MINIクーパーS クロスオーバーALL4(4WD/6MT)【海外試乗記】
大きくても“MINI” 2010.08.18 試乗記 MINIクーパーS クロスオーバーALL4(4WD/6MT)MINIシリーズで初めて、フルタイム4WDと4枚ドアを手に入れたニューモデル「MINIクロスオーバー」に、ドイツで先行試乗。“らしくない”外観だが、果たしてその走りは……。
抵抗はあったけれど
日本以外の世界では、これまた伝統の名である「MINIカントリーマン」として販売される、この「MINIクロスオーバー」。その一番の理由は商標登録の問題なのだが、最終的にこの名でいこうとなったのは、クルマの特質がよりダイレクトに伝わりやすいだろうという思いもあったという。その特質とはすなわち、MINI特有のコンセプトとSUVの魅力を結びつけた存在ということである。
それにしても、実際に目の前に置いてみるとこのMINIクロスオーバー、結構ボリュームがある。全長4110mm×全幅1789mm×全高1561mmというサイズは、もはや“ミニ”と呼ぶのがためらわれる感もある。しかしながら実のところ、試乗車として用意された「クーパーS ALL4」の6段MT仕様で2日間にわたって走り回った後には、やはりこれはMINI以外の何物でもないなと納得させられてしまったのだった。
なによりその外観は、誰の目にもミニ一族の一員であることを瞬時に理解させるもの。正直、丸くない目玉には今なお抵抗を覚えるが、それでも全体に漂う雰囲気は明らかにMINI。これだけのサイズで4ドア。しかもSUVテイストというまったく新しいものでもしっかりMINIに見せるツボを、彼らは心得ている。個人的には抵抗を覚えつつ、でもやっぱりMINI以外の何物でもないんだよなぁ……と、認めざるを得ないという感じだ。
スパッと曲がる
室内も、やはりそれらしい雰囲気である。特徴的なインストゥルメンツのデザインはもちろん、切り立ったフロントウィンドウやピラーなどがつくり出す視界も、そう感じさせる部分だろう。実際には室内寸法は拡大されており、特に上半身は横方向に余裕を感じる。男2人で乗っていても狭苦しさを感じることはなかった。
あるいは後席は、MINIらしくないと感じさせる部分かもしれない。スペースは十分に確保されており、左右方向だけでなく足元や頭上スペースに関しても、成人男性が十分くつろげるだけのものになっている。
なお、2人掛けの場合は、左右席の間に特徴的なセンターレールが走る。前席側から連続して室内を前後に貫くこのレールには小物入れやカップホルダーなどのアタッチメントを任意の場所に装着できる。どれほど便利かそうでもないかは実際に色々使ってみないとなんとも言えないが、さすがMINIらしい仕掛けである。
荷室も通常時350リッター、最大1170リッターと容量は十分。ミニマムサイズのSUVとして成立する使い勝手を実現していると言っていいだろう。
なんといってもミニらしさを実感させられたのが、その走りである。ステアリングは中立付近に、他のモデルでは感じない電動アシストらしい微細な違和感があったのが気になるものの、それを除けばレスポンスはダイレクト。この格好でありながら、ほとんどロールを意識させることなくスパッと曲がる。それでいて安心感も高いのは、ほぼアップライトからディファレンシャルまでの距離に等しいほど長いロアアームを持つリアサスペンションの、優れた接地性のおかげだろう。
ユーザーが広がった
もちろん4輪駆動の恩恵も、そこにはあるはずだ。「ALL4」と呼ばれるそのシステムは、基本的には主に前輪を駆動し、走行状況に応じて電子制御式油圧多板クラッチによって後輪にもトルクを伝達するというものである。
最上級の「クーパーS」が積む最新の1.6リッター直噴ターボユニットは、踏めば十分以上に速いが、それでもこの体格だけに、その名に期待するだけの動力性能かといわれればギリギリかなというところ。「クーパー」や「ONE」ではどうなるかとも思うが、4輪駆動でなければ車重は70kgほど減量されるだけに、心配するほどでもないかもしれない。
見た目からして一目瞭然(りょうぜん)ともいえるのだが、走りっぷりにしてもクオリティにしても、そして単に機能的だというだけでなく、クルマで過ごす時間を豊かに演出してくれそうな遊び心といった部分を見ても、やはりこれはMINI以外の何物でもない。個人的には、ちょっと大きいな……という思いはあるのだが、家族が増えるなど生活スタイルが変化しても、やはり“MINI”に乗り続けたいという人にとっては、ちょうどいいところなのだろうと思う。
MINIクロスオーバーの日本導入は来春頃の予定。詳細はまだ未定だが、待望の5人乗りは用意されるという。全高も1550mm以下に調整することが検討されているようである。
(文=島下泰久/写真=BMWジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
-
ポルシェ・マカンGTS(4WD)【試乗記】 2026.7.29 ポルシェの擁する電動のハイパフォーマンスSUV「マカン エレクトリック」に、さらに走りを磨いた「GTS」が登場。エンジンを積まない電気自動車でも、ポルシェならでは、GTSシリーズならではの走りは楽しめるものなのか? 雨のなかの試乗を通して確かめた。
-
シトロエンë-C3マックス(FWD)【試乗記】 2026.7.28 シトロエンのコンパクトハッチバック「C3」に電気自動車版の「ë-C3」が登場。さすがはシトロエンらしく、操作系やスペック、装備の設定、さらには乗り心地にいたるまで、普通のBEVとはひと味違う。誰にでも勧められるクルマではないが、そもそもシトロエンとはそういうポジションだ。
-
スズキ・ジムニー ノマドFC(4WD/4AT)/ジムニー ノマドFC(4WD/5MT)【試乗記】 2026.7.27 “ジムニー史上初”となる、5ドアのロングボディーで人気を博す「スズキ・ジムニー ノマド」。快適な後席と広い荷室空間が自慢のファミリーの新顔に、はたして死角はないのか? このクルマの本領であるオフロードも走行し、その実力をつまびらかにした。
-
ホンダ・シビックe:HEV RS(FF)【試乗記】 2026.7.25 高速道路から山道へとステージを変えながら、「シビック」の追加モデル「e:HEV RS」に試乗。そのキーテクノロジーは、疑似有段ギア制御システム「ホンダS+シフト」だ。ベースとなったハイブリッド車や、同じS+シフトを搭載する「プレリュード」との違いを確かめた。
-
カワサキZ900RSブラックボールエディション(6MT)/Z900RS SE(6MT)【レビュー】 2026.7.24 カワサキが誇る人気のレトロスポーツ「Z900RS」が大幅に進化。このマシンならではの“凄(すご)み”はそのままに、エンジンの改良と高度な電子制御の採用により、スポーツバイクとしての魅力にいっそう磨きをかけてきた。卓越したその走りを報告しよう。
-
NEW
いばらの道のフォルクスワーゲン再建計画 ――10万人のリストラと4工場閉鎖は本当か?――
2026.7.31デイリーコラム不振にあえぐフォルクスワーゲンが経営再建計画を発表。しかしその中身は、追加の人員削減や工場閉鎖に言及しない、外部から「生ぬるい」と指摘されるものだった。この内容で本当にドイツの巨人は再生するのか? 厳しさを増す市場環境から考察した。 -
NEW
ビモータKB998リミニ(6MT)【レビュー】
2026.7.31試乗記ビモータのスーパースポーツ「KB998リミニ」にサーキットで試乗! イタリア職人の手によるフレームに、カワサキの強心臓を搭載した一台は、いかなる走りを見せてくれるのか? クローズドコースだからこそ体験できたマシンの真価に迫る。 -
BYDシーライオン6(前編)
2026.7.30あの多田哲哉の自動車放談日本市場において、日に日に存在感を強めているBYD。そのクルマづくりについて、元トヨタの車両開発者である多田哲哉さんは何を思う? プラグインハイブリッド車「シーライオン6」に試乗したうえで、語ってもらった。 -
1990年代の名車「プリメーラ」が復活? 日産のグローバル戦略の一翼を担うBEVの正体を探る
2026.7.30デイリーコラム日産が新型ピックアップトラック「ナバラ プロ プラグインハイブリッド」と新型BEV「プリメーラ」をフィリピンで発表した。いずれも中国を生産・輸出のハブとするグローバル戦略の一翼を担うモデルだ。果たして日本導入の可能性は? -
第972回:黒船来襲も! イタリア自動車販売店は戦国時代
2026.7.30マッキナ あらモーダ!イタリアで急速に進む、自動車販売店の統廃合と巨大グループの伸長。その背景にはどんな理由があり、私たちにどんな変化をもたらすのか? 現地在住の大矢アキオが、変わりゆく自動車販売のあり方を考察するとともに、消えゆく街かど自動車文化に思いをはせた。 -
写真で解説する「メルセデス・ベンツCLA with EQテクノロジー」
2026.7.29画像・写真メルセデス・ベンツの新型電気自動車「CLA with EQテクノロジー」が上陸。2026年7月29日、東京都内で発表会が開催された。次世代技術満載のニューモデルの見どころはどこか、写真とともにお伝えする。






























