レクサスLX700h“オーバートレイル+”(4WD/10AT)
タフでなければ 2025.07.30 試乗記 「レクサスLX」に新開発のハイブリッドを搭載した「700h」が登場。燃費やドライバビリティーの向上を図ったのはもちろんのこと、「生きて帰ってこられる」も犠牲にしない待望のパワートレインだ。オフロードに特化した新グレード“オーバートレイル+”をドライブした。砂漠のレクサス
鬼面人を威(おど)すようなフロントグリルの迫力や堂々たる巨体を目の当たりにして「いったいどこでどんな人が乗るんだろう?」といぶかしむ人もいるかもしれないが、安心してください。世界は広いんです。広大な砂漠や荒涼とした原野では、むしろこのぐらいの迫力がなければ頼りなく感じられるだろう。何しろレクサスLXはそういう舞台で活躍するために生まれたクルマである。
2021年にデビューした通算4代目のLX(国内発売は2022年)のお披露目の舞台は、サウジアラビアとアラブ首長国連邦だった。中東地域がレクサスLXの最重要マーケットだからである。年間生産ざっと3万台のうちほとんどが海外の市場向けというが、そのうち中近東諸国だけでおよそ5割を占めるという(ロシアと北米を加えると9割と以前聞いた)。それがレクサスのフラッグシップSUVのLXなのである。
そのLXは2025年春にマイナーチェンジを受けたが、同時に追加されたのがLXとしては初のハイブリッドモデルである700hだ。これまでは3.4リッターV6ツインターボガソリンエンジンを積む「600」のみだったが、700hは3.4リッターV6ツインターボにモーターとクラッチを加えた新しいハイブリッドパワートレインを搭載。600と700hのどちらにも標準車と4人乗りショーファードリブン仕様の“エグゼクティブ”、そしてオフロード志向の“オーバートレイル+”の3タイプが設定されている(従来は“オフロード”というグレードだった)。
今回の試乗車は「ムーンデザート」という専用色に塗られた700h“オーバートレイル+”で、フロントグリルをはじめボディー各部をブラックアウトした精悍(せいかん)ないでたちで、さらに18インチのM+Sタイヤ(他のグレードは20または22インチ)とマットグレー塗装のホイールが標準、“オーバートレイル+”にはセンターデフに加えて前後のデフにもロック機構が備わる。
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万が一も考慮したハイブリッド
LXでは初採用となるハイブリッドシステムは、トヨタハイブリッドの主流である2モーターのシリーズパラレル式ではなく、エンジンとローレンジ付き10段ATのトルクコンバーターの間にクラッチとモーター1基を挟み込んだパラレル式である。新開発とされているが、実は海外向けのトヨタの大型ピックアップ「タンドラ」に採用実績があるという。状況に応じてエンジンのみ/モーターのみ、あるいは両方を使った走行が可能であり、さらに普通なら省略できる12Vのスターターとオルタネーターを別に備えるという念の入れようだ。
人里離れた荒野のなかで万が一ハイブリッドシステムにトラブルが発生したとしても、ガソリン車として問題なく帰ってくることができるというわけだ。また荷室床下に積まれるニッケル水素バッテリー(容量約1.8kWh)も防水パックされ、ガソリン車と同じ700mmの渡河水深を確保してあるという。
V6ツインターボエンジン単体では最高出力408PS/5200rpmと最大トルク650N・m/2000-3600rpm(600は415PSと650N・m)を発生、そこに54PSと290N・mを生み出すモータージェネレーターが加わり、システム合計では457PSと790N・mを発生するという。
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もっちり滑らか
LXのようなSUVでは、はうようにゆっくりと走る際のたくましさと扱いやすさが重要だ。特に海外ではトレーラーなどをけん引する機会が多く、新しいハイブリッドシステムもその要求に応えたものだろう。現行LXの発表直後に特設オフロードコースを走った際には、微速で悪路を走る場合などはまだ先代モデルの自然吸気5.7リッターV8+8段ATのほうが扱いやすいかなと感じたものだが、ハイブリッド化された700hは印象が一変した。モーターの助けを借りて実に滑らかに、そしてモリモリと力強く動く。エンジンが始動するスピードになっても切り替えのショックはごく小さく、さらにエンジンの音も軽やかで控えめだ。レクサスらしい洗練度である。
ただし、車重は2750kgにも達するから(「600“オーバートレイル+”」より150kgあまり重い)仕方ないとはいえ、実用燃費はちょっと悲観的だ。WLTCモード燃費は9.3km/リッターというが、実際には高速道路を流してもなかなか伸びず、いつもの試乗コースの平均で6km/リッター台がやっとというところ。これではガソリン車のLX600と大差ない。燃費よりもドライバビリティーという優先順位がはっきりしていることがうかがえるが、もうひと踏ん張りしてほしい。燃料タンクの容量が600の80リッターから68リッターに減っている点もちょっと残念だ。
街なかだけではもったいない
ご存じのようにLXは「ランドクルーザー“300”」と兄弟関係にあり、同様のボディーオンフレーム構造を持つ。ハイブリッド化にあたってクロスメンバーを追加するなど専用開発されているが、前:ダブルウイッシュボーン、後ろ:トレーリングリンク式リジッドのサスペンション形式や2850mmのホイールベースは同じだ。大きな違いは、レクサスLXには「AHC(アクティブハイトコントロールサスペンション)」というガスと油圧による車高調整式サスペンションが備わること。標準モードに加えてH1/H2、さらに乗降用のローポジションを持つサスペンションはバネレートも可変というもので(可変ダンパーの「AVS」も標準装備)、さらに底づきやトラブルに備えてコイルスプリングも備わっている。過酷な環境での最悪のケースにも万全の備えである。
そんなLXはランドクルーザーより明らかに滑らかでフラット、かつ静かに走るが、それでも高速道路では若干のピッチングが気になった。問題というほどではないが、トンネルや夜間走行では前走車を照らすヘッドライトの光が細かく上下に揺れているのが分かる。ド迫力のSUVのライトがチラチラ揺れながら近づいてきたら、このご時世、たちまち勘違いされかねないので要注意だ。今やLEDライトの照射範囲は自由自在にコントロールできるはずだが、相変わらずトヨタはライト関係には消極的な感じだ。だがそれも些末(さまつ)ということだろう。レクサスLXは、本当の舞台で使い倒すカスタマーの要求に真っすぐなのである。
(文=高平高輝/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=トヨタ自動車)
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テスト車のデータ
レクサスLX700h“オーバートレイル+”
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5100×1990×1895mm
ホイールベース:2850mm
車重:2750kg
駆動方式:4WD
エンジン:3.4リッターV6 DOHC 24バルブ ターボ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:10段AT
エンジン最高出力:408PS(300kW)/5200rpm
エンジン最大トルク:650N・m(66.3kgf・m)/2000-3600rpm
モーター最高出力:54PS(40kW)
モーター最大トルク:290N・m(29.5kgf・m)
システム最高出力:457PS(336kW)
システム最大トルク:790N・m(80.6kgf・m)
タイヤ:(前)265/65R18 114V M+S/(後)265/65R18 114V M+S(ダンロップ・グラントレックH/T 31)
燃費:9.3km/リッター(WLTCモード)
価格:1590万円/テスト車=1659万4100円
オプション装備:レクサスチームメイト アドバンストパーク+パーキングサポートブレーキ<周囲静止物>(3万3000円)/“マークレビンソン”リファレンス3Dサラウンドサウンドシステム(27万3900円)/リアシートエンターテインメントシステム+HDMI端子<フロントセンターコンソール後部>+ヘッドホンジャック×2<フロントセンターコンソール後部>(28万4900円) ※以下、販売店オプション 盗難防止セットB<ホイールロックナット、ハンドルロック、カーロック>(10万2300円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:630km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(7)/山岳路(1)
テスト距離:268.7km
使用燃料:--リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:6.5km/リッター(車載燃費計計測値)

高平 高輝
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