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BMW M135 xDrive(4WD/7AT)

週末ジョガーにはちょっとキツイ 2025.01.21 試乗記 高平 高輝 新型「BMW 1シリーズ」のトップパフォーマンスモデル「M135 xDrive」に試乗。さすがBMWのホットハッチだけあってその乗り味は若々しく、ひたすらにスポーティー。「乗りこなせますか?」というバイエルンからの挑戦状を受け取るかどうかはあなた次第である。
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FWDになって2代目

コンパクトクラスで唯一の後輪駆動だったBMW 1シリーズが3世代目で前輪駆動に転換してから5年、あのときは「駆けぬける歓(よろこ)び」を掲げるBMWとして認められるのか否か、なんて議論が沸いたように記憶しているが(もちろんクルマ好きだけの間で)、今回はもうそんな話は聞こえてこない。コンパクトハッチではFWDが当たり前ということですね。

新型1シリーズは従来の「F40」型から新たな開発コード「F70」に変わったものの、新型「MINIクーパー」(エンジン仕様)のプラットフォームが改良型であることから、1シリーズも同様だと推察できる。その証拠に2670mmのホイールベースは従来型と同一である。1800mmの全幅も変更なしだが、シュッととがったノーズのせいか全長および全高はわずかながら拡大している。

本国ではガソリン4種類、ディーゼル2種類のパワートレインが用意されているようだが、今のところ日本向けは1.5リッター3気筒ターボ+48Vマイルドハイブリッドの「120」「120 Mスポーツ」と2リッター4気筒ターボのM135 xDrive(4WD)のガソリンエンジン2種に限られる。今回の試乗車はシリーズ最強の後者である。そういえばこの新型からもともと“インジェクション”を表していた「i」の文字は省略されている。

今回の試乗車はMパフォーマンスモデルの「BMW M135 xDrive」。車両本体価格は698万円。
今回の試乗車はMパフォーマンスモデルの「BMW M135 xDrive」。車両本体価格は698万円。拡大
FFプラットフォームは先代モデルから継承。ホイールベースは同寸だが、全長は「M135」の場合で35mm延びている。
FFプラットフォームは先代モデルから継承。ホイールベースは同寸だが、全長は「M135」の場合で35mm延びている。拡大
ロワ部分に大きな開口部を設けたフロントマスクが高性能ぶりをアピール。ナンバープレートの両サイドにポツンとソナーだけが残されている。
ロワ部分に大きな開口部を設けたフロントマスクが高性能ぶりをアピール。ナンバープレートの両サイドにポツンとソナーだけが残されている。拡大
タイヤ&ホイールは18インチが標準で、この試乗車はオプションの19インチを装着。同じ金額で2種類から選べる。
タイヤ&ホイールは18インチが標準で、この試乗車はオプションの19インチを装着。同じ金額で2種類から選べる。拡大
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8段ATから7段DCTに

フロントに横置きされるのはこれまで同様の2リッター4気筒ターボエンジンだが、スペックは最高出力300PS/5750rpmと最大トルク400N・m/2000-4500rpmというもので、従来型「M135i xDrive」の306PSと450N・mに比べ、若干ながら出力/トルクともに引き下げられているのはトランスミッションが変更されていることが理由だろうか。従来型のトルコン式8段ATから新型MINIクーパー同様の7段DCTに換装されていることは見逃せない変更点である。

ある程度以上の速度での走行中はまったく気にならないが、歩むような渋滞の中やエンジン再始動からの発進の際などに、コツンとクラッチがエンゲージするショックが感じられるのが惜しい。MINIとの共用の都合なのかもしれないが、従来型のパワートレインの出来栄えが良かっただけにちょっと残念だ。

エンジンそのものは文句なしである。2代目までの「135i」と「140i」は6気筒ターボを縦置きにした後輪駆動であり、スムーズこの上ないストレート6を積んだ当時のモデルを懐かしむ気持ちは私にも当然あるが、今や2リッター4気筒でも実用域でのたくましいトルク、トップエンドまで爽快に伸びる回転フィーリングなど、直接乗り比べなければ、ほとんど遜色ないのではないかと思うぐらいだ。

フロントに横置きされる2リッター4気筒ターボエンジンは最高出力300PS/最大トルク400N・mを発生する。
フロントに横置きされる2リッター4気筒ターボエンジンは最高出力300PS/最大トルク400N・mを発生する。拡大
カーブドディスプレイを中心にレイアウトしたインテリアは最新のBMW車に共通のテイスト。ステアリングのセンターマークなどにMらしさが漂っている。
カーブドディスプレイを中心にレイアウトしたインテリアは最新のBMW車に共通のテイスト。ステアリングのセンターマークなどにMらしさが漂っている。拡大
Mスポーツシートの表皮はアルカンターラとヴェガンザ(ビーガンレザー)の組み合わせ。よりエモーショナルな「コーラルレッド」のカラーリングも追加費用なしで選べる。
Mスポーツシートの表皮はアルカンターラとヴェガンザ(ビーガンレザー)の組み合わせ。よりエモーショナルな「コーラルレッド」のカラーリングも追加費用なしで選べる。拡大
モデルチェンジに際して後席空間の拡大はうたわれていないが、前席の背もたれの裏側をへこませたことで膝まわりが広くなった。
モデルチェンジに際して後席空間の拡大はうたわれていないが、前席の背もたれの裏側をへこませたことで膝まわりが広くなった。拡大

煮詰められた実用性

インストゥルメントパネルは最新のBMW各車同様に一新されている。10.25インチのディスプレイを2枚並べたカーブドディスプレイを中心に、センターコンソールまわりも小さなシフトセレクターと最小限の物理スイッチに置き換えられ、選択モードや作動状態に応じて赤く光るインタラクションバー、さらにはアルミトリムなどでクールに仕立てられている。

物理スイッチが整理されたぶん(それでもボリューム/ミュート、ハザードスイッチなどは残されている)、センターのタッチディスプレイで操作する機能が増えたが、ドライバー側に使用頻度の高いアイコンをまとめたホーム画面となっており、ほぼイライラすることはない。行き過ぎたタッチスイッチ化を見直す昨今のトレンドに沿った設計といえるだろう。ただし、サイドウィンドウに移り込む赤いアンビエントライトは場合によってはちょっと目障りでもある。

専用のMスポーツシートはアルカンターラとヴェガンザ(いわゆるビーガンレザー)のコンビトリムと今風で、さらにステアリングホイールやシートベルトにまでMのアクセントが入った専用品である。それほどスポーツテイストを強調するいっぽうで、リアシートは十分な広さを持ち、ラゲッジスペースもスクエアな形状でいかにも使いやすそう。そのうえいわゆるコンビニフックも備わるといった具合に、Cセグメントハッチバックとしての使い勝手には一段と磨きがかかっているようだ。もちろんインフォテインメントシステム(最新のOS9搭載)や先進運転支援システム(渋滞時のハンズオフ機能も装備)などにも抜かりはない。

0-100km/h加速のタイムは先代モデルに0.1秒譲る4.9秒と公表されている(欧州仕様の値)。
0-100km/h加速のタイムは先代モデルに0.1秒譲る4.9秒と公表されている(欧州仕様の値)。拡大
センタースクリーンの裏側には赤青白のMカラーの3本ステッチがあしらわれる。
センタースクリーンの裏側には赤青白のMカラーの3本ステッチがあしらわれる。拡大
ダッシュボード両端のシルバーのエアアウトレットにはアンビエントライトが仕込まれている。夜間の走行時にこれがサイドウィンドウに映り込み、ドアミラーが見えづらいのがちょっと気になった。
ダッシュボード両端のシルバーのエアアウトレットにはアンビエントライトが仕込まれている。夜間の走行時にこれがサイドウィンドウに映り込み、ドアミラーが見えづらいのがちょっと気になった。拡大
センターコンソールはすっきりフラットなデザインに。ただし、デフロスター/デフォッガーやハザード、パーキングカメラ、ボリューム/ミュートなどの操作に緊急性を要するものはきちんとスイッチで残されている。
センターコンソールはすっきりフラットなデザインに。ただし、デフロスター/デフォッガーやハザード、パーキングカメラ、ボリューム/ミュートなどの操作に緊急性を要するものはきちんとスイッチで残されている。拡大

ちょっと硬派すぎ?

コンパクトハッチとしても使い勝手がよさそうなM135ではあるが……、と歯切れが悪くなるのはひとことで言って“跳ねる”足まわりのせいだ。従来型も跳ね気味で落ち着きには欠けるきらいはあったが、新型はそれにも増して硬派というか、やんちゃで生きが良すぎる。ちょっとした不整路でも、一つひとつ律義に反応し、しかも上下動がビシッと収まり切らず、いつまでも残る。Mのアルファベットを頂く高性能モデルとはいえ、これはちょっと落ち着きがなさすぎる。

M135にはアダプティブMサスペンション(ただし電子制御ではなくメカニカルらしい)が標準装着されているはずなのだが、モード選択にかかわらず、跳ねる傾向は変わらない。もう少し走行距離が伸びればスムーズに動くようになるのかもしれないが、普段使いを考えている人は必ず確かめてほしい。

おかげで、FWDどころか4WDの匂いも感じさせない切れ味鋭いハンドリングを持つにもかかわらず、よほど平滑な路面でない限り、思い切って踏み込むのをためらう場面が多かった。箱根駅伝を走るわけではないランナーにとって、高性能すぎる厚底シューズはかえって脚や膝に負担をかけるという話があるように、時々ワインディングロードを目指す程度のドライバーにとっては疲労感のほうが大きいと思われる。もちろん、心身ともにやる気満々の人には大きなお世話かもしれない。硬く揺すられるハードなサスペンションこそ望むところ、という硬派ドライバーの気持ちも分からないではないが、正直今の私ならすがすがしさが際立つ120に軍配を上げる。

(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=BMWジャパン)

フロント:ストラット、リア:マルチリンクの足まわりには「アダプティブMサスペンション」を装備。機械式のため任意に減衰力を変えることはできないが、路面状況等に応じて自動で最適な減衰力を選んでくれる。ただし、乗り味は絶対的に硬めだ。
フロント:ストラット、リア:マルチリンクの足まわりには「アダプティブMサスペンション」を装備。機械式のため任意に減衰力を変えることはできないが、路面状況等に応じて自動で最適な減衰力を選んでくれる。ただし、乗り味は絶対的に硬めだ。拡大
M系モデル専用のシフトパドルには操舵中でも左右が識別可能なラバーが裏側に貼られる。左パドルはブースト機能(10秒間)のトリガーも兼ねている。
M系モデル専用のシフトパドルには操舵中でも左右が識別可能なラバーが裏側に貼られる。左パドルはブースト機能(10秒間)のトリガーも兼ねている。拡大
荷室の容量は380~1200リッター。側面にはコンビニフックが備わっている。
荷室の容量は380~1200リッター。側面にはコンビニフックが備わっている。拡大
フロア下にはトノカバーがすっぽり。いかにもありそうな機能だが、実際にできるクルマはめったにない。フロアボードも写真の位置でカチッと固定できる。
フロア下にはトノカバーがすっぽり。いかにもありそうな機能だが、実際にできるクルマはめったにない。フロアボードも写真の位置でカチッと固定できる。拡大

テスト車のデータ

BMW M135 xDrive

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4370×1800×1450mm
ホイールベース:2670mm
車重:1570kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/5750rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96Y XL/(後)235/40R19 96Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6)
燃費:12.5km/リッター(WLTCモード)
価格:698万円/テスト車=720万5000円
オプション装備:ボディーカラー<アルピンホワイト>(0円)/Mアルカンターラ×ヴェガンザコンビネーション<ブラック、ブルーステッチ>(0円)/19インチMライトアロイホイール<Yスポーク、スタイリング976Mバイカラー>(10万1000円)/Mコンパウンドブレーキ<グレーハイグロスキャリパー>(12万4000円)

テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:1384km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:366.8km
使用燃料:35.5リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:10.3km/リッター(満タン法)/10.6km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW M135 xDrive
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