ベントレー・コンチネンタルGTスピード ファーストエディション
天上界の乗り心地 2025.05.03 試乗記 ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」の新型が日本に上陸。内外装は従来型のイメージを踏襲した小変更のようだが、その中身は最新のプラグインハイブリッドモデルに生まれ変わっている。高性能バージョン「スピード」の仕上がりをリポートする。不易と流行
操作類の配置が不変なのでいきなり新型に乗り換えてもまごつかない、と評されたメルセデス・ベンツも今や昔の話、それにふさわしいのはもはやベントレーぐらいだ。相変わらずのクラシックホテル感にすっかり落ち着くが、それでもやはりメーターグラフィックなどは新しくなっているし、スムーズレザーなのにしっとりと手のひらに吸いつくようなステアリングホイールの手触りが尋常ではない。これはどのような素材なのだろうか。そういえばふんわり柔らかなシート表皮もこれまでに触ったことがないものだ。
スペックシートには「ピラーボックスレッド」と「ベルーガ」のコンビ内装としか記載がない。いちいちカッコいいネーミングだがそれは色のことだけだろう。ピラーボックスとは円柱型の赤い郵便ポストのこと、となればベルーガは最高級キャビアからとった濃いグレーということになる。ハイグロスカーボンパネルはちょっと好みではないが、ラグジュアリーやゴージャスを超えて「ウェルネス」と掲げるベントレーならではの、実にくつろげる空間である。富裕層の第一の関心事は美と健康なのである。
とはいえ新型コンチネンタルGTには従来とひとつ決定的に違う部分もある。コンチネンタルGTの最高性能版たるスピードなのに、センターコンソールにEVモードのスイッチが設けられていることだ。新たな旗艦用パワートレインは6リッターW12ツインターボではなく、4リッターV8ツインターボ+モーターのプラグインハイブリッドに生まれ変わったのである。
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名づけて「ウルトラパフォーマンスハイブリッド」
2024年6月に発表されたコンチネンタルGTの第4世代は、まず最高性能版のスピードからお披露目された。新型はシュッと横に伸びたまつ毛のようなデイタイムライトを持つ丸目2灯式が特徴的だ。それ以外は細部の手直しだけに見えるが、コンポーネントの7割近くを一新したというように中身は大きく異なる。2024年についに生産終了したW12の代わりになるのが「ウルトラパフォーマンスハイブリッド」と称するプラグインハイブリッドシステムである。ちなみに先日発表された標準型のコンチネンタルGTや「フライングスパー」に搭載されるシステムは「ハイパフォーマンスハイブリッド」という。
どちらも4リッターV8ツインターボにモーターを加えたプラグインハイブリッドだが、スピード用はエンジン単体で最高出力600PS/6000rpmと最大トルク800N・m/2000-4500rpmを発生、190PSと450N・mを生み出すモーターを合わせたシステムトータルの最高出力は782PS、最大トルクは何と1000N・mという。なるほどウルトラである。ちなみにこれらの数値は2024年に発売された新型「ポルシェ・パナメーラ ターボS Eハイブリッド」と同一である。
6リッターW12ツインターボを積んだ従来型のスピードは659PSと900N・mだったから、もちろん史上最強である。8段DCTと電子制御AWDシステムを生かした0-100km/h加速は3.2秒、最高速は335km/hという(従来型W12スピードは3.6秒と335km/h)。いっぽうで電動走行距離は81km(駆動用バッテリー容量は25.9kWhでこちらもパナメーラと同じ)と発表されている。
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滑空しているようだ
床まで踏み込まない限り、基本の「B(ベントレー)」モードではほとんど電動走行を維持するスピードはもちろん静粛そのものだ。だが、それよりも驚いたのは滑らかに滑空するようなフラットでしなやかな乗り心地である。3チャンバー式エアサスペンションを備える従来型コンチネンタルGTも素晴らしかったが、全長4.9mにして車重2.4t余りのヘビー級にもかかわらず、新型は本当に滑るように走る。小田原厚木道路の継ぎ目をこれほど軽やかに、何もなかったように越えていくクルマはちょっと思い当たらないほどだ。
新型スピードのシャシーはあらゆる電子制御システムで完全武装されている。新しい2チャンバー式エアサスペンションと伸び縮み個別制御のデュアルバルブダンパー、リアアクスルステアリング、ベントレー・ダイナミックライド(48Vアクティブスタビライザー)、電子制御LSD等々である。ちょっと不思議なのは、新型パナメーラのプラグインハイブリッド車に採用されている400V駆動のアクティブサスペンション「ポルシェ・アクティブライド」と同様のものが搭載されていないことだ。資料を読む限り、プラグインハイブリッド用400Vとアクティブスタビライザー用48V、それに電装用12Vの3系統が張り巡らされていることになるが、それはずいぶんと複雑である。残念ながら詳細は確認しきれなかったが、いずれにせよシステムの完成度は高く、気持ちよさは源泉かけ流し弱アルカリ性温泉と同じぐらいである。
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整うってこういうこと?
ふわりというかヌルリというか、融通無碍(むげ)のやんごとなき乗り心地がまことにウェルビーイングなコンチネンタルGTスピードだが、モードをスポーツに切り替えてむちを入れれば、たくましい腕っぷしがあらわになる。全開加速はちょっと気持ち悪くなるほどすさまじく、ハンドリングも巨大なずうたいが信じられないほどリニアで癖がない。車重を意識しないと言えばうそになるが、試乗車にはオプションのカーボンセラミックブレーキが装着されていたので不安なし(ただしこれだけで約230万円)。まったくラフではないけれど、ベントレーは骨太でなければ、という硬派の紳士でも物足りなさは感じないはずだ。
そういえばこのクルマは例によって「ファーストエディションスペシフィケーション」を装備しており、これだけでおよそ530万円のオプションである。詳しい装備内容はこちらも定かではない(外誌によればエンブレム類に加えて、アニメーションウエルカムランプ、コンフォートシート、naimオーディオシステム、ヘッドアップディスプレイ、ナイトビジョンなどらしい)。庶民には縁遠いことだけは間違いないが、トリムや仕様を選ぶ悩ましさと楽しさはどれほどのものなのだろうかと妄想してしまう。乗れば乗るほど“整っていく”恐ろしくぜいたくでウルトラ高性能なGTクーペである。
(文=高平高輝/写真=向後一宏/編集=藤沢 勝/車両協力=ベントレーモーターズジャパン)
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テスト車のデータ
ベントレー・コンチネンタルGTスピード ファーストエディション
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4895×1966×1397mm
ホイールベース:2851mm
車重:2500kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:8段AT
エンジン最高出力:600PS(441kW)/6000rpm
エンジン最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2000-4500rpm
モーター最高出力:190PS(140kW)
モーター最大トルク:450N・m(45.9kgf・m)
システム最高出力:782PS(575kW)
システム最大トルク:1000N・m(102.0kgf・m)
タイヤ:(前)275/35ZR22 104Y XL/(後)315/30ZR22 107Y XL(ピレリPゼロ)
燃費:10.3リッター/100km(約9.7km/リッター、WLTPモード)
価格:3930万3000円/テスト車=5070万3780円
オプション装備:ファーストエディションスペシフィケーション(530万3860円)/コンチネンタルブラックラインスペシフィケーション(64万1170円)/エクステンデッドレンジ<ソリッド&メタリック>(117万1980円)/コントラストステッチング(53万2170円)/ダーククロームインテリアスペシフィケーション(36万1590円)/セルフレベリングホイールバッジbyマリナー(9万6600円)/カーボンセラミックブレーキwithレッドペインテッドキャリパー(230万0210円)/22インチ10スウェプトホイール<ブラックペイント>(54万1750円)/マリナーカラースペシフィケーション(45万1450円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:1060km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:308.3km
使用燃料:39.7リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:7.8km/リッター(満タン法)/8.1km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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