮座していたのは、ガルフカラーの「917KH」。1971年のスパ・フランコルシャン1000kmレースで優勝したモデルだ。800kgの軽量ボディーに630PSの空冷5リッター水平対向12気筒エンジンを搭載し、最高速度は360km/hを誇る。建物を出ると、「904カレラRS」から「919ハイブリッド」まで、新旧のレーシングカーが並べられていた。ポルシェがレースで積み上げてきた栄光の歴史がひと目で見渡せるのだ。

ショップが併設されていて、豊富なポルシェグッズが販売されている。Tシャツやパーカーといったファッションアイテム、時計、カバンなど、充実した品ぞろえだ。運転好きなら、シミュレーターラボでドライビング体験にトライするのがいい。世界中の有名レーストラックがコースとして用意されている。プロのレーシングドライバーも練習で使っているリアルなドライビングシミュレーターだから、臨場感たっぷりである。

おなかがすいたら、特設の飲食スペースに向かえばいい。オンラインでチケットを購入し、キッチントラックの提供する多彩なメニューから好きなものを選ぶ方式だ。テントが設置されているので、雨にぬれずにランチを楽しむことができる。

2023年6月3日、4日に開催された「ポルシェフェスティバル」。千葉県木更津市にあるポルシェのブランド体験施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」が舞台だ。
2023年6月3日、4日に開催された「ポルシェフェスティバル」。千葉県木更津市にあるポルシェのブランド体験施設「ポルシェ・エクスペリエンスセンター東京」が舞台だ。拡大
外周路にずらりと並んだオーナー自慢のポルシェ。
外周路にずらりと並んだオーナー自慢のポルシェ。拡大
2日間で延べ3019人が来場した「ポルシェフェスティバル」。会場に集まったポルシェ車は2日間で618台に上った。
2日間で延べ3019人が来場した「ポルシェフェスティバル」。会場に集まったポルシェ車は2日間で618台に上った。拡大
webCGチームが取材した6月3日は午前中に台風の影響が残って大変だったが、快晴に恵まれた翌4日は暑くて大変だったらしい。
webCGチームが取材した6月3日は午前中に台風の影響が残って大変だったが、快晴に恵まれた翌4日は暑くて大変だったらしい。拡大
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木更津市とポルシェの強固な関係

天候が回復しないので、再度スタートを1時間繰り下げることが告げられた。12時近くなると、ようやく空が明るくなってくる。雨が降りやんだのを確認し、コース内にしつらえられたメインステージでセレモニーが始まった。登場したのは、ポルシェジャパンのフィリップ・フォン・ビッツェンドルフ社長である。

就任して1年、ブロークンながらちゃんと伝わる日本語であいさつした。難しい話は英語である。1948年6月8日にポルシェのファーストモデル「356 No.1ロードスター」がデビューしたと語り、75周年をみんなで祝いましょうと呼びかける。日本ではクラシックポルシェが大切にされていて、素晴らしいコンディションのモデルが多いと称賛。雨でも足を運んだ熱心なポルシェファンに感謝の言葉を述べた。

さらに、“チーバシティーキザラズ”に謝意を表すことも忘れなかった。PEC東京がある木更津市のことである。ポルシェジャパンは、木更津市内の小中学校の給食に、有機米を提供しているのだという。友好の証しとして、10月に開催される「木更津ブルーベリーラン」へのエントリーを表明した。グループで走る市民参加のリレーマラソンで、2020年からはPEC東京で開催されている。

さらに、木更津市のふるさと納税にPEC東京のプログラムを提供することを発表。全施設を1日貸し切りにするというぜいたくなプランもあるが、1700万円の寄付が必要だから万馬券でも当てない限り選ぶのは厳しそうだ。ポルシェ同乗体験とランチなら7万円から可能で、そのぐらいなら現実味がある。

フィリップ社長が今年は「911」のデビュー60周年でもあると話すと、ステージの大画面にスペシャル映像が流れ始めた。でも、映し出されたのはポルシェではなく「ブガッティ・タイプ35」。『THE THEME OF WINNER』のメロディーが聞こえる。そう、『カーグラフィックTV』で以前使われていたテーマ曲だ。番組のスタッフが制作したプロモーションビデオだったのである。

フェスティバルの開幕を告げたポルシェジャパンのフィリップ・フォン・ビッツェンドルフ社長。「75周年をみんなで祝いましょう」と語るとともに、豪雨のなか不眠不休で準備を進めてきたスタッフにも感謝を述べた。
フェスティバルの開幕を告げたポルシェジャパンのフィリップ・フォン・ビッツェンドルフ社長。「75周年をみんなで祝いましょう」と語るとともに、豪雨のなか不眠不休で準備を進めてきたスタッフにも感謝を述べた。拡大
独ポルシェが監修するデイリーマガジン『Type7』のテッド・グシュー編集長と日本のレジェンドドライバー生沢 徹氏によるトークショー。4月26日発売の『Type7』では生沢氏の特集が組まれている。
独ポルシェが監修するデイリーマガジン『Type7』のテッド・グシュー編集長と日本のレジェンドドライバー生沢 徹氏によるトークショー。4月26日発売の『Type7』では生沢氏の特集が組まれている。拡大
生沢氏とテッド編集長によるサイン会の様子。
生沢氏とテッド編集長によるサイン会の様子。拡大
外周路は車両展示によって走れなくなっていたが、スタッフ同乗のドリフト体験やオフロード体験などのコンテンツは楽しめるようになっていた。
外周路は車両展示によって走れなくなっていたが、スタッフ同乗のドリフト体験やオフロード体験などのコンテンツは楽しめるようになっていた。拡大

2つのジャパンプレミア

1963年に「901」が登場してからの歴史を概観する映像が終わると、ステージに現れたのは「911ダカール」。最新モデルのジャパンプレミアである。1984年のパリダカで総合優勝した「953」のオマージュで、カラーリングもラリー仕様。サーキットではなくオフロード走行に最適化された911であり、「911 GTS」をベースに50mmリフトアップされている。

1981年に911初の4WDモデルが登場してから積み上げてきたテクノロジーを詰め込んだ“究極のグランドツアラー”だという。開発では、スウェーデンからモロッコまで50万kmのテスト走行を重ねたそうだ。SUVの「カイエン」や「マカン」が人気となっているが、オフロードで無敵の911というのは魅力的だ。ただし、世界で2500台の限定販売である。

ジャパンプレミアはもう1つあった。マイナーチェンジを受けたカイエンである。ステージに勢いよく登場したが、スピードが出すぎていて停止位置をオーバー。ABSがいい仕事をしていた。アグレッシブなのはポルシェらしくていい、ということにしよう。ヘッドライトデザインなどが変更されているが、911ダカールの後では少々インパクトに欠けたのは無理からぬことだ。

台風も吹き飛ばし、参加者たちは全身でポルシェの世界を体感していた。木更津は、日本におけるポルシェの聖地という立ち位置を手に入れつつある。ストロー現象で地盤沈下気味だったが、氣志團に代わる看板として世界最高のスポーツカーのブランドを手に入れた。ポルシェにとっても、カルチャー発信の拠点を築いたことは大きなアドバンテージになる。ポルシェフェスティバルは、自動車メーカーと自治体が手を結ぶパートナーシップのお手本ともいえるイベントだった。

(文=鈴木真人/写真=ポルシェジャパン/編集=藤沢 勝)

「ポルシェフェスティバル」で日本初披露された「911ダカール」(手前)と「カイエン」(写真左後ろ)、「カイエン クーペ」(写真右後ろ)
「ポルシェフェスティバル」で日本初披露された「911ダカール」(手前)と「カイエン」(写真左後ろ)、「カイエン クーペ」(写真右後ろ)拡大
世界限定2500台のみが販売される「911ダカール」。「953」へのオマージュを込めた、オフロードも走れる911だ。
世界限定2500台のみが販売される「911ダカール」。「953」へのオマージュを込めた、オフロードも走れる911だ。拡大
ベースモデルは「911 GTS」。車高が50mmアップしたほか、専用開発のオフロード用タイヤを履く。
ベースモデルは「911 GTS」。車高が50mmアップしたほか、専用開発のオフロード用タイヤを履く。拡大
ルマン24時間レース(6回!)とパリダカールラリーの両方を勝った唯一のドライバーであるジャッキー・イクス氏が登場し、ともに75周年を祝った。
ルマン24時間レース(6回!)とパリダカールラリーの両方を勝った唯一のドライバーであるジャッキー・イクス氏が登場し、ともに75周年を祝った。拡大
「911ダカール」のボンネットにサインするジャッキー・イクス氏。
「911ダカール」のボンネットにサインするジャッキー・イクス氏。拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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