右も左もスライドドアばかり ヒンジドアの軽自動車ならではのメリットはあるのか?
2026.02.25 デイリーコラムヒンジドア軽の販売台数は減少傾向
日本を代表する乗用車のセグメントといえば、なんといっても軽自動車だ。保有比率でいえば、自動車全体の約4割が軽自動車と超絶な人気を誇る。一周まわって欧州や米国でも「軽自動車のように小さなクルマ」の価値が注目されるなど、まさに日本を代表するジャンルである。
そんな軽乗用車の販売内訳をみると、昨今はその5割以上が「スーパーハイトワゴン」。スーパーハイトワゴンとは日本で最も売れている乗用車である「ホンダN-BOX」を筆頭に、「スズキ・スペーシア」や「ダイハツ・タント」、そして「日産ルークス」に「三菱デリカミニ&eKスペース」と多くの競合がしのぎを削っている。人気があるだけにライバルは多いのだが、その特徴はどれも共通。天井が高いために室内が広い(コンパクトカーのハッチバックやSUVより広い!)ことと、後席スライドドアの採用により乗り降りが楽なこと(昨今はスライドドアを組み合わせるハイトワゴンもあるけど)。車体が小さいから運転しやすいし、なんだかんだで道具として考えると最も便利なのがスーパーハイトワゴンというわけだ。維持費も安いし、実はリセールバリューもすごくいいから経済性は文句なし。となれば売れるのも納得である。
さて、今回のコラムのテーマは「ヒンジドアのハイトワゴンにメリットはあるのか?」というもの。ハイトワゴンとは「スズキ・ワゴンR」など「背の高さがセダン以上、スーパーハイトワゴン未満」のカテゴリーだ。そしてスーパーハイトワゴンとの違いは「リアドアもヒンジ式」だということ(最近は例外も多いけど)。
それらはかつて軽乗用車市場の中心的存在だったが、昨今はスライドドアを組み合わせるスーパーハイトワゴンに人気が移って販売台数がどんどん減っているのが現状。言葉を選ばずに言えば「斜陽ジャンル」である。でも、それを黙ってみているわけにはいかない。必ずハイトワゴン人気復活の糸口があるはずだ。
価格も維持費も安い
まず、スーパーハイトワゴンに対して明確に勝っているのが価格。たとえばワゴンRの価格帯(FF車)は143万円から170万9400円だが、それは同社のスーパーハイトワゴンであるスペーシアの153万0100円から207万3500円に比べると明らかに低い。だから買いやすい。「スペーシアにはターボがあるけどワゴンRにはない」という声もあるかもしれないけれど、そんな異論には耳を傾けないのであしからず。いずれにせよボトムの価格が低いのは明らか。勝負アリだ。
違う会社をみても、ホンダではN-BOXに対してハイトワゴン「N-WGN」のほうが価格帯が抑えられている。「ハイトワゴンは安い」のである。
それから燃費がいいというのも強み。スペーシア(自然吸気エンジンのFFモデル)のWLTCモード燃費は25.1km/リッターだが、ワゴンRなら25.1km/リッター……って同じじゃないか。スズキすごいな。いっぽうホンダなら21.6km/リッターのN-BOXに対してN-WGNなら23.1km/リッターも走る。やっぱり燃費がいいのだ。違いますか?
正直なところ実用性でスーパーハイトワゴンに勝つのは難しいけれど、(ヒンジドアはスライドドアに対して)ドアを開け閉めするスピードが速いというメリットもある。たぶん、多くの人にとってはどうでもいいだろうけど。
また、構造がシンプルなため、ヒンジドアはスライドドアに比べるとドア周辺とかリアクオーターあたりの修理代は安く済むだろう。これはありがたい。誰ですか? 「どうせ車両保険で払うから関係ない」なんて言っているのは。
運転好きにとっては軽くて重心が低いことが運転の楽しさをもたらしてくれるというのも、超絶魅力だ。高速走行時の横風にも(スーパーハイトワゴンよりは)強い。ついでに言うと、スーパーハイトワゴンでMTが選べる乗用車はないけれど、スライドドアではないハイトワゴンなら選ぶことができる。ワゴンRとか。運転好きならやっぱりハイトワゴンに限るのだ。
ワゴンR限定とはなるけれど、ドア内側の「傘ホルダー」なんかはスライドドアにはできないこと(ドアをスライドした際のスペースが不足するから)。N-WGNにも後席座面下に傘ホルダーがある。日本は雨が多いから、傘を置く場所は大事なのだ。これだけでも“あえてスーパーハイトではなくハイトワゴンを選ぶ理由”といってもいいのではないだろうか。
ついでに言えば、N-WGNには荷室を上下に分割できるボードがあってこれも便利(それは「タントにもある」なんていう声は聞こえないフリ)。
「運転の楽しさ」というぜいたく
というわけで結論を言えば、「傘ホルダー」はあっても全体の実用性ではハイトワゴンはやっぱりスーパーハイトワゴンにかなわない。だけど価格が抑えめだったり燃費がよかったりと家計には優しい。「今どきの軽自動車は高い」なんて言っている人は、今すぐハイトワゴンに振り向くべきだろう。
そのうえwebCGを読んでくれるような好事家なら走りが楽しいというのも見逃せない。というか、それありきで選んだって後悔しないはず。それでもあなたはスライドドアにこだわるというんですか?
こうやって考えてみると「実用性は控えめだけど、運転が楽しい。しかもMTが選べる」というのはスポーツカーに通じるクルマ選びのような気がしてきたのは筆者だけだろうか。いや決してそうではないだろう。
あえて実用性よりも走りに振ったクルマを選ぶ。それこそがクルマ好きにとってぜいたくなクルマ選びではないだろうか。スーパーハイトワゴンではなくハイトワゴンを選ぶということは、それを体現することといっていい。すなわち令和におけるオツな軽自動車選びなのだ。
ここまで読んだあなたならきっと「クルマ好きなら今こそハイトワゴン!」ということに異論はないだろう。実用性はあえて控えめにして(ちょっとだけ)走り重視でヒンジドア付きのハイトワゴンが令和の新常識である。ヒンジドアサイコー。ヒンジドアを組み合わせたハイトワゴンよ永遠なれ!
(文=工藤貴宏/写真=スズキ、本田技研工業、ダイハツ工業、日産自動車、三菱自動車/編集=藤沢 勝)

工藤 貴宏
物心ついた頃からクルマ好きとなり、小学生の頃には自動車雑誌を読み始め、大学在学中に自動車雑誌編集部でアルバイトを開始。その後、バイト先の編集部に就職したのち編集プロダクションを経て、気が付けばフリーランスの自動車ライターに。別の言い方をすればプロのクルマ好きってとこでしょうか。現在の所有車両は「スズキ・ソリオ」「マツダCX-60」、そして「ホンダS660」。実用車からスポーツカーまで幅広く大好きです。
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