レクサスの「RC」と「RC F」に“ファイナルエディション”登場 レクサスのスポーツクーペの未来は?
2025.02.13 デイリーコラム次期型「レクサスRC」のゆくえは?
既報(参照)のとおり2025年1月16日、レクサスの2ドアクーペ「RC」および「RC F」に“ファイナルエディション”が登場した。こちらは文字どおりのファイナル=最後のモデルであり、現行型のRCおよびRC Fは2025年11月をもって生産終了予定であることがアナウンスされている。今後は“ファイナルエディション”のみの展開で、そのうちのRC F“ファイナルエディション”は200台の台数限定での販売となる。
それ自体については是非もなしだが、問題は、次期型レクサスRC/RC Fはどのようなものになるのか──というか、そもそも次期型RC/RC Fは本当に登場するのか? ということだ。
当然ながらトヨタおよびレクサスはそこに関して、現時点では何ら正式なアナウンスはしていない。だが世間のうわさレベルでは、次期型レクサスRC/RC Fは以下の2パターンのいずれかになるだろうとささやかれている。
GT3のロードゴーイングバージョンに?
パターン1:「GR GT3」的なスーパースポーツ
TOYOTA GAZOO Racingは、東京オートサロン2022において「GR GT3コンセプト」を発表した。これは、カスタマーモータースポーツ(自動車会社が製造・販売したレースやラリー用車両で、個人や企業ユーザーが自主的に行うモータースポーツ活動)の最高峰であるGT3に参戦中のカスタマーに乗ってもらうことを想定したコンセプトカーだ。
GR GT3コンセプトについてTOYOTA GAZOO Racingからは全長×全幅×全高=4590×2040×1140mm、 ホイールベース=2725mmというディメンション以外は発表されていないが、そのロングノーズ&ショートデッキのフォルムは「メルセデスAMG GT」あるいはマツダの「RX-VISION GT3コンセプト」に近い。つまりはスーパースポーツのそれだ。
そして次期型レクサスRCおよびRC Fは、GT3規定のレーシングカーであるGR GT3のロードゴーイングバージョンとして登場し、スーパースポーツにふさわしいパワーユニット(V8ツインターボ+モーターなど)を搭載するだろう──との見立てをしている者は多い。
400PS以上の2リッター直4ターボを搭載?
パターン2:新開発の2リッター直4ターボを搭載する正統派FRスポーツ
トヨタは2024年5月に行われた「マルチパスウェイ ワークショップ」にて「電動化時代に最適なエンジン」として、1.5リッター直4自然吸気およびターボエンジンと、2リッター直4ターボエンジンを発表した。次期型RC/RC Fには「このうちの2リッター直4ターボが搭載される」との情報(うわさ?)もある。
高効率かつパワフルで、なおかつハイブリッド対応でもあるこの2リッター直4ターボは、電動化なしでも400PS以上の最高出力をマークするユニット。次期型RC/RC Fの最高出力が何PSに設定されるかは未知数だが、いずれにせよ次期モデルにはこの2リッター直4ターボが搭載されることになるだろう──と考えている者も多い。
FRスポーツクーペからの撤退はない?
次期型レクサスRCおよびRC Fが、メルセデスAMG GTやアストンマーティンの「ヴァンテージ」と競合するスーパースポーツになるのか、それとも新開発の2リッター直4ターボを搭載する正統派FRスポーツクーペになるのかは、当のトヨタ以外は神のみぞ知ること。
しかし同時に、「次期型RC/RC Fは発売されない」という可能性もある。つまり2014年に始まったレクサスRCの歴史は2025年11月をもって終了となり、以降のレクサスは「主には多種多様なプレミアムSUVとプレミアムミニバンをラインナップし、ニーズに応じて少量のプレミアムサルーンと超プレミアムスポーツもつくるブランド」になるわけだ。
発売当初は1カ月で月販目標の約21倍(!)となる1700台を受注したが、フルモデルチェンジを行えなかったRC/RC Fは今や「売れるクルマ」ではなくなり、月販台数は数十台レベルにとどまっている。これは抜本的な改良(フルモデルチェンジ)が行われなかったせいでもあるが、同時に「クルマとしてのジャンルの問題」も大きい。どんなに商品力が高かろうとも今の時代、FRスポーツクーペはジャンル自体が死に体に近いため、そう簡単に台数がさばけるものでもない。それゆえトヨタ/レクサスは現行型のRC/RC Fを最後に、このジャンルからの撤退を選択する可能性はゼロではない。
とはいえ個人的には「それはないだろう」と思っている。なぜならば、現在のトヨタおよびレクサスは、良くも悪くも“カーガイ”である豊田章男会長の異常なまでの(?)クルマ愛によって成り立っている部分があるからだ。
豊田氏の度を越えたクルマ愛と、社内に対するその影響力が大幅に減じでもしない限り、どういう車名のどういうモデルになるかはわからないが、「何らかの次期型FRスポーツ」は来年か再来年あたりに登場するだろう。そしてその企業姿勢はきわめて間接的かつ軽微にではあるだろうが、コンパクトカーやSUVのクルマづくりやセールスにも、良き影響を与えることになるのだ。
(文=玉川ニコ/写真=トヨタ自動車/編集=櫻井健一)
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玉川 ニコ
自動車ライター。外資系消費財メーカー日本法人本社勤務を経て、自動車出版業界に転身。輸入中古車専門誌複数の編集長を務めたのち、フリーランスの編集者/執筆者として2006年に独立。愛車は「スバル・レヴォーグSTI Sport R EX Black Interior Selection」。
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