日産アリアB9 e-4ORCE(4WD)
さすがの現場力 2026.04.22 試乗記 「日産アリア」のマイナーチェンジモデルが登場。ご覧のとおりフロントマスクが変わったほか、インフォテインメントシステムも刷新。さらに駆動用電池の温度管理システムが強化されるなど、見どころは盛りだくさんだ。400km余りをドライブした印象を報告する。世界初公開からすでに6年
このアリア初のマイナーチェンジ(マイチェン)モデルは昨2025年末に発表、この2月に発売された。市販型アリアの世界初公開は2020年7月で、もともとは翌2021年6月に先行限定車「リミテッド」の受注開始、同年冬にその納車がはじまって、それに前後して標準モデルも発売……という算段だった。今回のマイチェンは、そこから数えると、やけに歳月が経過しているように思える。
ただ、この日産のフラッグシップ電気自動車(BEV)の情報をリアルタイムに追いかけてきた向きはご承知のように、実際のアリアは生産の立ち上がりでつまずいた。まずは新型コロナ由来の半導体不足・部品不足にドンピシャでぶつかっただけでなく、アリアの生産から本格稼働した栃木インテリジェントファクトリーが、一説には塗装工程の不具合で、思うように生産できない状態におちいった。結果として、アリアの納車は当初から難航して、標準モデルの発売も2022年5月までずれ込んでしまったのだ。
結局、アリアが普通に買えるようになったのは、新しい「NISMO」を含む全グレードがあらためてそろった2024年3月だった。それは世界初公開から4年近く、当初の通常モデルの発売予定から2年半近くが経過していたのだから、今回のマイチェンのタイミングも、当初予定とはだいぶ変わっていると思われる。
新しいアリアでは、昨2025年にデビューした3代目「リーフ」と共通イメージのデザインとなったフロントエンドもハイライトのひとつで、これが日産BEVの新しい“顔”になるのだろう。ただ、これも当初予定では、フラッグシップであるアリアで新BEV顔の目慣らしをしてから、満を持してリーフが登場、それに続いて「サクラ」もマイチェンする手はずだったのではないか……と邪推したくもなる。
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現在の最大充電能力が分かる
というわけで新しいアリアだが、デザイン面ではその新フロントエンド以外はホイールデザインや車体色、内装色のアップデートくらいで、あとは中身である。
バッテリーやeアクスルといったクルマとしての根幹部分に手は入っていないものの、インフォテインメントシステムがリーフに続いてGoogle化されたのが最大の変更といっていい。それに既存のバッテリーヒーターと組み合わせることで、ナビで充電スポットを目的地設定すると、走行ルートに応じてバッテリー温度を自動的に整えるプレコンディショニング機能=正式には「ナビリンクバッテリーコンディショニング」が追加された。
プレコンディショニング機能は、近年のミドルクラス級以上のBEVでは定番化している。その有無が、良くも悪くもBEVの“新しい感”を想起させるキーワードとなっているフシもあって、その意味では、アリアもここでやっとキャッチアップしたわけだ。
もっとも、なんらかのバッテリー温度表示機能とバッテリーヒーターさえあれば、慣れたドライバーにはプレコンディショニング機能は必須ではない。実際、これらは従来のアリアにもすでに備わっていた。
今回は3月末の肌寒い日の試乗で、スタートから渋滞気味の首都高速をゆるゆると流しているときに、ふと「次のPAで休憩がてら充電しようかな」などと思い立った。しかし、バッテリー状態を確認すると、温度は「低温」で、現在の最大充電能力は「55kW」だった。そこでバッテリーヒーターを手動でオンにすると、ものの1分でバッテリーは「適温」に変わり、最大充電能力も75kWに上昇した。アリア本来の最大充電性能である130kWにはまだまだ届かないが、目指すPAの急速充電器は最大90kWなので、これで十分である。ちなみに、アリアには同じく手動オンオフも可能な「バッテリークーリングアシスト」もつく。
ADASも最新版にアップデート
新しいアリアではこれ以外にも、ドアロック状態でも1500W給電が可能(「AC外部給電コネクター」を使用)になり、先進運転支援システム(ADAS)では、一般道でも先行車に合わせた車間距離維持や減速、停止までする「インテリジェントディスタンスコントロール(IDC)」をリーフに続いて採用するなど、各部がアップデートされている。
IDCについては、トヨタの「プロアクティブドライビングアシスト」に似て、周囲にクルマがいる市街地では、流れに合わせて滑らかにブレーキングしてくれる。これは最初は戸惑うが、安心感が高く、なにより楽なので、いつしか手放せなくなってしまう類いの機能だ。この種の機能については、若い運転好きカーマニアは邪魔に思うかもしれない。筆者もカーマニアは自認しているが、さすがに50代も後半の中高年になると、自身のポカを救ってくれる安全機能は、細かい乗り味うんぬんよりありがたく思えてくるものだ。
さらに、試乗車にもトッピングされていた「プロパイロット2.0」は、高速道路でオンにすれば気がつくと「やっちゃえ」なハンズオフ運転が可能になっているのが、いまだにちょっと驚く。ハンズオフ自体にもまだまだ引きがあるが、そうした半自動運転時の安定した車間距離マナーや安定したライントレース性能にも、現場ではこの種の技術にいち早く取り組んできた日産だけに、一日の長がある。前走車に追いつくと、ウインカー操作に合わせた車線変更支援も作動するが、アリアのそれはあくまで“支援”で、自動で車線変更するまでではない。
今回のアリアでは、こうしたインフォテインメントやADASのアップデートに加えて、サスペンションも日本専用に乗り心地を重視したリセッティングが実施されたというが、これがまた、じつに効果的だった。
見違える(?)ほどのフラットライド
これまでのアリアも、とくに「e-4ORCE」による(4WD車の)ハンドリング性能には定評があった。しかし、路面によっては盛大に上下したり、強く揺すられたりする乗り心地については要改善……なのは、以前にも指摘したとおりである。今回はそこにメスが入ったわけだ。
まず、乗り心地の改善は、なるほど如実である。路面不整を乗り越えたときの突きあげが柔らかになっただけでなく、基本所作が明確にフラットになっているのがうれしい。少なくとも、今回の試乗車はこれまでに乗ったどのアリアより、フラットに落ち着いていた。
まあ、細かい不整が連続する路面でバネ下がドタついたり、大きなウネリに遭遇すると、いきなり強くバウンドしたりというクセが完全に解消されたわけではない。しかし、これまでとは見違える(乗り違える?)くらいの進化であるのもウソではない。もっとも、緻密かつ超速の前後駆動配分が可能なe-4ORCEは、フラット感の醸成にはもともと有利なので、次の機会にはFWDも試してみたいと思った。FWDでも、これに準じたフラットライドが味わえるようなら本物だ。
乗り心地には課題があったアリアだが、ショックもラグも感じさせないリニアなアクセル特性や、カーブが多めの道でのe-4ORCEのハンドリングは相変わらず素晴らしい。アリアのe-4ORCEは前後に同じモーターを使うが、ディスプレイを見るかぎり、実際にはフロントを優先させつつ、積極的なコーナリングでは瞬間的にリア優勢になることもある……といった駆動配分制御になっているようだ。その調律がなんとも絶妙で、基本的にはアンダー気味の安定志向でありつつも、最後は滑らかにニュートラル化する旋回特性は文句なしだ。
というわけで、新しいアリアは熱マネジメント面では、モーターのかすかな発熱まで回収する最新のリーフにはおよばないものの、それ以外はしっかりアップデートされており、とくに乗り心地では日産の“現場力”にあらためて感心させられた。なんだかんだいって、日産の復活はこの現場力にかかっている。
(文=佐野弘宗/写真=山本佳吾/編集=藤沢 勝/車両協力=日産自動車)
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テスト車のデータ
日産アリアB9 e-4ORCE
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4595×1850×1665mm
ホイールベース:2775mm
車重:2180kg
駆動方式:4WD
フロントモーター:交流同期電動機
リアモーター:交流同期電動機
フロントモーター最高出力:218PS(160kW)/5950-1万1960rpm
フロントモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-4392rpm
リアモーター最高出力:218PS(160kW)/5950-1万1960rpm
リアモーター最大トルク:300N・m(30.6kgf・m)/0-4392rpm
タイヤ:(前)255/45R20 101V XL/(後)255/45R20 101V XL(ダンロップSPスポーツマックス050)
一充電走行距離:560km(WLTCモード)
交流電力量消費率:187Wh/km(WLTCモード)
価格:807万2900円/テスト車=950万1190円
オプション装備:ボディーカラー<翡翠の光―ヒスイノヒカリ― プラズマグリーン×ミッドナイトブラック2トーン>(9万3500円)/BOSEプレミアムサウンドシステム&10スピーカー(13万2000円)/255/45R20 101Vタイヤ&20インチアルミホイール<20×8J、インセット:45、PCD:114.3>(5万8300円)/ナッパレザーシート<抗菌仕様、運転席パワーシート、前席ベンチレーション>(30万8000円)/充電ケーブル<コントロールボックス付き、200V、7.5m>(5万5000円)/パノラミックガラスルーフ<電動チルト&スライド、電動格納式シェード、リモート機能付き>(11万円)/ステアリングスイッチ<アドバンストドライブアシストディスプレイ設定、オーディオ、ハンズフリーフォン、プロパイロット2.0>+ヘッドアップディスプレイ<プロパイロット2.0情報表示、カラー>+アドバンストアンビエントライティング<マルチカラー>+ダブルシャークフィンアンテナ+プロパイロットリモートパーキング+プロパイロット2.0+クリアビューパッケージ<ワイパーデアイサー、リアLEDフォグランプ>(48万1800円) ※以下、販売店オプション ウィンドウはっ水12カ月<フロント+フロントドアガラスはっ水処理>(1万3640円)/日産オリジナルドライブレコーダー<フロント+リア>(10万0150円)/フロアカーペット<石庭調>(7万5900円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1633km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(6)/山岳路(2)
テスト距離:429.3km
消費電力量:--kWh
参考電力消費率:3.9km/kWh(車載電費計計測値)

佐野 弘宗
自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。
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