「ランドクルーザー」の次はコレ! 発表会で予告されたトヨタの新SUVを考察する
2023.09.04 デイリーコラム晴れの舞台は見どころいっぱい
このところ業界かいわいをザワつかせているのがトヨタの新型車発表会。なぜかといえば、面白いから。
新型車の発表会といえばかつては偉い人のあいさつの後に開発関係者が資料を読むかのように淡々と車両説明をするのがお約束で、正直なところ単調なものだった。しかし、新型「プリウス」以降のトヨタの新型車発表会では、同社のデザイン部門トップであるサイモン・ハンフリーズ氏がジョークを交えながら自分の言葉で話すスタイルになり、その軽快なトークには思わず引き込まれてしまう。まるでアップルのスティーブ・ジョブズ氏のような「聞かせるスピーチ」で、見る人を楽しませてくれるのである。その様子はトヨタ公式YouTubeでライブ配信され、アーカイブとしても見られるから、クルマ好きならぜひ見ることをオススメしたい。本当に面白いから。
もうひとつ面白いのは、将来登場する新型車をチラ見せすることだ。例えば新型「アルファード/ヴェルファイア」の発表会では、アルファードやヴェルファイアにおけるショーファードリブンとしてのニーズの強まりに関連して、「センチュリー」の写真とともに「究極のショーファーカーであるセンチュリーさえも、大胆に変えようと、すでに動いている。年内には、トヨタのショーファーシリーズに新たなエディションが加わることをお伝えできればと思います」と今後発売予定の“センチュリーSUV”を示唆。そんな先取り情報も見逃せないのですよ。
実は、先日の「ランドクルーザー“250”」と「ランドクルーザー“70”」のお披露目でも、将来の新型車について触れるシーンがあった。
「ランクルに限らず、移動の自由をさらに高める、まったく新しいモビリティーへのアプローチまでを探求していきます」「クルマの未来を変えるためのエキサイティングな道がたくさんあることは、言うまでもないでしょう」として、まだ見たことのない2台のSUVのシルエットの写真がスクリーンに映され、会場をザワつかせたのだ。この2台はいったいナニ?
2年前にも予告していた?
写真を見ると、1台のシルエットは伸びやかで、かなり大きな車体であることがわかる。
かつて販売していた「FJクルーザー」に近いシルエットを持つもう1台はそれとは逆に、明らかに全長が短い。タイヤの大きさや前後間隔から推察するに相当にコンパクトだ。
そして説明にもヒントがあった。「カーボンニュートラルへのさらなる提案」「より手に入れやすくできないか」とサイモン氏は言うのだ。
それにしても、この2台はどこかで見たことがあるような……と思って探したら、ありましたよ、似ているクルマが。
まず“大きいほう”は、北米のレクサスが2021年12月に公開した「レクサスElectrified SUV」によく似ている。こちらは「レクサスRZ」よりも上のポジションとなる、大型のEVだ。「カーボンニュートラルへのさらなる提案となるEVのラグジュアリーSUV」ということなのだろう。
そして“小さいほう”にもヒントが。2021年にトヨタがEV戦略に関する説明をした際、開発しているEVモデル(らしき車両)のモックアップがたくさん公開された。そのなかにあった「コンパクトクルーザーEV」のプロポーションによく似ているのです。
「より手に入れやすくできないか」というのは、決して「ランクルの納車待ちを短くします」という意味ではなく、どうやら「コンパクトでリーズナブルなオフローダー」という提案らしい。個人的にはEVの大型SUVよりもがぜんこちらに興味があるのですが、皆さんはいかがでしょう?
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |
EV以外もあるかもしれない
ただ気になるのは、いくらコンパクトでも「EVはちょっとなー」ってこと。車体が小さいとはいえ、どう考えてもリーズナブルに提供されるとは思えない。っていうか、筆者は集合住宅暮らしだからEVは買えない……。
そのあたりどうなってるのよ……と調べてみたら、世間で「小さなランクル」とうわさされているこのクルマは2024年発売(あくまでうわさ)でEVもあるがコンベンショナルなエンジン仕様も企画されているとかいないとか(念のため断っておきますが、まだ発表されていない将来の商品計画なので今のところ確定情報はありません!)。
もしもガソリン(やハイブリッド)もあり、ランクルのような雰囲気を持ったコンパクトモデルなら、かなり魅力的じゃないだろうか。もしかすると、ライバルは「ジムニー5ドア」か?
わかりますよ。心配なのはラダーフレームに強靱(きょうじん)な4WDシステムを組み込むのか? ってことですよね。そこに関しても、結論から言えば現時点ではよくわからない。
ラダーフレームといううわさも飛び交っている(ランクルのイメージならそう思いたくもなる)けれど、これ1車種のためにトヨタが莫大(ばくだい)な予算を投じて小さなラダーフレームを新規開発するというのは考えにくいわけで……。もしあるとすれば「IMV」シリーズのように、同じメカニズムを使うコンパクトなピックアップトラックやコンパクトミニバンも展開するという流れだろうか。それなら考えられなくもない。
しかしやっぱりモノコックボディーと考えるのが自然かな……と思ったりするわけですが、果たしてどうなるか?
いずれにせよ、トヨタ(&レクサス)のSUVはこれからますます増えるのだけは間違いなさそうだ。それは、今回紹介した「大きなラグジュアリーEV」や「小さなランクル」をはじめ今までになかったジャンルにも手を広げることを意味しているといってもよさそうである。
(文=工藤貴宏/写真=トヨタ自動車/編集=関 顕也)
![]() |
![]() |
![]() |
![]() |

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
-
メルセデスとBMWのライバルSUVの新型が同時にデビュー 2025年のIAAを総括するNEW 2025.9.24 2025年のドイツ国際モーターショー(IAA)が無事に閉幕。BMWが新型「iX3」を、メルセデス・ベンツが新型「GLC」(BEV版)を披露するなど、地元勢の展示内容はモーターショー衰退論を吹き飛ばす勢いだった。その内容を総括する。
-
世界中で人気上昇中! 名車を生かしたクルマ趣味「レストモッド」の今を知る 2025.9.22 名車として知られるクラシックカーを、現代的に進化させつつ再生する「レストモッド」。それが今、世界的に流行しているのはなぜか? アメリカの自動車イベントで盛況を目にした西川 淳が、思いを語る。
-
「マツダEZ-6」に「トヨタbZ3X」「日産N7」…… メイド・イン・チャイナの日本車は日本に来るのか? 2025.9.19 中国でふたたび攻勢に出る日本の自動車メーカーだが、「マツダEZ-6」に「トヨタbZ3X」「日産N7」と、その主役は開発、部品調達、製造のすべてが中国で行われる車種だ。驚きのコストパフォーマンスを誇るこれらのモデルが、日本に来ることはあるのだろうか?
-
建て替えから一転 ホンダの東京・八重洲への本社移転で旧・青山本社ビル跡地はどうなる? 2025.9.18 本田技研工業は東京・青山一丁目の本社ビル建て替え計画を変更し、東京・八重洲への本社移転を発表した。計画変更に至った背景と理由、そして多くのファンに親しまれた「Hondaウエルカムプラザ青山」の今後を考えてみた。
-
トランプも真っ青の最高税率40% 日本に輸入車関税があった時代 2025.9.17 トランプ大統領の就任以来、世間を騒がせている関税だが、かつては日本も輸入車に関税を課していた。しかも小型車では最高40%という高い税率だったのだ。当時の具体的な車両価格や輸入車関税撤廃(1978年)までの一連を紹介する。
-
NEW
ボルボEX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】
2025.9.24試乗記ボルボのフル電動SUV「EX30」のラインナップに、高性能4WDモデル「EX30ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」が追加設定された。「ポルシェ911」に迫るという加速力や、ブラッシュアップされたパワートレインの仕上がりをワインディングロードで確かめた。 -
NEW
メルセデスとBMWのライバルSUVの新型が同時にデビュー 2025年のIAAを総括する
2025.9.24デイリーコラム2025年のドイツ国際モーターショー(IAA)が無事に閉幕。BMWが新型「iX3」を、メルセデス・ベンツが新型「GLC」(BEV版)を披露するなど、地元勢の展示内容はモーターショー衰退論を吹き飛ばす勢いだった。その内容を総括する。 -
“いいシート”はどう選べばいい?
2025.9.23あの多田哲哉のクルマQ&A運転している間、座り続けることになるシートは、ドライバーの快適性や操縦性を左右する重要な装備のひとつ。では“いいシート”を選ぶにはどうしたらいいのか? 自身がその開発に苦労したという、元トヨタの多田哲哉さんに聞いた。 -
マクラーレン750Sスパイダー(MR/7AT)/アルトゥーラ(MR/8AT)/GTS(MR/7AT)【試乗記】
2025.9.23試乗記晩夏の軽井沢でマクラーレンの高性能スポーツモデル「750S」「アルトゥーラ」「GTS」に一挙試乗。乗ればキャラクターの違いがわかる、ていねいなつくり分けに感嘆するとともに、変革の時を迎えたブランドの未来に思いをはせた。 -
プジョー3008 GTアルカンターラパッケージ ハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2025.9.22試乗記世界130カ国で累計132万台を売り上げたプジョーのベストセラーSUV「3008」がフルモデルチェンジ。見た目はキープコンセプトながら、シャシーやパワートレインが刷新され、採用技術のほぼすべてが新しい。その進化した走りやいかに。 -
第319回:かわいい奥さんを泣かせるな
2025.9.22カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。夜の首都高で「BMW M235 xDriveグランクーペ」に試乗した。ビシッと安定したその走りは、いかにもな“BMWらしさ”に満ちていた。これはひょっとするとカーマニア憧れの「R32 GT-R」を超えている?