ベントレー・コンチネンタルGTスピード(4WD/8AT)/コンチネンタルGTCスピード(4WD/8AT)
その性能に死角なし 2024.10.03 試乗記 “ベントレーといえば”のW12エンジンに別れを告げ、世代交代とともに、新開発のV8プラグインハイブリッドシステムを手に入れた「コンチネンタルGT」シリーズ。スイスで初試乗してわかった、新型の走りの特徴は?中身としてはほぼ一新
4WDの高性能スポーツクーペとして2003年に登場したコンチネンタルGTは、超高級グランドツアラーという新たなカテゴリーを創出し、傘下におさめたフォルクスワーゲン グループのもくろみどおりの成功をおさめた。なかでもそのスタイリングにおいては、全く新しいデザインでありながらベントレーらしさと新たなブランドイメージを両立するという離れ業をやってのけた。初代は大傑作だったといっていい。
初代のデビューから20年間、都合3世代のコンチネンタルGTを世に送り出したが、いずれも初代のアイコニックなスタイリングを踏襲し、とりわけ4灯ヘッドライトにはこだわってモデルチェンジを繰り返してきた。
2024年に第4世代へと進化したコンチネンタルGTは、初代のクーペスタイルを踏襲しつつ、特徴であった4灯ライトを諦めて、2灯タイプへと改めている。“虎の目”をほうふつとさせるこのデザインは、ベントレーボーイズ時代のレーシングモデルへと原点回帰するとともに、「バカラル」や「バトゥール」といったフューオフモデルによって示されたブランドの“新たなデザイン方向”を具体化するものでもあった。
基本的なスタイリングは第3世代を踏襲するものの、パーツやコンポーネンツの約7割は新設計であり、特に新開発プラグインハイブリッドのV8パワートレインや完全刷新のシャシー&サスペンションシステム、さらには新設計の400V電気アーキテクチャーなど、中身的にはフルモデルチェンジ級の変貌を遂げている。
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質感はさらに向上
まずは最上級グレード、クーペの「GTスピード」とコンバーチブルの「GTCスピード」が同時デビューとなった第4世代。日本上陸を前にスイスの新たなリゾート地アンデルマットで、公道試乗会が開催された。イタリアとの国境に近く、世界屈指の美しくも挑戦的なワインディングロードを抱く峠が何カ所もあるという、近年、クルマ好きやバイク好きに人気の場所が舞台だ。
当日は朝からあいにくの雨。それでも試乗開始とともに雨はやみ、ぬれてはいるけれど4WDのGTにとっては何ら問題のない路面コンディションのなか、まずはGTCスピードを試してみることに。もちろんトップを下げて。
顔つきやお尻のデザインが変わった以外、見た目の変化はインテリアも含めてほとんどない。もとよりラグジュアリーなインテリアは、物理スイッチもたくさん残っていて、アラカン世代にはうれしい限り。
もともと高かった見栄え質感もさらに向上した。なかでも3Dキルティングシートやダーククロームスペシフィケーションが目新しい。試乗車には落ち着いた配色のインテリアにビビッドな差し色が入っていた。最近のベントレーは、内外装ともに派手な色がよく似合う。マリナーで好みの仕様に仕立てる時の参考にもなるだろう。
V8サウンドに心が躍る
試乗でぜひとも確かめておきたかったポイントは、エンジン+電気モーター+バッテリーのシステム最高出力782PS、システム最大トルク1000N・mというパワートレインに加えて、全く新しいサスペンションシステムの2点だった。
トップを開け、ドライブモードを「B(クルマにお任せ)」にして走らせた途端、後者の出来栄えに舌を巻く。もちろんEVモードでのスタートとなったわけだが、その静かさとスムーズなドライブフィールに見合うよう、アシはウルトラスムーズに転がり始めた。
先代のGTCはクーペに比べてリキみのない乗り心地が特徴だったとはいうものの、一般道では大きなタイヤ&ホイールが時折バタつくきらいがあった。新型ではそれをほとんど感じない。新たなアクティブシャシーシステム用に新採用されたツインバルブダンパーとデュアルチャンバーエアスプリングの効能なのだろう。さらに言うと、コンフォートモードでも乗り心地ははっきりと向上しており、これまたタイヤが震えることもなかった。とにかくよく転がるのだ。電動化を進めるにあたって、抵抗のない転がりフィールはとても重要である。ランナバウトでは重量増をまるで感じさせず、素直に曲がっていく。ワインディングロードでの走りに早々期待を抱いた。
街を出て10分、早くも険しい山岳路に突入する。アクセル開度75%まで、そして140km/hまではバッテリー&電気モーター駆動で走ることができるから、それを最大限生かそうとするBモードを続けていても何ら問題はない。けれども新開発V8エンジンの実力も試してみたい。我慢できずモードをスポーツに。足元でV8クロスプレーン独特のうなりが聞こえたと思うと、決してうるさくはないけれど乗り手の心を躍らせるには十分に豊かなエキゾーストノートがたなびき始める。サウンドそのものの質感も以前より格段に心地よく、スポーティーになっていた。
スポーツカーとして楽しめる
もちろん音だけじゃない。まずは加速だ。ここでも重量バランスの良さが効いているのだろう。もりもり感がずっと続く加速フィールで、物体としてのクルマの存在感が知らぬ間にとても小さくなっている。バランスも良く、安心感も抜群。ハラハラはしないけれど、ドキドキする。
圧巻はコーナリングパフォーマンスだった。バッテリーを後方に配置したおかげで前後の重量配分が好転し、さらにリアステアやアクティブシャシーのおかげで、とにかくグイグイ曲がっていく。4WDであることを忘れるどころか、これはもうFRそのもののステアリングフィールだ。
コンポジットブレーキは恐ろしくタフで、コントローラブル。制動時には余計な重量を感じさせず、姿勢良く減速するから、コーナリングも、そこからの加速もまた思いのまま。要するにスポーツカーとして操ることができるようになった。そして、歴代ベントレーとしては個人的に初めて、ドライブの最後までスポーツモードから離れ難かったのだ!
もちろんGTとしてのハイウェイパフォーマンスも進化している。けれども同時にスポーツカーとしても楽しめるようになった。そのことはクーペに乗り換えてみてもいっそう実感できる。乗り心地はGTCと同様に変わらず極上であり、スポーツでもコンフォートでも足元の動きに不満がない。4WDによる安心感も群を抜く。工業製品として上出来で、妥協がないのだ。
今や3000万~4000万円級のラグジュアリークーペ&オープンは激戦マーケットになった。マーケットを創出した元祖モデルの意地というものだろう。最大81kmまで電動走行も可能で、しかもよくできたGTでありつつ、ドライビングファンなスポーツカーでもある。新型コンチネンタルGT&GTCスピードには、ほとんどパフォーマンス面での死角はないといっていい。
(文=西川 淳/写真=ベントレー モーターズ/編集=関 顕也)
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テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTスピード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4895×1966×1397mm
ホイールベース:2851mm
車重:2459kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:600PS(441kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:782PS(575kW)
システム最大トルク:1000N・m(102.0kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y/(後)315/30ZR22 107Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.3リッター/100km(約9.7km/リッター、WLTPモード)
価格:3930万3000円(日本国内価格)
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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ベントレー・コンチネンタルGTCスピード
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4895×1966×1392mm
ホイールベース:2848mm
車重:2636kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:600PS(441kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:782PS(575kW)
システム最大トルク:1000N・m(102.0kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y/(後)315/30ZR22 107Y(ピレリPゼロ)
燃費:10.6リッター/100km(約9.4km/リッター、WLTPモード)
価格:4312万円(日本国内価格)
オプション装備:--
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

西川 淳
永遠のスーパーカー少年を自負する、京都在住の自動車ライター。精密機械工学部出身で、産業から経済、歴史、文化、工学まで俯瞰(ふかん)して自動車を眺めることを理想とする。得意なジャンルは、高額車やスポーツカー、輸入車、クラシックカーといった趣味の領域。
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