クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)

大きな価値がある 2025.09.15 試乗記 佐野 弘宗 フルモデルチェンジによってF74の開発コードを得た新型「BMW 2シリーズ グランクーペ」。ラインナップのなかでハイパフォーマンスモデルに位置づけられる「M235 xDrive」を郊外に連れ出し、アップデートされた第2世代の仕上がりと、その走りを確かめた。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

経営戦略的に重要なモデル

BMWのコンパクト4ドアといえば、カーマニア的には、なにはなくとも「3シリーズ」だろう。3シリーズは1975年の発売から、少なくとも2000年代初頭まではBMWのエントリーモデルであり、しかも伝統のFRレイアウトとお約束の直列6気筒エンジンを、今も守り続けている。3シリーズを「もっともBMWらしいBMW」と断言するカーマニアは多い。

とはいえ、現在のBMWのエントリーモデルは車名に「1」や「2」を冠するシリーズだ。2004年に出た「1シリーズ」や2010年の発売の「X1」の初代モデルはまだFRレイアウトだったが、2014年にBMW初のFF車である「2シリーズ アクティブツアラー/グランツアラー」が出て以降は、FFレイアウトのBMWが一気に増殖した。そのひとつとして2019年に登場したのが「2シリーズ グランクーペ」である。

BMWのエントリーモデル群のなかで、もっとも安価で手軽なのはハッチバックの1シリーズで、もっとも今っぽいのはSUVのX1だろう。そして、もっとも実用的なファミリーカーといえば2シリーズのアクティブツアラーか。

これらと比較すると、この2シリーズ グランクーペは、少なくともカーマニア的に、その本質がちょっとつかみにくいBMWであることは否めない。“BMWのコンパクト4ドア”というキャラクターでは、BMWの絶対的存在(2024年度も日本で一番売れた)である3シリーズともかぶるから、なおさらだ。

ただ、北米、中国という世界の2大自動車市場ではハッチバックの1シリーズは販売されておらず、2シリーズのグランクーペが伝統的乗用車スタイルのエントリーBMWとなっている。グローバルでみると、このクルマは、日本のカーマニアがいだいているイメージよりは、BMWの経営戦略的に重要な位置を占めている。

2025年3月に国内導入が発表されたBMWの新型「2シリーズ グランクーペ」。F44型と呼ばれる初代モデルは、エンジン横置きのFFシャシーをベースとするBMW初のコンパクト4ドアクーペとして2019年に誕生した。F74型とされる今回のモデルは2代目にあたる。
2025年3月に国内導入が発表されたBMWの新型「2シリーズ グランクーペ」。F44型と呼ばれる初代モデルは、エンジン横置きのFFシャシーをベースとするBMW初のコンパクト4ドアクーペとして2019年に誕生した。F74型とされる今回のモデルは2代目にあたる。拡大
3モデルがラインナップされる「2シリーズ グランクーペ」のなかから、今回は高性能モデルに位置づけられる「M235 xDrive」をロングドライブに連れ出した。車両本体価格は734万円。
3モデルがラインナップされる「2シリーズ グランクーペ」のなかから、今回は高性能モデルに位置づけられる「M235 xDrive」をロングドライブに連れ出した。車両本体価格は734万円。拡大
BMWの象徴たるキドニーグリルに立体的なプレスラインを用いて新世代を印象づける「2シリーズ グランクーペ」のフロントフェイス。環状のシグネチャーを2回繰り返す、ツインサーキュラーのアダプティブLEDヘッドランプが全車に採用される。
BMWの象徴たるキドニーグリルに立体的なプレスラインを用いて新世代を印象づける「2シリーズ グランクーペ」のフロントフェイス。環状のシグネチャーを2回繰り返す、ツインサーキュラーのアダプティブLEDヘッドランプが全車に採用される。拡大
リアウィンドウが大きく傾斜したクーペライクなフォルムは、初代「2シリーズ グランクーペ」から受け継がれたもの。スポーティーなデザインのリアディフューザーも目を引くポイントだ。
リアウィンドウが大きく傾斜したクーペライクなフォルムは、初代「2シリーズ グランクーペ」から受け継がれたもの。スポーティーなデザインのリアディフューザーも目を引くポイントだ。拡大
BMW 2シリーズ グランクーペ の中古車webCG中古車検索

「Android Auto」が使える

新しい2シリーズ グランクーペも、1シリーズの3ボックス版という成り立ちは、これまでと変わりはない。2024年に先行してモデルチェンジした1シリーズもそうだが、これを“ビッグマイナーチェンジ”ととらえる向きも多い。たしかにプラットフォームの基本レイアウトは2670mmのホイールベースを含めて、従来型を踏襲している。パワートレインも、少なくともエンジンは従来型の改良版というラインナップだ。また、1シリーズに関しては外板プレス部品とガラスは先代から変わっていない。

BMWとしては、1シリーズもこの2シリーズ グランクーペもフルモデルチェンジあつかいで、型式名も変わっている。近年、電動化にまつわる巨額の投資をせざるをえない自動車メーカーにとって、既存商品の開発コストに対するシバリは、さぞかし厳しいものと察する。

ただ、このグランクーペについては、リアエンドのエッジがよりシャープな造形になっており(そこに小さなスポイラーが鎮座する今回の試乗車ではわかりにくいが)、トランクリッドとリアフェンダーパネルが新しくなっている。北米と中国がターゲットに加わると、かけられるコストが増えるのかも。

さらに車内に乗り込むと、1シリーズと同じくインテリアデザインが完全刷新されていることで、これはやはりフルモデルチェンジだと納得できる。とくに今回のM235 xDriveでは、樹脂ソフトパッドのダッシュボード上に、伝統のワークスカラーがステッチで表現されているのが面白い。

また、インフォテインメントシステムも基本ソフトは最新の「OS9」に刷新された。日本のスマホユーザーの6割以上を占めるiPhone派のみなさんはお気づきでないかもしれないが、この新OSの導入で、ついにBMWでも「Android Auto」が普通に使えるようになったのは、(筆者を含む)日本の4割弱のみなさんには朗報である。

「2シリーズ グランクーペ」のサイドビュー。「1シリーズ」の3ボックス版という成り立ちは、これまでと変わりはない。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4550×1800×1435mm、ホイールベースは2670mm。
「2シリーズ グランクーペ」のサイドビュー。「1シリーズ」の3ボックス版という成り立ちは、これまでと変わりはない。ボディーサイズは全長×全幅×全高=4550×1800×1435mm、ホイールベースは2670mm。拡大
リアエンドはよりシャープな造形にアップデートされた。トランクリッドとリアフェンダーパネルのデザインが新しくなっており、目じりが上がったLEDリアコンビランプも印象的だ。
リアエンドはよりシャープな造形にアップデートされた。トランクリッドとリアフェンダーパネルのデザインが新しくなっており、目じりが上がったLEDリアコンビランプも印象的だ。拡大
メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化した横長の「カーブドディスプレイ」が置かれたインストゥルメントパネルは、BMWでおなじみのデザイン。前席まわりの基本的なレイアウトや装備は「1シリーズ」に準じたものになっている。
メーターパネルとコントロールディスプレイを一体化した横長の「カーブドディスプレイ」が置かれたインストゥルメントパネルは、BMWでおなじみのデザイン。前席まわりの基本的なレイアウトや装備は「1シリーズ」に準じたものになっている。拡大
樹脂ソフトパッドのダッシュボード上に、伝統のワークスカラーがステッチで表現されている。このデザイン処理は最新の「1シリーズMスポーツ」モデルにも共通する。
樹脂ソフトパッドのダッシュボード上に、伝統のワークスカラーがステッチで表現されている。このデザイン処理は最新の「1シリーズMスポーツ」モデルにも共通する。拡大

レスポンスもパンチ力も文句なし

エンジンの基本ラインナップは先代と変わらない。ただし、先代ではこのM系やディーゼルのような高トルクエンジンの変速機はトルクコンバーター式の8段ATだったが、今回は全車が7段デュアルクラッチトランスミッション(DCT)となった。

今回の試乗車はこれまでと同様に、2リッター直4ターボに電子制御油圧多板クラッチ式の4WDを組み合わせる。300PSという最高出力、400N・mの最大トルクは、先代より6PS、50N・mのディチューンとなった。その理由は新たな排ガス規制のためとか。ただ、0-100km/h加速は4.9秒と先代と同タイムを維持。本当の最高速は低下しているかもしれないが、欧州公表値では新旧ともに250km/hでリミッターが利く。かわりに、燃費は先代の11.9km/リッターから12.6km/リッター(どちらもWLTCモード)へと改善している。

いずれにしても、この程度のピーク性能のちがいを一般道で体感することはむずかしい。実際にはレスポンスもパンチ力も文句なし。6500rpmまできれいに回るが、その勢いは6000rpm手前くらいで頭打ち感があるので、マニュアルモードで引っ張るより、アクセルやブレーキの踏み加減で、3000~4000rpmあたりをうまくキープしてくれるSレンジの自動変速にまかせたほうが気持ちいいし、山道などでの走行ペースも速い。このエンジンはこの近辺が一番おいしい。

ドライブモードを「スポーツプラス」に設定すれば、この回転域でもエンジン音は迫力たっぷりで、スロットルを戻すと“スパンパン!”とほえまくる。近年のBMWスポーツモデルにはパワートレインの種別を問わず、シフトパドルの長引きで10秒間作動する「ブーストモード」が備わる。

初代モデルと同じく2代目も「FAAR」プラットフォームを採用。足まわりの基本レイアウトや2670mmのホイールベースを含めて、従来型を踏襲している。「M235 xDrive」には周波数感応式ダンパーを核とする「アダプティブMサスペンション」が標準で装備される。
初代モデルと同じく2代目も「FAAR」プラットフォームを採用。足まわりの基本レイアウトや2670mmのホイールベースを含めて、従来型を踏襲している。「M235 xDrive」には周波数感応式ダンパーを核とする「アダプティブMサスペンション」が標準で装備される。拡大
フロントに横置きされる2リッター直4ターボエンジンは、最高出力300PS/5750rpm、最大トルク400N・m/2000-4500rpmを発生。7段DCTが組み合わされる。
フロントに横置きされる2リッター直4ターボエンジンは、最高出力300PS/5750rpm、最大トルク400N・m/2000-4500rpmを発生。7段DCTが組み合わされる。拡大
10.25インチの「マルチディスプレイメーターパネル」を「2シリーズ グランクーペ」全車に標準で装備。選択したドライブモードに連動して画面の表示デザインが切り替わる。
10.25インチの「マルチディスプレイメーターパネル」を「2シリーズ グランクーペ」全車に標準で装備。選択したドライブモードに連動して画面の表示デザインが切り替わる。拡大
「M235 xDrive」には、シフトパドルの長引きで10秒間作動する「ブーストモード」が備わる。「マルチディスプレイメーターパネル」内に作動時間がカウントダウン表示されるのも、同モードのユニークな特徴だ。
「M235 xDrive」には、シフトパドルの長引きで10秒間作動する「ブーストモード」が備わる。「マルチディスプレイメーターパネル」内に作動時間がカウントダウン表示されるのも、同モードのユニークな特徴だ。拡大

これぞオンザレール感覚

以前webCGの試乗リポートにおいて、基本メカニズムを共有する「M135 xDrive」のフットワークを、自動車ジャーナリストの高平さんは「跳ねる」と評した(参照)。このM235は車体剛性のちがいや少し重めウェイトのおかげか、それより少し良好な気もするが、標準装備される「アダプティブMサスペンション」はいわゆる周波数感応式ダンパーである。電子制御ほどオールラウンドでないのはしかたない。ただ、このクラスのこの価格帯のクルマなら、市街地の乗り心地にも納得したいのは正直なところだ。

もっとも、さらに走行ペースを引き上げて、路面からの入力が高まると、印象はどんどん好転していく。ロードホールディングはしなやかになり、荷重移動もさらにスムーズに進行するようになる。なにより、ステアリングの正確無比っぷりには感心する。

先代より控えめになったとはいえ、このサイズに300PS、400N・mは過剰性能というほかないが、いかなる場面でアクセルペダルを遠慮なく踏みつけても、ステアリングフィールや走行ラインに乱れはまるで生じない。アンダーステアは見事なまでに抑制されるいっぽうで、テールからこれ見よがしに曲げるわけでもない。これぞオンザレール。

もちろん、後輪駆動の3シリーズのステアリングフィールはもっとスッキリしているが、「生まれてからFRしか運転したことがない」といった筋金入りの猛者でもなければ、このクルマの主駆動輪がフロントかリアかを意識することは、ほぼないと思われる。

新しい2シリーズ グランクーペの車体サイズは、全長×全幅×全高=4550×1800×1435mm。先代より10mm短く、5mm背高なだけで、1800mmの幅は変わらない。じつはこのサイズ、3シリーズでいうと先々代のE90型とほぼ同じ。全長はE90型が10mm短いが、全高は5mm高く、日本で気安く使える全幅1800mmは両車共通。M235は走りがすこぶる楽しい。しかし、あの時代の3シリーズの絶妙サイズを受け継いだBMW製4ドアというところにも、このクルマの大きな価値があると思う。

(文=佐野弘宗/写真=花村英典/編集=櫻井健一/車両協力=BMWジャパン)

今回の試乗車は、10万1000円の有償オプションとなる19インチの「MアロイホイールYスポークスタイリング997Mバイカラー」に、235/40R19サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6」タイヤを組み合わせていた。
今回の試乗車は、10万1000円の有償オプションとなる19インチの「MアロイホイールYスポークスタイリング997Mバイカラー」に、235/40R19サイズの「グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6」タイヤを組み合わせていた。拡大
コーラルレッドとブラックのコンビネーションカラーが鮮やかなパーフォレーテッドヴェガンザレザーのシートは、無償オプションとして選択できる。
コーラルレッドとブラックのコンビネーションカラーが鮮やかなパーフォレーテッドヴェガンザレザーのシートは、無償オプションとして選択できる。拡大
フロントと同じく、リアシートもパーフォレーテッドヴェガンザレザーを用いたコーラルレッドとブラックのコンビネーション表皮で仕立てられている。クーペスタイルではあるものの後席の圧迫感は最小限で、頭上空間には余裕も感じられた。
フロントと同じく、リアシートもパーフォレーテッドヴェガンザレザーを用いたコーラルレッドとブラックのコンビネーション表皮で仕立てられている。クーペスタイルではあるものの後席の圧迫感は最小限で、頭上空間には余裕も感じられた。拡大
後席使用時の荷室容量は430リッター。背もたれには40:20:40の分割可倒機構が備わり、すべて前方に倒せば容量を大きく拡大することができる。
後席使用時の荷室容量は430リッター。背もたれには40:20:40の分割可倒機構が備わり、すべて前方に倒せば容量を大きく拡大することができる。拡大
郊外のワインディングロードを行く「M235 xDriveグランクーペ」。いかなる場面でアクセルペダルを遠慮なく踏みつけても、ステアリングフィールや走行ラインに乱れはまるで生じない。アンダーステアは見事なまでに抑制されている。
郊外のワインディングロードを行く「M235 xDriveグランクーペ」。いかなる場面でアクセルペダルを遠慮なく踏みつけても、ステアリングフィールや走行ラインに乱れはまるで生じない。アンダーステアは見事なまでに抑制されている。拡大

テスト車のデータ

BMW M235 xDriveグランクーペ

ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4550×1800×1435mm
ホイールベース:2670mm
車重:1590kg
駆動方式:4WD
エンジン:2リッター直4 DOHC 16バルブ ターボ
トランスミッション:7段AT
最高出力:300PS(221kW)/5750rpm
最大トルク:400N・m(40.8kgf・m)/2000-4500rpm
タイヤ:(前)235/40R19 96Y XL/(後)235/40R19 96Y XL(グッドイヤー・イーグルF1アシメトリック6)
燃費:12.6km/リッター(WLTCモード)
価格:734万円/テスト車=761万8000円
オプション装備:ボディーカラー<Mブルックリングレー>(0円)/パーフォレーテッドヴェガンザレザー<コーラルレッド/ブラック>(0円)/MアロイホイールYスポークスタイリング997Mバイカラー(10万1000円)/ブラックルーフ(5万3000円)/Mコンパウンドブレーキ<グレーハイグロスキャリパー>(12万4000円)

テスト車の年式:2025年型
テスト開始時の走行距離:4174km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(5)/山岳路(4)
テスト距離:309.2km
使用燃料:33.2リッター(ハイオクガソリン)
参考燃費:9.3km/リッター(満タン法)/10.0km/リッター(車載燃費計計測値)

BMW M235 xDriveグランクーペ
BMW M235 xDriveグランクーペ拡大
 
BMW M235 xDriveグランクーペ(4WD/7AT)【試乗記】の画像拡大
佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

試乗記の新着記事
試乗記の記事をもっとみる
BMW 2シリーズ グランクーペ の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。