マツダCX-5 L(4WD/6AT)/マツダCX-5 G(FF/6AT)
これがマツダの新境地 2026.05.21 試乗記 日本でも、世界でも、今やマツダの主力車種となっている「CX-5」がフルモデルチェンジ。3代目となる新型は、過去のモデルとはどう違い、ライバルに対してどのような魅力を備えているのか? 次世代のマツダの在り方を示すミドルクラスSUVに試乗した。マツダの屋台骨を支えるクルマ
「屋台骨」。3代目に進化したマツダCX-5(参照)の試乗会で、最初にプレゼンテーションを行った上席執行役員の佐賀尚人さんは、この言葉を使った。つまり、フォルクスワーゲンでいえば「ゴルフ」、BMWでいえば「3シリーズ」に相当する車種ということだ。
2012年に、「スカイアクティブテクノロジー」と「魂動(こどう)デザイン」を本格採用してデビューした初代以来、約130の国と地域で累計500万台を販売。日本国内では登録乗用車の年間販売の約4分の1を占めるとあれば、この表現が出てくるのは納得だ。
それなのにモデルチェンジが9年ぶりになったのは、一度は縦置きパワートレインの「CX-60」を後継車として提示したものの、ユーザーの反応がいまひとつであり、CX-5存続に切り替えたことが関係しているのではないかとみている。
新型の開発コンセプトは、「新世代エモーショナル・デイリーコンフォート」。人馬一体の走りや魂動デザインといった、近年のマツダを特徴づけてきたエモーショナルな部分と、広くて明るい車内、使いやすい荷室といった、日常生活で大事になる機能性や快適性を両立させたという。
実車は「ジャパンモビリティショー2025」の会場で見たことがあったものの、陽光の下で目にするのは初めて。スクエアなプロポーションになったなというのが第一印象だった。エンジンフードの前端を50mm、ルーフを30mmそれぞれ高めたこと、サイドのキャラクターラインをフロントからリアまで一直線につなげたことが、その印象につながったのだろう。
先代のプラットフォームをベースとして、前後のオーバーハングはそのままにホイールベースを115mm延ばし、そのほとんどを後席空間に充てている。でもそのままでは胴長に見えてしまうので、フロントドア下部に斜めのラインを入れて、ノーズを長く見せるという小技も入れている。ワイド感を狙ったというフロントマスクは初代からのつながりも感じ取れるし、リアはバンパーのブラック部分を広げたおかげで、ボテッとしたイメージが薄れたのも好印象だ。
全般的に、初期の魂動デザインを象徴していた肉食動物っぽさは薄れたものの、サイドウィンドウグラフィックのおかげでCX-5だと識別できるし、マツダらしいこだわりが各所に込められていて、いい意味での正常進化だと思った。
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方々に感じるマツダらしい配慮
グレードは「S」「G」「L」の3モデル構成。先代のそれは少々わかりにくかったという声を反映して、シンプルにしたという。
インテリアは、最上級グレードのLでは15.6インチという大型センターディスプレイが目立つが、機能的にはGおよびSグレードの12.9インチでも不満はなかった。それとともに気づくのは、エアコンルーバーがブラックパネルに収められて目立たなくなったことと、光り物の装飾が極力減らされていること。モダンでクリーンな眺めになった。
また新型ではメーターもフルデジタルになったが、機能過多な印象はなく、普段表示する情報を絞り込んでいるうえにグラフィックも整理されていて、運転環境を大事にするマツダらしい配慮を感じる。
センターディスプレイの操作系はディスプレイの下に一列にまとめられていて、走行中の操作はしやすいとはいえないけれど、マツダで初めてGoogleのインターフェイスを搭載したこともあって、音声操作はストレスがない。エアコンの温度調節はスマートフォンのようなスワイプ入力が可能。ステアリングスイッチの音量調節も同様で、某輸入車のようにレベルが暴走することはなく、適度な範囲で上下してくれるあたりは、日本車ならではのきめ細かさを感じるところだ。
シートの座り心地は、特に後席がクッションの厚みを感じて心地よかった。しかもホイールベース延長のおかげで、身長170cmの僕なら足が組めるほどの広さ。リアドアも70mm後方に長くなっていて乗り降りしやすい。これはチャイルドシートを取り付けたり、そこに子供を乗せたりするときにも重宝しそうだ。加えて荷室も奥行きが45mm長くなっており、後席の背もたれを前に倒すと、僕ぐらいの体格であれば車中泊ができるほどの広さに。主査の山口浩一郎さんが、「ヘッドレストを前後逆に差し込むと、倒したときに枕になる」と教えてくれた。
ホイールベースを延ばしたのは、グローバルで「リアがもう少し広ければ」という声が多かったためだというが、プレゼンテーションでは「『CX-8』並みに広い」というモニターのコメントも紹介されていて、これはCX-8の役目も受け持たせたのかもしれない。
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乗り心地はマツダのラインナップでも最良
パワートレインには、まずはマイルドハイブリッド化した2.5リッター直列4気筒自然吸気ガソリンエンジンが、6段ATとの組み合わせで用意される。駆動方式はもちろん2WD(FF)と4WDが選べる。
次いで2027年中に、新開発の「SKYACTIV-Z」エンジンを用いた、マツダ独自のハイブリッドユニットも導入予定とのこと。ディーゼルについての言及はなかったので、事前のうわさどおり、このハイブリッドがディーゼルの代替という位置づけになるようだ。
まずは最上級グレード、Lの4WDに試乗する。車重は1740kg(試乗車はサンルーフ付きで1770kg)と、先代より100kg弱重くなっているが、発進加速はモーターアシストのおかげもあってストレスがない。ただしスピードが乗ってからの加速は、モーターの介入がないためか、発進時ほどの力感ではなくなる。そこでアクセルペダルをさらに踏み込むと、キックダウンが行われて望みのダッシュが手に入るのだが、6段ATということもあって回転上昇が気になることもあった。オーバー2リッターの4気筒エンジンとしては高回転まできれいに回るので、ノイズに悩まされるようなことはないものの、ATが8段だったりしたら、かなりフィーリングは変わるのではないだろうか。
とはいえ、このあたりは続いて導入される予定のハイブリッドが解消してくれるのかもしれないし、現状でも価格を含めて考えれば、新型CX-5の価値は十分にある。このクラスのSUVが400万円超えが当然になりつつあるなか、2WDならSが330万円、Gが352万円、Lが407万円という数字は、「安い」と思ったほどだ。
乗り心地を体感して、自分のなかでのバリューはさらに強まった。長年フランス車を乗り継いできた人間の個人的な印象ではあるが、全般的にしっとりしなやかで、マツダ最良と言いたくなるレベルだったからだ。新型は国内の道路環境や交通環境に合わせて、ダンパー減衰の初期応答を極限まで早めたうえで、バネレートを低めにしたという。運転は楽しいが固さや突き上げを感じることもあるという、先代ユーザーの声に応えたものだった。
次いでGのFFにも乗ったが、こちらのほうが乗り心地をしっとりと感じたのは、Lは本革、Gはスエード調と合成皮革のコンビという、シート表皮の違いも理由のひとつだろう。それでも、路面によっては19インチホイール/タイヤの固さが気になったので、布シート+17インチのSグレードも試してみたかった。
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ユーザーの声に応えたモデルチェンジ
ハンドリングは自然。ソフトになったバネがターンインの挙動をおだやかにし、コーナーに入るとしっかりダンパーが仕事をしてくれる。ガソリンエンジンのマイルドハイブリッドなので、先代のディーゼルのようにノーズが重く感じないのもいい。
立ち上がりでは、4WDではリアが旋回を助けてくれることが確認できたけれど、FFでも素直に曲がってくれる。高められたフードや細められたAピラーのおかげもあり、車両感覚もつかみやすく、狭い道でも自信を持って駆け抜けることができた。
これは試乗前のプレゼンテーションや、試乗後のエンジニアとの意見交換からも感じたことだが、つくり手の気持ちが前のめり気味だったこれまでのマツダと比べると、新型CX-5は、一歩引いた立ち位置でクルマをつくっているような感じがする。このあたりについては、日をあらためてコラムで報告したいと考えているが、ユーザーの要望を丁寧に織り込み、機能性や快適性に気を配ってつくられたことが、いろんなシーンで伝わってきた。
でも、それでつまらないクルマになったかというと、全然そんなことはない。むしろ肩の力を抜いて楽しめる心地よさがある。とりわけ足まわりについては、「こういうこともできるんだ」と感心するレベルだった。新型CX-5は、マツダの新境地を見せてくれる一台といえそうだ。
(文=森口将之/写真=向後一宏/編集=堀田剛資)
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テスト車のデータ
マツダCX-5 L
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1695mm
ホイールベース:2815mm
車重:1770kg
駆動方式:4WD
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/6000-6200rpm
エンジン最大トルク:237N・m(24.2kgf・m)/3800-4000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8kW)/1000rpm
モーター最大トルク:60.5N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:14.2km/リッター(WLTCモード)
価格:430万6500円/テスト車=496万0402円
オプション装備:ボディーカラー<ロジウムホワイトプレミアムメタリック>(5万5000円)/シートカラー・インテリアコーディネーション<スポーツタン>(4万4000円)/パノラマサンルーフ(12万1000円) ※以下、販売店オプション SIGNATURE STYLE<ロジウムホワイトプレミアムメタリック専用>(36万9662円)/トノカバー(2万6290円)/リフトゲートライト(3万3000円)/ディスプレイ保護フィルム(4950円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1444km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
マツダCX-5 G
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4690×1860×1695mm
ホイールベース:2815mm
車重:1670kg
駆動方式:FF
エンジン:2.5リッター直4 DOHC 16バルブ
モーター:交流同期電動機
トランスミッション:6段AT
エンジン最高出力:178PS(131kW)/6000-6200rpm
エンジン最大トルク:237N・m(24.2kgf・m)/3800-4000rpm
モーター最高出力:6.5PS(4.8kW)/1000rpm
モーター最大トルク:60.5N・m(6.2kgf・m)/100rpm
タイヤ:(前)225/55R19 99V/(後)225/55R19 99V(ブリヂストン・アレンザ001)
燃費:15.2km/リッター(WLTCモード)
価格:352万円/テスト車=377万3000円
オプション装備:EX Package<クルージング&トラフィックサポート[CTS][緊急停止支援機能付き≪ドライバーモニタリング連動≫]+クルージング&トラフィックサポート[CTS][ハンズオフアシスト機能≪渋滞時≫]+クルージング&トラフィックサポート[CTS][車線変更アシスト機能]+前側方接近車両検知[FCTA]+ドライバーモニタリング+スマートブレーキサポート[SBS][走行時≪前進時右左接近物検知機能≫]+ドライバー異常検知システム[DEA]+LEDマップランプ[リア]+グローブボックス内LEDイルミネーション+助手席6Wayパワーシート+リアシート・シートヒーター+外部接続ハブ・USB端子[Type-C:リア×2]+Boseサウンドシステム[AUDIOPILOT3+Centerpoint2]+12スピーカー+バーグラアラームシステム+シートカラー・インテリアコーディネーション[ピュアホワイト/ブラック]>(22万7700円) ※以下、販売店オプション トノカバー(2万5300円)
テスト車の年式:2026年型
テスト開始時の走行距離:1637km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(--)/高速道路(--)/山岳路(--)
テスト距離:--km
使用燃料:--リッター(レギュラーガソリン)
参考燃費:--km/リッター
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森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
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