フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/7AT)【海外試乗記】
期待は決して裏切らない 2010.06.26 試乗記 フォルクスワーゲン・ポロGTI(FF/7AT)フォルクスワーゲンのホットハッチ「ポロGTI」が新型にスイッチ。母国ドイツでいち早く試乗した!
前走車が道を譲る
聞けば「ポロGTI」の世界販売において、日本市場の占めるシェアは5指に入るほど大きいのだという。日常で扱いやすく狭いカントリーロードでも楽しめる、適度なボディサイズ、使い切る楽しみを満喫できるパフォーマンス、そして小さくても「GTI」の名に恥じないデザインやクオリティ等々が、この日本のユーザーのニーズにぴたりと合っているのだろう。
新型ポロGTIも、そんな期待を裏切ることは無い。それがドイツ・フランクフルトからニュルブルクリンク周辺で試乗した、偽りのない感想だ。
ベースとなったポロ自体もそうだが、新型ポロGTIの外観も存在感は兄貴分に決して負けてはいない。フロントマスクは、ハニカム形状のグリルに赤いピンストライプとGTIのおなじみのロゴが入れられ、バンパー下側の開口部も大型化されている。試乗車にはオプションのLEDデイタイムランニングライトが装着されて、表情をさらに目を引くものとしていた。なにしろアウトバーンの追い越し車線で、前走車が次々道を譲るのだ、この小さなポロのために!
他にも外装は専用のサイドシルパネル、リアスポイラー、下側をディフューザー形状としたリアバンパーに2本出しのエグゾーストパイプで、GTIらしくコーディネート。ホイールは17インチが標準となった。
インテリアも定番の仕上げだ。スポーツシートはチェック柄で、ステアリングホイールや新意匠となるDSGのセレクターレバー/ハンドブレーキのグリップやブーツには、赤いステッチが入れられている。
ギアボックスは選べない
パワーユニットは従来の1.8リッターターボに代えて、1.4リッターのツインチャージャーTSIを搭載する。スペックは最高出力180ps/6200rpm、最大トルク25.5kgm/2000-4500rpmと、ゴルフなどに積まれているものに比べて高回転・高出力型に仕立て直されている。メカニズム的には違いはなく、これは主にECUの設定によるものだ。
注目はギアボックス。用意されているのはなんと7段DSGのみで、MTは選べない。ファンにしてみれば賛否はあるだろうが、間口を大きく広げることは間違いないだろう。いや、欧州NEDCモードで先代より3割以上も良い5.9リッター/100km(=16.9km/リッター)、CO2排出量にして139g/kmという少食ぶりを考えれば、文句の出る余地は無いと言えるかもしれない。
「1.2TSI」が最高出力105ps、最大トルク20.4kgmだから、出力はざっと7割増しにもなるだけに、走りっぷりは力強いのひと言。発進時のトルク感も申し分ないし、回転計の針を最大トルクを発生する2000rpm-4500rpmに留めておけば、右足の動きに即応するレスポンスを満喫できる。専用のギア比と、減速時や下りこう配で積極的なシフトダウンを行う変速ロジックが与えられた7段DSGをもってすれば、トルクバンドを外すことはない。パドルシフトも備わるが、ワインディングロードですらDレンジのままでもほとんど不満を感じることは無いはずだ。
残念なのはトップエンドであまり伸びないこと。先代「ゴルフGT TSI」に搭載された最初のツインチャージャーTSIは、7000rpmを超えてもなお、上を目指そうとする活気のあるエンジンだったのだが……。また、低音が強調され、ヌケの今ひとつ良くないサウンドも、改善を望みたいポイントである。
フットワークは安定志向
フットワークは基本的には安定志向の味付けだ。シャシーはスプリングとダンパーの変更による15mmのローダウンを行う他に、ブレーキ制御で旋回中の内輪の空転を抑えてアンダーステアを軽減するXDSを採用しているが、ゴルフGTIのそれに比べるとノーズをインに引き込む動きは控えめ。刺激的ではないが、コーナーの大小を問わず安定した姿勢を保ったまま駆け抜けることができる。
あえて言えば、160km/hあたりの速度で巡航している際にステアリングの据わり感が今ひとつと感じられたことや、ロール感のわりには硬めの乗り心地は、気にならないではない。しかし特に日本では、日常使っていて問題となるようなことは無いだろう。
サイズ、パフォーマンス、そしてGTIというブランド。新型ポロGTIは、あくまでポロGTIらしい立ち位置を見失うことなく、しかし確実な進化を遂げて、ファンの期待に十分応えるものに仕上がっている。日本にはこの秋、5ドアモデルのみが導入される予定だ。
(文=島下泰久/写真=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパン)

島下 泰久
モータージャーナリスト。乗って、書いて、最近ではしゃべる機会も激増中。『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)、『クルマの未来で日本はどう戦うのか?』(星海社)など著書多数。YouTubeチャンネル『RIDE NOW』主宰。所有(する不動)車は「ホンダ・ビート」「スバル・サンバー」など。
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