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第303回:駆けぬける庭石

2025.02.10 カーマニア人間国宝への道 清水 草一
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デザインが岩石っぽい

「今度、新型『BMW X3』にお乗りになりますか」

サクライ君からのメールに、私は「乗る乗る~!」と返信した。

個人的にはたぶんデカすぎるし、値段も高すぎるんだろうけど、カーマニアとして乗らないテはない。なにしろ超メジャーブランドであるBMWの中心的商品なのだから。

新型X3について、私はほとんどなんの予習もしなかった。それは予断を持って接しないためである。ただ、webCGほった君から、「岩石みたいなデザインです」とだけは聞いていた。写真を見ても特に岩石みたいには感じないが、彼が岩石というのなら岩石なのかもしれない(←予断)。

夜8時、わが家にやってきた実物は、そのボディーカラーを含め確かに巨大な岩石のようだった。

オレ:うわ、デカいね!
サクライ:はい。デカいです。
オレ:ものすごくデカくなってない?
サクライ:完全にひと昔前の「X5」です。

後でサイズを確認したら、先代に比べてそれほどデカくはなっていなかった。全長で35mm増、全幅で30mm増。全高に至っては15mm低くなっている。信じられない。

つまり、新型X3がものすごくデカく感じたのは、デザインが岩石っぽいせいらしい。

「岩石っぽいってどういう意味?」

そのように思われるだろう。それはつまり、パネル面が非常にシンプルで、しかもスピード感を与えようとか、躍動的に躍らせようとか、そういう企(たくら)みがほとんど感じられないってことである。特にエンジンフードの一枚岩感は強烈。ゆえに自然界に存在する岩石っぽい。こんな岩石ないとは思うが。

今回は夜の首都高に新型「BMW X3 20d xDrive Mスポーツ」で出撃した。最新のX3は2024年11月に国内販売が開始された話題のモデルで、2003年にデビューした初代から数えて、第4世代にあたる。
今回は夜の首都高に新型「BMW X3 20d xDrive Mスポーツ」で出撃した。最新のX3は2024年11月に国内販売が開始された話題のモデルで、2003年にデビューした初代から数えて、第4世代にあたる。拡大
新型「X3」についてはほとんどなんの予習もしなかったが、webCGほった君からは「岩石みたいなデザインです」とだけ聞いており、ナマで見るのが楽しみだった。果たして実物は、確かに巨大な庭石のようだった。
新型「X3」についてはほとんどなんの予習もしなかったが、webCGほった君からは「岩石みたいなデザインです」とだけ聞いており、ナマで見るのが楽しみだった。果たして実物は、確かに巨大な庭石のようだった。拡大
今回試乗した「X3 20d xDrive Mスポーツ」の車両本体価格は858万円。「フローズンピュアグレー」と呼ばれる32万円のオプションカラーをまとっていた。
今回試乗した「X3 20d xDrive Mスポーツ」の車両本体価格は858万円。「フローズンピュアグレー」と呼ばれる32万円のオプションカラーをまとっていた。拡大
コックピットにはメーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させ、運転席側に傾けることで視認性を高めたタッチ式の「BMWカーブドディスプレイ」が採用されている。
コックピットにはメーターパネルとコントロールディスプレイを一体化させ、運転席側に傾けることで視認性を高めたタッチ式の「BMWカーブドディスプレイ」が採用されている。拡大
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「X2」とは格が違う

以前私は「X2」を見て「ガンダムっぽくて猛烈にカッコいい!」と感じ、「よし、次はこれを買おう!」と決意したが、やっぱりデザインが子供っぽすぎると思い直した。X2に比べると、このX3は余計な装飾がなくとてもシンプル。こっちのほうが自動車デザインのあるべき姿に近いはずだ。

オレ:この岩石デザイン、悪くないね! それに、キドニーグリルが完全に一周ずつ光ってるじゃん!
サクライ:そうなんです。これ、清水さんお好きですよね?
オレ:好き好き~!

X2のキドニーグリルは中央に位置する内側の部分が光らないので、大きな一つのグリルみたいに見えたが、X3はしっかり光の輪が2個見える。これなら夜間も「BMWさまのお通りだ!」とオラオラすることができて大変良い。

走りも素晴らしかった。

オレ:う~ん、この走り……。X2とは格が違うね。
サクライ:そうなんです。
オレ:これってやっぱり、エンジン横置きのFFベースと、エンジン縦置きFRベースの差?
サクライ:かもしれません。
オレ:オレさ、10年くらい前に「2シリーズ アクティブツアラー」の走りに感動して以来、「BMWはFFに限る!」って思ってたんだけど、いつのまにかFRが逆転したの?
サクライ:最近じゃないですか。つーかFFもいいですけど。

実はサクライ君は、現行2シリーズ アクティブツアラーのオーナーなのだった。うむう。

ボディーサイズは全長×全幅×全高=4755×1920×1660mmで、先代に対しては35mm長く、30mm幅広くなった。ホイールベースは2865mmでこちらは先代と変わらない。
ボディーサイズは全長×全幅×全高=4755×1920×1660mmで、先代に対しては35mm長く、30mm幅広くなった。ホイールベースは2865mmでこちらは先代と変わらない。拡大
「X2」のキドニーグリルは中央部分が光らないので、大きな一つのグリルみたいに見えたが、最新の「X3」はしっかり光の輪が2個見える。これなら夜間もオラオラできる。
「X2」のキドニーグリルは中央部分が光らないので、大きな一つのグリルみたいに見えたが、最新の「X3」はしっかり光の輪が2個見える。これなら夜間もオラオラできる。拡大
最高出力197PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ディーゼルターボには、48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされる。トランスミッションは8段AT。
最高出力197PS、最大トルク400N・mの2リッター直4ディーゼルターボには、48Vマイルドハイブリッドシステムが組み合わされる。トランスミッションは8段AT。拡大
リアのトレッドは先代比で45mmも広げられており、コーナリング時のハンドリングを向上させる。乗り心地はすばらしく、超フラットライドに首都高を駆け抜けた。
リアのトレッドは先代比で45mmも広げられており、コーナリング時のハンドリングを向上させる。乗り心地はすばらしく、超フラットライドに首都高を駆け抜けた。拡大

凝縮感の時代の次は膨張感の時代?

新型X3の2リッター直4ディーゼルエンジンは、静かでトルクフルで、実用車のパワーユニットとして無敵。乗り心地も素晴らしく、超フラットライドに首都高を駆け抜けた。それはまさしく駆けぬける歓(よろこ)びだった。

インテリアもシンプルに岩石っぽくて実にイイ。アンビエントライトもぶっとく光ってよく目立つ。これでオーディオと同調して明滅してくれれば言うことナス!

辰巳PAには、アウディの往年の名車・初代「TT」が止まっていた。私はついうれしくなって、その近くに新型X3を止めた。

2台を眺めると、TTは実に小さく、X3は実にデカい。TTが凝縮感満点の彫刻だとすれば、X3は膨張感満点の庭石だ。これほどデカく感じるデザインはこれまでなかったかもしれない。これはこれで新鮮だ。

オレ:サクライ君、BMWデザインは吹っ切れたね!
サクライ:でしょうか。
オレ:このところいろいろ寄り道したけど、このテイストで新型「3シリーズ」が出たらカッコいいかも!
サクライ:「5シリーズ」よりデカく見えるかもしれませんね。

いかにSUVが全盛でも、BMWの最量販車種は、相変わらず3シリーズ。その次期型は、駆けぬける庭石になるかもしれない。んでもって5シリーズや「7シリーズ」を上回る存在感を放つかもしれない! もう初代TTみたいな凝縮感の時代は終わり、膨張感の時代がやってくるのかもしれない。バブルへGO!

(文=清水草一/写真=清水草一、webCG/編集=櫻井健一/車両協力=BMWジャパン)

新型「X3」の2リッター直4ディーゼルエンジンは、静かでトルクフル。実用車のパワーユニットとして無敵だと思えた。その走りは「X2」とは格が違うものだった。
新型「X3」の2リッター直4ディーゼルエンジンは、静かでトルクフル。実用車のパワーユニットとして無敵だと思えた。その走りは「X2」とは格が違うものだった。拡大
アンビエントライトはぶっとく光ってよく目立つ。これでメルセデスと同じようにオーディオと同調して明滅してくれれば言うことナシなのだが……。今回は少しでも派手に見えるように、運転環境を切り替えられるマイモードで「DIGITAL ART」(写真)を選択してみた。
アンビエントライトはぶっとく光ってよく目立つ。これでメルセデスと同じようにオーディオと同調して明滅してくれれば言うことナシなのだが……。今回は少しでも派手に見えるように、運転環境を切り替えられるマイモードで「DIGITAL ART」(写真)を選択してみた。拡大
首都高・辰巳PAには、アウディの往年の名車・初代「TT」が止まっていた。TTが凝縮感満点の彫刻だとすれば、新型「X3」は膨張感満点の庭石だ。
首都高・辰巳PAには、アウディの往年の名車・初代「TT」が止まっていた。TTが凝縮感満点の彫刻だとすれば、新型「X3」は膨張感満点の庭石だ。拡大
新型「X3」は、デザインだけではなく走りも素晴らしかった。これに続き次期「3シリーズ」は、存在感たっぷりの駆けぬける庭石になるかもしれない。期待が高まる。
新型「X3」は、デザインだけではなく走りも素晴らしかった。これに続き次期「3シリーズ」は、存在感たっぷりの駆けぬける庭石になるかもしれない。期待が高まる。拡大
清水 草一

清水 草一

お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。

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