フォルクスワーゲン・ティグアン R-Line(4WD/6AT)【試乗記】
ただの“お飾り”じゃない 2010.01.04 試乗記 フォルクスワーゲン・ティグアン R-Line(4WD/6AT)……488.0万円
「フォルクスワーゲン・ティグアン」シリーズに加わったスポーツモデル「R-Line」。専用エアロでドレスアップした最上級グレードの走りを試す。
“R-Line”って何?
「R-Line」と聞いて、すぐにピンと来た人は、かなりのフォルクスワーゲン“通”だ。日本ではまだあまり知られていないが、ドイツではスポーティなパッケージオプションとして人気を呼んでいるR-Lineが、ついに日本に初上陸した。
R-Lineとは、「ゴルフR32」や「パサートヴァリアントR36」など、“Rシリーズ”と呼ばれるフォルクスワーゲンのスポーツモデルのイメージをエクステリア/インテリアに表現したドレスアップ仕様のことで、ヨーロッパでは「ジェッタ」や「ゴルフトゥーラン」「パサート」「トゥアレグ」そして、今回紹介する「ティグアン」などに、メーカーオプションとして設定されている。そういう意味では、BMWの“Mスポーツパッケージ”、メルセデスの“AMGスタイリングパッケージ”、アウディの“S-lineパッケージ”と同じような位置づけである。
そんなR-Lineパッケージを標準装着したのが、この「ティグアン R-Line」だ。オンロード重視の「ティグアン スポーツ&スタイル」をベースに、エクステリアにはR-Line専用のフロントグリルや前後バンパー、リアスポイラー、サイドスカート、ホイールハウスエクステンションを、また、インテリアには専用の本革レザー3スポークステアリングホイールとアルミ調ペダルを採用。スポーツ&スタイルにオプション設定されるレザーシートも標準とした。さらに、スポーツサスペンションと255/40R19タイヤ&19インチアルミホイールが付いて、ベースモデルより62万円高い488万円のプライスで、2009年10月13日から販売がスタートしている。
クールなデザイン
「たかがドレスアップ仕様」と思われるかもしれないが、個人的にはとても興味があるモデルだ。というのも私自身、R-Lineのファンで、ドイツ本国で装着されているR-lineのパーツを取り寄せて愛車に取り付け、ひとり悦に入っているくらいなのだ。特に気に入っているのが、R-Lineのフロントグリルで、たとえば私の愛車である“旧”ゴルフヴァリアントだと、ピカピカのメッキグリルが、ちょっと渋いマットシルバーに変わり、クールな雰囲気を強めてくれる。
ティグアンR-Lineでも、フロントグリルはピカピカからマットなシルバーに変わっているが、もともと細めのフレームを採用しているため、あまり目立たない。それでも、グリル内の2本の横バーがそれぞれダブルになるので、同じティグアンオーナーならすぐに気づくだろう。
さらに、ボディ同色になったバンパーや、ドアの下方に貼られたマットシルバーのプレート、そして、スリムなスポークのアルミホイールなどが、スタイリッシュなティグアン スポーツ&スタイルをさらにスポーティに仕上げていた。
それに比べるとインテリアの変更はおとなしいもので、たとえば、センタークラスターやドアトリムをアルミパネルにするくらいの演出がほしいものだ。
バランスのよい仕上がり
以前の試乗で、オンロード走行の快適さが光っていたティグアン スポーツ&スタイルだが、これにスポーツサスペンションと2インチアップの19インチタイヤを組み合わせると、果たしてどうなるのか? 多少不安を抱きながら街に足を踏み入れると、それが取り越し苦労であることがすぐにわかる。
SUV用ではなく、サルーン用のタイヤが装着されたティグアンR-Lineは、SUVタイヤ特有のザラついた感触とは無縁。スポーツ&スタイル同様、街なかでは落ち着いた動きを見せ、時おり19インチタイヤがゴツっとショックを拾うこともあるが、予想以上に快適な乗り心地に感心した。
高速道路に入っても、その印象は変わらず、スポーツ&スタイルよりワンランク上のフラットな乗り心地がとても心地良い。さすがに山道ではある程度のロールを許すが、コーナーを駆け抜けるのに不安を覚えることはないだろう。
一方、パワートレインはスポーツ&スタイルとまったく同じスペックで、200ps、28.6kgmの実力を持つ2リッターTSI(直噴ターボ)と6段オートマチックの組み合わせ。2000rpm以下の低回転から6000rpm超の高回転まで、踏めばどこからでも力強い加速をもたらし、とても頼もしい印象だ。
ティグアンR-Lineは、本格的なオフロードには向かないが、ハルデックスカップリングによるフルタイム4WDや、170mmの最低地上高など、ときには舗装路から少し足を踏み出したい人には、お誂え向き。比較的コンパクトなサイズに過剰じゃないエンジンも、いまの時代には合っている。欲をいえば、オンロード指向のスポーツ&スタイルやR-Lineだけでも、1.4リッターTSIツインチャージャー+7段DSGの組み合わせで、さらなる低燃費を追求してほしいものだ。
それにしても、全体としてはとてもバランスよくまとまっていたR-Lineは、ティグアンのトップグレードにふさわしい内容といえる。ぜひ他のモデルにもR-Lineの設定を拡大してほしいものだ。
(文=生方聡/写真=郡大二郎)

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
-
BYDシールAWD(4WD)【試乗記】 2026.1.17 BYDのBEVサルーン「シール」の機能アップデートモデルが登場。強化のポイント自体はそれほど多くないが、4WDモデルの「シールAWD」は新たに電子制御式の可変ダンパーを装備したというから見逃せない。さまざまなシーンでの乗り心地をチェックした。
-
マツダCX-60 XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ(4WD/8AT)【試乗記】 2026.1.14 「マツダCX-60」に新グレードの「XDドライブエディション ナッパレザーパッケージ」が登場。スポーティーさと力強さ、上質さを追求したというその中身を精査するとともに、国内デビューから3年を経た“ラージ商品群第1弾”の成熟度をチェックした。
-
カワサキKLX230シェルパS(6MT)【レビュー】 2026.1.13 その出来には“セロー乗り”も太鼓判!? カワサキのトレイルバイク「KLX230シェルパ」に、ローダウン仕様の「シェルパS」が登場。安心の足つき性で間口を広げた一台だが、実際に走らせてみると、ストリートでも楽しめるオールラウンダーに仕上がっていた。
-
メルセデス・ベンツC220dラグジュアリー(FR/9AT)【試乗記】 2026.1.12 輸入車における定番の人気モデル「メルセデス・ベンツCクラス」。モデルライフ中にも年次改良で進化し続けるこのクルマの、現在の実力はいかほどか? ディーゼルエンジンと充実装備が魅力のグレード「C220dラグジュアリー」で確かめた。
-
日産ルークス ハイウェイスターGターボ プロパイロットエディション(FF/CVT)【試乗記】 2026.1.10 日産の軽スーパーハイトワゴン「ルークス」がフルモデルチェンジ。「見えない危険が……」のテレビCMでお茶の間をにぎわせているが、走る、曲がる、止まるをはじめとしたクルマ全体としての仕上がりはどうか。最上級グレードをテストした。
-
NEW
クルマの乗り味の“味”って何だ?
2026.1.20あの多田哲哉のクルマQ&A「乗り味」という言葉があるように、クルマの運転感覚は“味”で表現されることがある。では、車両開発者はその味をどう解釈して、どんなプロセスで理想を実現しているのか? 元トヨタのエンジニア、多田哲哉さんに聞いた。 -
NEW
プジョー208 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】
2026.1.20試乗記「プジョー208」にマイルドハイブリッド車の「GTハイブリッド」が登場。仕組みとしては先に上陸を果たしたステランティス グループの各車と同じだが、小さなボディーに合わせてパワーが絞られているのが興味深いところだ。果たしてその乗り味は? -
ベントレー・コンチネンタルGTアズール(4WD/8AT)【試乗記】
2026.1.19試乗記ベントレーのラグジュアリークーペ「コンチネンタルGT」のなかでも、ウェルビーイングにこだわったという「アズール」に試乗。控えめ(?)な680PSのハイブリッドがかなえる走りは、快適で満ち足りていて、ラグジュアリーカーの本分を感じさせるものだった。 -
第327回:髪もクルマもナイスファイト!
2026.1.19カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。日産の新型「ルークス」で夜の首都高に出撃した。しっかりしたシャシーとターボエンジンのパワフルな走りに感心していると、前方にスーパーカーの姿を発見。今夜の獲物は「フェラーリ・ローマ」だ! -
日本で売れるクルマはあるのか!? 最新の“アメリカ産ニホンシャ”を清水草一が検証する!
2026.1.19デイリーコラムアメリカからの外圧による制度変更で、北米生産モデルの国内導入を決めたトヨタ。同様に、今後日本での販売が期待できる「海外生産の日本車」には、どんなものがあるだろうか? 清水草一が検証してみた。 -
フェラーリ12チリンドリ(後編)
2026.1.18思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「フェラーリ12チリンドリ」に試乗。前編では伝家の宝刀であるV12エンジンを絶賛した山野。後編ではコンビを組むシャシーの印象を余すところなく聞いてみた。






























