キャデラック・エスカレード プラチナム(4WD/10AT)
大きいことはいいことだ 2025.08.17 試乗記 全長5.4m、全幅2m超の巨体が圧倒的な存在感を放つ「キャデラック・エスカレード」。アメリカンラグジュアリーの体現者は、今回の改良でどう変わったのか? 55インチの大画面や24インチの巨大ホイールなどでよりデッカく進化した、最新型の仕上がりを試す。画面のサイズは驚異の55インチ
先ごろ日本に上陸した改良型のエスカレードは、本国では2025年モデルとして発売されたものだ(参照)。現行エスカレードは2021年モデルからスタートしているので、日本式にいうと、今回はフルモデルチェンジから5年目の(=モデルライフ折り返し地点での)マイナーチェンジにあたるのだろう。
主眼は内外装デザインのアップデートだ。外装はフェイスデザインの変更が中心で、ひとあし先に新しくなった「XT4」と同様、新世代電気自動車の「リリック」「セレスティック」に端を発するキャデラックの新CIフェイスにアップデートされた。人間の顔でいう“目”にあたる横長のレンズ部分は、これまでヘッドランプだったが、新フェイスのヘッドランプの役割は縦型LEDが担う。このあたりのデザイン配列はキャデラックの“新顔”すべてに共通するところで、本国仕様ではセンターグリルに間接照明も内蔵される。
しかし、内装は外装以上の大規模刷新である。従来もクルマ用では世界初という湾曲OLEDを、38インチという巨大画面で採用していたが、今回のエスカレードでは、その巨大湾曲ディスプレイ(ただし、今回はOLEDではないようだ)がついに左右いっぱいまで広がった。そのサイズ、じつに55インチ!
しかも、この55インチは、ドライバー側で“8K”という超高解像度を豪語する。ちなみに助手席側の解像度は4Kというから、55インチといっても、実際には2枚のディスプレイをつなぎ合わせているようだ。
内装のアップデートは、この55インチ画面にとどまらない。センターコンソールにあったシフトセレクターをコラムに移動させて、空いたスペースにタッチ式ディスプレイを配置。そこでは空調を中心に、シートの快適機能(ヒーターにベンチレーター、マッサージ)、カメラ、室内照明などを操作できる。
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24インチの超大径ホイールを装着
先代までの古典的コラムシフトからコンソールシフトになったことも、現行エスカレードの自慢だったはずが、わずか4年で先祖返りしたことになる。ただ、先代までの機械式コラムシフトとは異なり、今回は軽やかな操作感のシフト・バイ・ワイヤである。時代はめぐるもので、コラムシフトでセンターコンソールスペースを最大限に活用するのが、いつの間にか最新のハヤリになった。
また、ステアリングホイールも“往年の伝統へのリスペクト”をこめたという新しい2スポークデザインとなった。2スポークということで「剛性や強度はどうなの?」と不安視する好事家もおられるかもしれないが、そもそも現代のステアリングホイールの大半が、実際は2スポーク構造(3スポークデザインでも中央はただの飾り)なので、まったく問題はない。
こうして徹底的にアップデートされた内外装に対して、メカニズム的な変更点については、少なくとも米本国でのアナウンスはない。ただ、厳密にはメカニズムのくくりではないが、新たに24インチ(!!)タイヤがオプションで登場して、今回の試乗車も40万円相当のそれを履いていた。また今回から「オートトラック」と呼ばれる副変速機が新たに搭載されたが、これは米本国では以前からオプション設定されていたものだ。
今回の試乗車は日本で2種類あるグレードのうち、ラグジュアリー志向の「プラチナム」となる。本体価格はもうひとつの「スポーツ」のほうがちょっとだけ高いのだが、グレードの位置づけに上下はない。実際にも両者は内外装の趣味がちがうだけで、走りにまつわるメカニズムやタイヤにも差はない。
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走りも実は改善している?
それにしても、日本で見るエスカレードは“小山”のようにデカい。全長、全幅、全高は「ロールス・ロイス・カリナン」や「ベントレー・ベンテイガEWB」より大きく、全長だけは「ジープ・グラディエーター」にゆずるが、それ以外は国内正規販売されるSUV/ピックアップトラックで最大なのだ。
アッシュウッドとセミアニリン本革に囲まれた運転席におさまると、自慢の8Kはなるほど高精細だ。ただ、今回からナビ機能は非搭載となり、道案内は「Apple CarPlay」か「Android Auto」経由で自分のスマホからおこなうこととなったため、地図表示はあくまでシンプル。車両設定などでの映し出される“自車像”のイラストは笑ってしまうほど精緻だが、8Kの恩恵は、現時点ではその程度ということだ。解像度に表示コンテンツが追いついていない……というのが、正直な印象である。
副変速機が追加されたことは、手もとにある4WD切り替えスイッチでもわかる。その選択肢が従来の「2WD/4WD/オート」から「2WD/4WDハイ/4WDロー/オート」に増えた。ちなみに4WDローは過酷なオフロード用というより、ボートやキャンピングカーなどのけん引時を想定したものらしい。
独立ラダーフレーム構造ながらも、高度な4輪独立サスペンションやエアスプリング、電磁流体式の電子制御連続可変タンパー「マグネティックライド4.0」を備えるシャシー構成はこれまでどおり……のはずだが、良路での乗り心地の滑らかさが一段階上がった感がなくはないのは、隠れた年次改良か生産現場の習熟か。いずれにしても、おおらかでフワリと柔らかな所作と肌ざわりなのに、動きは不正確でも曖昧でもない。山坂道や都市高速でマイルドすぎ……と感じたら、ドライブモードを「スポーツ」にすれば、ステアリング反応がクッと締まって、取り回しが楽になる。前出の4WD切り替えも「オート」にしておけば、低負荷では後輪駆動で走りつつ、前輪に適時トルク配分して安定性を確保する。
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オーディオだけでも買う価値あり
6.2リッターV8エンジンの“OHV”というバルブ駆動形式にだまされてはいけない。筒内直接燃料噴射、可変バルブタイミング、気筒休止、アイドルストップと、最新技術がテンコ盛りだ。じつに2.8t近い(!!)超ヘビー級なので、発進やしずしずと転がすときの加減速で二の足を踏む“ドッコイショ感”は隠せず、「今どきなら、少しでも電動アシストがあれば……」と思わなくもない。しかし、走りだしてしまえば、624N・mの最大トルクに不足があろうはずもない。
相変わらず感心する静粛性には、路面とキャビンを隔絶する独立フレームの恩恵もあるだろう。V8の鼓動だけはあえて聞かせる仕組みになっていて、ドライブモードによって音も変わるが、それ以外の雑音はきれいに排除されている。突っ張るようなクセは皆無で2.8tを支えるシャシーといい、その洗練がきわまった味わいは、さすが“トップ・オブ・キャディ”と申し上げたくなる。
1947年にオーストリアで創業したAKGブランド(現在はハーマンインターナショナル傘下)を冠した36スピーカーサウンドシステムは、日本仕様のエスカレードでは全車標準装備となる。webCG編集部の堀田君によると、某社の車載オーディオエンジニアをして「自分では絶対に開発したくない」と苦笑させたというほどの、複雑で壮大なシステムである。音響方面はド素人の筆者だが、キラキラすぎず、ズンドコ過多でもないバランスのいい音はさすが欧州発祥ブランド(?)と、したり顔をしたくなったのはウソではない。
それはともかく、音の中心ははっきりとしているのに、音そのものがどこから鳴っているかはまるでわからない……という体験は初めてだった。いかに多スピーカーの構成でも、普通はメインで鳴っているのはどれかイメージできるものなのだが、エスカレードのAKGはちがった。いやはや、この世界最高峰の純正車載サウンドシステムを味わうだけでも、エスカレードに乗る価値はあると思った。
(文=佐野弘宗/写真=荒川正幸/編集=堀田剛資/車両協力=ゼネラルモーターズ・ジャパン)
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テスト車のデータ
キャデラック・エスカレード プラチナム
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=5400×2065×1930mm
ホイールベース:3060mm
車重:2780kg
駆動方式:4WD
エンジン:6.2リッターV8 OHV 16バルブ
トランスミッション:10段AT
最高出力:416PS(306kW)/5800rpm
最大トルク:624N・m(63.6kgf・m)/4000rpm
タイヤ:(前)285/40R24 112H XL M+S/(後)285/40R24 112H XL M+S(ブリヂストン・アレンザA/S 02)
燃費:--km/リッター
価格:1890万円/テスト車=1941万7700円
オプション装備:24インチ 10スポーク ポリッシュドフィニッシュ アロイホイール<ハイグロスブラック&レーザーエッチング付き>(40万円) ※以下、販売店オプション フロアマット(8万6900円)/ETC2.0車載機<独立型>(3万0800円)
テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:2433km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(4)/高速道路(5)/山岳路(1)
テスト距離:317.3km
使用燃料:58.16リッター(ハイオクガソリン推奨、レギュラーガソリン使用可)
参考燃費:5.5km/リッター(満タン法)/5.7km/リッター(車載燃費計計測値)
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佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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