生誕40年を迎えた驚異のご長寿モデル! デビュー当時の「ナナマルランクル」はどんなクルマだったのか?
2024.12.11 デイリーコラム最初から古くさかった
2023年、日本では2度目の再販となったトヨタのヘビーデューティーSUV「ランドクルーザー“70”」。前回の再販のときにもそれなりに話題になったが、今回はさらに注目が集まっているような気がする。
デザインも走りも洗練されたSUVが増えている反動かもしれないし、同じ時期に「プラド」の生まれ変わりとしてデビューした「ランドクルーザー“250”」が、ボディーサイズやプライスをアップしてきたことも関係しているだろう。
再販のときは4リッターV型6気筒ガソリンエンジンに5段MTという、税制面でも免許面でも乗り手を選ぶ仕様だったのに対し、今回は2.8リッター直列4気筒ディーゼルターボと6段ATのコンビで、敷居が下がったことも人気を後押ししていると思う。
僕は1985年、当時はRV(レクリエーショナルビークル)と呼ばれていたクロスカントリー4WDやワンボックスカーの専門誌の編集部に入ったこともあって、その1年前に発売されたランドクルーザー“70”には初期のころから触れてきた。そのときの記憶を呼び戻すと、このクルマの評価の変化に驚いている。
実は初期のランドクルーザー“70”は、デビューしたてなのに古くさかったからだ。そう思わせたのは、少し前に登場していた「三菱パジェロ」の存在が大きい。
フロントサスのコイル化は1999年
初代パジェロは、エンジンは2リッターガソリン/2.3リッターディーゼルターボともに乗用車用を使い、フロントサスペンションを独立懸架としたうえに、乗用車登録仕様もいち早く導入した。
それに比べるとランドクルーザー“70”は、サスペンションは前後ともリーフリジッドで、3.4リッター4気筒ディーゼルエンジンともども、前任車にあたる「ランドクルーザー“40”」と基本的に同じ。当時の多くの国産SUV同様、商用車登録のみだった。
ATやパワーステアリングは備えていたけれど、走らせるととにかく鈍重で、オンロードをセダン並みにこなせるパジェロとの差は歴然としていた。
とはいえトヨタも黙っていたわけではなく、フレームを軽量化して乗用車用の2.4リッターディーゼルターボエンジンを載せ、サスペンションは当時としては先進的な4輪コイルのリジッドアクスルとしたモデルを、「ランドクルーザーワゴン」として発売した。これが後のランドクルーザープラドになる。
さらに“70”自身も、1989年のマイナーチェンジで、エンジンを新設計の3.5リッター5気筒と4.2リッター6気筒に積み替え、10年後には前後ともリジッドのサスペンションのうち、フロントのスプリングをコイルに変更した。
これで乗り味は格段に洗練された。ただディーゼルのみということで、21世紀に入るとNOx・PM法の影響を受け、2004年に国内から一度姿を消した。
変わらない思想と時代の変化への対応
次に登場したのが2014年の再販モデル。日本仕様の“70”では唯一ガソリンエンジンを積んだこの世代は、シートが格段に良くなった。そして現行型では、4気筒ディーゼルに戻ったものの、回り方は昔とは別次元の滑らかさ。ATが4段から6段になったことも大きい。
この間、頑丈なラダーフレームに前後リジッドのサスペンション、パートタイム式4WDという基本構成は、ボディーの骨格ともども40年間不変だ。
道なき道を踏破し、生きて帰ってくるというミッションのためには、部品の調達や修理がしやすいことが大事だ。モデルチェンジせずに生き続ける理由のひとつはここにあるだろう。商品である以前に、道具なのである。
でもここまで書いてきたように、40年間何も変わらなかったわけではなく、着実に進化もしている。パワートレインは確実に洗練の度合いを高めているし、フロントスプリングをコイル化したことも効いている。
揺るぎない思想をバックボーンに据えつつ、時代の変化に確実にアジャストしていく。多くの人が憧れる生きざまではないだろうか。もちろん信頼性や走破性も素晴らしいけれど、ランドクルーザー“70”の魅力は、そういったところにもあるような気がする。
(文=森口将之/写真=トヨタ自動車/編集=藤沢 勝)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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