メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ カブリオレ(4WD/9AT)/AMG GT43クーペ(FR/9AT)/AMG GT63 4MATIC+ クーペ(4WD/9AT)/AMG GT63 S Eパフォーマンス クーペ(4WD/9AT)
パフォーマンスにほれ直す 2025.06.04 試乗記 2リッター直4の「AMG GT43」に3リッター直6の「CLE53」、そして4リッターV8の「AMG GT63」──。富士スピードウェイを舞台に行われたメルセデスAMGの走行体験イベントで、800PSオーバーのモンスターマシンを筆頭とする最新AMG車のハンドリングと全開パフォーマンスを味わった。AMGを思う存分走らせたい
先日、都内のとあるメルセデス・ベンツのショールームをのぞいたときのこと。あとから入ってきた年配の男性がショールームの女性スタッフにこう尋ねる。「オレ、むかし“アーマーゲー”に乗ってたんだけど、いまはアーマーゲーって言わないのかい?」。すると女性スタッフは「そうですね、以前から正しい名前は“エーエムジー”です」と答えた。
このやりとりを耳にして、私は笑いをこらえるのが精いっぱいだったが、私のまわりでも、何の疑いもなくいまだに“アーマーゲー”と呼ぶ人がいることを考えると、その浸透度の高さには、妙に感心してしまう。
呼び方はさておき、それほどまでに高い知名度を誇るAMG。いまさら説明する必要もないと思うが、メルセデス・ベンツのサブブランドとして、スポーツモデルを世に送り出しているのがメルセデスAMGだ。その圧倒的なパフォーマンスを、安全かつ合法的に試すには、サーキットを走るしかない。とはいえ、ほとんどの人にとって、サーキットはなんとなくハードルが高いし、いざクルマを走らせようとすると、走行の前後でクルマの整備が必要で、タイヤやブレーキの摩耗も心配だ。でも、メルセデスAMGを思う存分走らせたい……。
そんな思いに応えてくれるのが、今回参加した「AMGエクスペリエンス・オン・トラック」。日本一長い1475mのストレートを誇る富士スピードウェイを舞台に、用意されたクルマでさまざまなシチュエーションを楽しめるというのだから、まさに夢のようなイベントである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
AMGドライビング・アカデミーから名称を変更
富士スピードウェイではこれまで、「高性能車両の真のポテンシャルをサーキットで体感し、その力を自在に操る喜びを伝えたい」という狙いで「AMGドライビング・アカデミー」が開催されてきた。そして今回からは「AMGエクスペリエンス・オン・トラック」にバージョンアップ。従来のアカデミーが運転技能を高めるのが目的だったのに対して、新しいエクスペリエンスは運転を楽しみながら、メルセデスAMGの技術を体験してもらうことに主眼を置いているという。
取材の前日にはカスタマー向けの同プログラムが行われたそうで、われわれメディア向けにはカスタマー向けのメニューを多少アレンジした内容が用意された。もちろんそれでも存分にメルセデスAMGのいまが体験できそうである。
さて、当日、富士スピードウェイのパドックに着くと、指定されたピット前には、これでもかという数の「メルセデスAMG GTクーペ」がわれわれを迎えてくれる。「他のモデルも合わせたら、いったい何億円になるんだろう?」と心配する自分が小さく思える瞬間だった。
われわれに用意されたプログラムは3つで、マルチパーパスドライビングコースを使ったドリフト体験、ショートコースでの緊急回避、そして、レーシングコースでの試乗。果たしてどんなことが楽しめるのか、考えるだけでもワクワクする。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
パワーを解き放つには腕が必要
まずはマルチパーパスドライビングコースに移動し、ドリフト走行を体験する。パイロンでカーブがつくられたコースには水がまかれ、ここを「CLE53 4MATIC+ クーペ」で走るのだが、その際に横滑り防止装着「ESP」の設定を「Sport」「Off」に切り替えたり、さらに「Drift」モードを使ったりしてその挙動の違いを体験した。
ESP Sportでコーナリング中にアクセルペダルを踏み込むとリアが膨らむものの、スピンに陥ることはなかった。ESP Offではリアがさらに大きく振られるが、それでもコースを外れずにすむ。ところが、Driftにすると、あっけなくスピンし、アクセルペダルを踏み続けるとドーナツターンが簡単にできるほどで、カウンターステアをあてながらうまくコースを抜けるのはなかなか難しい。ふだんはESPに守られているため、安定しているが、電子デバイスをオフにし、パワーを解き放つにはそれなりの腕が必要なのだと実感。その後、Driftモードで何度か走行することができたが、徐々にクルマの動きがコントロールできるようになってきたのがうれしかった。
ショートコースでは、障害物回避を想定したダブルレーンチェンジに挑戦。レッスンは「メルセデスAMG GT43クーペ」を使い、スタート地点から全開で加速し、パイロンの位置でフルブレーキング。そのときの速度は90km/hほどで、ステアリングを左に切り、すぐに右に切り直すというものだ。このGT43クーペ、ブレーキが気持ち良いほど利き、さらにABSやESPのおかげで、ダブルレーンチェンジは難なく成功。その後、「E53ハイブリッド4MATIC+」に乗り換えるのだが、GT43クーペに比べて重たい印象は否めないのに、後輪操舵が良い働きをして、むしろGT43クーペよりも小回りが利いたのには正直驚いた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
290km/hにひるむ
ランチのあとには、「メルセデスAMG GT63 4MATIC+ クーペ」と「メルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペ」をレーシングコースで試乗する。前者は585PSの4リッターV8ツインターボによって4輪を駆動するのに対し、後者は4リッターV8ツインターボに電気モーターを追加したプラグインハイブリッドシステムを搭載し、最高出力816PS、最大トルク1420N・mを後輪で受け止めるという超高性能車だ。
こういったクルマをレーシングコースで試乗する場合、たいていはインストラクターが先導するのだが、今回はメディア向けということもあって先導はなく、1モデルにつきストレート2本を2回、計4回の走行が許されるという太っ腹な対応に、メルセデス・ベンツ日本の懐の深さを感じた。とはいえ、GT63 4MATIC+ クーペが2752万円、GT63 S Eパフォーマンス クーペにいたっては3085万円という価格が頭をよぎり、小心者の私はつい運転が慎重になる。
それでも、2台の速さは十二分に体感できた。まずはGT63 4MATIC+ クーペでコースに挑むと、これまで乗ったどのクルマよりもよく曲がり、コーナーからの脱出も、300Rの通過も4MATICのおかげで安定しきっている。そして最終コーナーを立ち上がりアクセル全開にするとあっという間にスピードメーターは200km/h超え! その後もじわじわとスピードを上げ、パナソニック看板の手前で270km/hをマーク。なんて速いんだ!
プラス330万円、プラス231PSのGT63 S Eパフォーマンス クーペはさらに上手で、コーナーからの立ち上がりが鋭い。その際、メーターパネルでESPのランプがチカチカと点滅するのにちょっとビビる。さらにスリリングなのはメインストレートの加速で、200km/hを超えてもスピードはぐんぐん伸びていき、パナソニック看板の手前では、人生初の290km/hという数字が目に飛び込んできた。これにひるんだ私はすぐにアクセルペダルを緩めたが、1コーナーまでのブレーキにはまだまだ余裕があるから、腕に覚えがある人なら300km/hの大台に届くはずだ。
そんな貴重でエキサイティングな体験ができたAMGエクスペリエンス・オン・トラック。オーナーなら、「メルセデスAMGを買ってよかった!」と思うとともに、メルセデスAMGの高性能にほれ直すに違いない。
(文=生方 聡/写真=佐藤靖彦/編集=櫻井健一)
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
テスト車のデータ
メルセデスAMG CLE53 4MATIC+ カブリオレ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4855×1935×1435mm
ホイールベース:2875mm
車重:2090kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ+電動スーパーチャージャー
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:449PS(330kW)/5800-6100rpm
エンジン最大トルク:560N・m(57.1kgf・m)/2200-5000rpm
モーター最高出力:23PS(17kW)/1500-3000rpm
モーター最大トルク:205N・m(20.9kgf・m)/0-750rpm
タイヤ:(前)265/35ZR20 99Y XL/(後)295/30ZR20 101Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:10.5km/リッター(WLTCモード)
価格:1400万円/テスト車=1480万円
オプション装備:AMGダイナミックパッケージ(40万円)/レザーエクスクルーシブパッケージ(40万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG GT43クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1930×1365mm
ホイールベース:2700mm
車重:1810kg
駆動方式:FR
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ+電動スーパーチャージャー
モーター:スイッチトリラクタンスモーター
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:421PS(310kW)/6750rpm
エンジン最大トルク:500N・m(51.0kgf・m)/5000rpm
モーター最高出力:13.6PS(10kW)/2500-5100rpm
モーター最大トルク:58N・m(5.9kgf・m)/50-1300rpm
タイヤ:(前)275/35ZR21 103Y XL/(後)305/30ZR21 104Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツ4 S)
燃費:10.6km/リッター(WLTCモード)
価格:1650万円/テスト車=1926万円
オプション装備:ボディーカラー<MANUFAKTURアルペングレー>(63万5000円)/鍛造21インチAMGアルミホイール<RWD>(43万5000円)/パノラミックルーフパッケージ(33万円)/AMGパフォーマンスパッケージ(17万5000円)/AMGドライビングパッケージ(120万円)/ヘッドアップディスプレイ(16万円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:--km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG GT63 4MATIC+ クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1985×1355mm
ホイールベース:2700mm
車重:1940kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
トランスミッション:9段AT
最高出力:585PS(430kW)/5500-6500rpm
最大トルク:800N・m(81.6kgf・m)/2500-5000rpm
タイヤ:(前)295/30ZR21 102Y XL/(後)HL305/30ZR21 107Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:7.0km/リッター(WLTCモード)
価格:2783万円/テスト車=2805万円
オプション装備:鍛造21インチAMGアルミホイール(4万円)/AMGパフォーマンスパッケージ(18万円)
テスト車の年式:2024年型
テスト開始時の走行距離:7514km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター
メルセデスAMG GT63 S Eパフォーマンス クーペ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4730×1985×1355mm
ホイールベース:2700mm
車重:2170kg
駆動方式:4WD
エンジン:4リッターV8 DOHC 32バルブ ツインターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:9段AT
エンジン最高出力:612PS(450kW)/5750-6500rpm
エンジン最大トルク:850N・m(86.7kgf・m)/2500-4500rpm
モーター最高出力:203.9PS(150kW)/4500-8500rpm
モーター最大トルク:320N・m(32.6kgf・m)/500-4500rpm
タイヤ:(前)295/30ZR21 102Y XL/(後)HL305/30ZR21 107Y XL(ミシュラン・パイロットスポーツS 5)
燃費:8.3km/リッター(WLTCモード)
EV走行換算距離:13km(WLTCモード)
充電電力使用時走行距離:13km(WLTCモード)
交流電力量消費率:385Wh/km(WLTCモード)
価格:3085万円/テスト車=3128万7000円
オプション装備:AMGパフォーマンスパッケージ(17万5000円)/可倒式リアシート(26万2000円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:948km
テスト形態:トラックインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:--km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】 2026.7.28 シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/4AT)/ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.7.27 “ジムニー史上初”となる、5ドアのロングボディーで人気を博す「スズキ・ジムニー ノマド」。快適な後席と広い荷室空間が自慢のファミリーの新顔に、はたして死角はないのか? このクルマの本領であるオフロードも走行し、その実力をつまびらかにした。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.7.25 高速道路から山道へとステージを変えながら、「シビック」の追加モデル「e:HEV RS」に試乗。そのキーテクノロジーは、疑似有段ギア制御システム「ホンダS+シフト」だ。ベースとなったハイブリッド車や、同じS+シフトを搭載する「プレリュード」との違いを確かめた。
-
カワサキZ900RSブラックボールエディション(6MT)/Z900RS SE(6MT)【レビュー】 2026.7.24 カワサキが誇る人気のレトロスポーツ「Z900RS」が大幅に進化。このマシンならではの“凄(すご)み”はそのままに、エンジンの改良と高度な電子制御の採用により、スポーツバイクとしての魅力にいっそう磨きをかけてきた。卓越したその走りを報告しよう。
-
ランボルギーニ・ウルスSEペルフォルマンテ(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.23 2017年のデビュー以来、超ド級の走行性能を持つ“スーパーSUV”として、SUVブームの中を駆け抜けてきた「ランボルギーニ・ウルス」。その進化型である「ウルスSEペルフォルマンテ」の仕上がりを、イタリア南部のテストコースからリポートする。
-
NEW
写真で解説する「メルセデス・ベンツCLA with EQテクノロジー」
2026.7.29画像・写真メルセデス・ベンツの新型電気自動車「CLA with EQテクノロジー」が上陸。2026年7月29日、東京都内で発表会が開催された。次世代技術満載のニューモデルの見どころはどこか、写真とともにお伝えする。 -
NEW
ぶしつけ御免! 人気連載「カーデザイン曼荼羅」公開収録を開催
2026.7.29From Our Staff歯に衣着せぬ物言いでカーデザインを深掘りする人気連載「カーデザイン曼荼羅」。その公開収録&懇親交流会を開催します! テーマはずばり「日本のカーデザインに足りないもの・欠けているもの」。自動車の造形に興味のある方、ぜひふるってご参加ください。 -
NEW
2つの工場が持つ性質の違いは何のため? ダイハツが誇る九州の製造拠点を見学
2026.7.29デイリーコラムダイハツといえば大阪……というイメージが強いが、実は全体の50%、軽自動車では77%を生産しているのは九州の大分(中津)工場だ。この一大拠点における最新の取り組みや、ダイハツが推し進める「メイドイン九州」プロジェクトについて紹介する。 -
NEW
ポルシェ・マカンGTS(4WD)【試乗記】
2026.7.29試乗記ポルシェの擁する電動のハイパフォーマンスSUV「マカン エレクトリック」に、さらに走りを磨いた「GTS」が登場。エンジンを積まない電気自動車でも、ポルシェならでは、GTSシリーズならではの走りは楽しめるものなのか? 雨のなかの試乗を通して確かめた。 -
NEW
第122回:新型「日産キックス」とゆかいな仲間たち(前編) ―すべては計画どおり!? 物議をかもすフロントデザインの正否―
2026.7.29カーデザイン曼荼羅日産が満を持して日本に導入した、コンパクトSUVの新型「キックス」。失敗が許されない量販車種だけにデザインはコンサバかと思いきや、実際にはかなり強烈な“顔”の持ち主だった。物議をかもすその容貌は確信犯の所業か? カーデザインの識者と考えた。 -
写真で解説する軽規格の電気自動車「BYDラッコ」
2026.7.28画像・写真「BYDラッコ」は、100%電動の軽スーパーハイトワゴン。海外の自動車メーカーで初となる日本の軽規格にあわせた専用設計のBEVで、軽自動車では世界初のSDVとしても注目される。このラッコの内外装や発表イベントの様子を、写真で詳しく紹介する。






































































