プジョー207スタイル1.4(FF/5AT)【試乗記】
200万円プジョーの復活 2009.12.22 試乗記 プジョー207スタイル1.4(FF/5AT)……189.0万円
質を上げながらもプライスダウンされた「プジョー207」。その変更の中身はどんなものなのか? 1.4リッターのエントリーモデルに試乗した。
良心的な価格設定
価格破壊の嵐が吹き荒れた2009年。自動車の世界でもトヨタの「プリウス」や「マークX」がプライスダウンを実施し、ヒットに結びつけた。では輸入車は? と目を向けると、フランス車の良心的な価格設定が目立つ。
「ルノー・カングー」は、新型で大きくなっても値段はほぼ同じだし、ルノースポールの「トゥインゴ」「ルーテシア」は250/299万円と、内容を考えればバーゲンプライスといえる。さらに注目すべきは「プジョー207」だ。10月に実施されたハッチバックのマイナーチェンジで、ベーシックグレードのスタイルを200万円以下にするなどのプライスダウンを断行したのだから。
これまで210万円だった1.4リッター+5段2ペダルMTの「スタイル1.4」を189万円へと10%も値下げするとともに、1.6リッター4段ATの「スタイル1.6」を199万円、中間車種「プレミアム」を219万円で新規導入。上級グレードの「シエロ」も266万円から249万円になっている。逆にスポーティな装いの「フェリーヌ」と5段MT仕様、3ドアに1.6リッターターボと5段MTを搭載した「GT」と「GTi」は消滅した。
スポーツ系モデルを整理することでコストダウンを実現したという見かたもできるが、MT車を欲するようなこだわり派ユーザーは発売直後に購入するケースが目立つから、不満の声は上がらないだろう。それよりも旧型にあたる「206」に存在した200万円以下の車種復活を、よろこぶ人が多いはずである。では価格以外で変わったのはどんな部分なのか。いちばん安いスタイル1.4で横浜周辺をドライブしてチェックした。
改良の目的はコストダウンじゃない
外観ではフロントグリル、ホイールカバー、リアコンビランプがリデザインされた。従来、スタイルとそれ以外で違っていたグリルは、マイチェンを機に統一され、開口部が上級の「308」に近い角型になって、少し落ち着いた顔になった。一方リアコンビランプにはLEDが新採用されており、コストダウンが目的の改良でなかったことがわかる。
インテリアではメーターがブラックから他のグレードと同じホワイトダイヤルになり、スタイルのみマニュアル式となるエアコンのスイッチも一新された。ともに旧型より質感の高い仕上げで、ここでもプライスダウンから予想する状況の逆を行っている。
前席は奥行きのあるインパネと前進したウインドスクリーン、大きなサイドウィンドウのおかげで、開放感が高い。後席の広さはこのクラスの平均レベルだが、身長170cmの自分なら楽に座れる。シートは前後ともフランス車らしい、しっとりした座り心地だ。このあたりは旧型と変わらない。
その空間に身を置いて走り出すと、207スタイルはこの国のコンパクトカーが受け継いできた心地よさを、じわじわと乗り手に届けてきた。
軽快で楽しい走り
1.4リッターエンジンは旧型と共通で、1.6リッターがPSAとBMWの共同開発なのに対し、自社設計となる。88ps/13.6kgmのパワーとトルクは控えめだが、1170kgの車重は旧型と同じであり、低めのギア比を持つおかげもあって、予想以上に軽快に加速する。あとで乗った1.6リッター4段ATより、街なかでの力強さは上だった。
2ペダルMTで気になるシフトアップ時の減速感は、Dレンジでも気にならない。ATに慣れた人でも違和感は抱かないんじゃないだろうか。でもエンジンはレブリミットまでスムーズに吹け上がるから、気がつくとマニュアルモードを選んでパドルを弾き、高回転キープで速さを求めるドライビングになってしまう。走りの楽しさでも1.6リッターATを上まわっているのだ。
サスペンションはそんなにソフトではないけれど、揺れは最小限で、段差のショックをじんわり吸収してくれる。207シリーズではいちばんのネコ足度だ。ノーズの動きは最近のプジョーとしてはおだやかで、しなやかな足と細いタイヤが、しっとりしたコーナリングを演じる。滋味あふれる走りだ。
少し前のフレンチベーシックを想起させるこの世界は、マイナーチェンジ前のモデルも備えていた。でも新型はそれを、20万円以上安く入手できる。先代206のスタイル同様、200万円を切ったことに大きな価値がある。
ちなみにヨーロッパにおける1.4リッター2ペダルMTは1万6450ユーロで、マイナーチェンジ前と同じだ。200万円プジョーの復活は、インポーターの企業努力の賜物であることを覚えておいてほしい。
(文=森口将之/写真=高橋信宏)

森口 将之
モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。ヒストリックカーから自動運転車まで、さらにはモーターサイクルに自転車、公共交通、そして道路と、モビリティーにまつわる全般を分け隔てなく取材し、さまざまなメディアを通して発信する。グッドデザイン賞の審査委員を長年務めている関係もあり、デザインへの造詣も深い。プライベートではフランスおよびフランス車をこよなく愛しており、現在の所有車はルノーの「アヴァンタイム」と「トゥインゴ」。
-
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】 2026.6.3 「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。
-
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】 2026.6.2 かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
NEW
第290回:商用バンで砂漠を行く親子が向かうのは天国か地獄か 『シラート』
2026.6.4読んでますカー、観てますカー失踪した娘を探して親子はモロッコの砂漠へ。砂漠で開催されていたレイブパーティーが最高潮に達した頃、軍隊がやってきて中止させられる。親子が乗るFFの商用バンは次のパーティー会場にたどり着けるのか……。 -
NEW
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(前編)
2026.6.4あの多田哲哉の自動車放談ひさびさに日本市場に戻ってきた、ホンダを代表するSUV「CR-V」。最新世代の仕上がりを、トヨタの車両開発者だった多田哲哉さんはどう評価する? まずは、ワインディングロードを走らせた第一印象から。 -
NEW
第964回:フィアットグッズのコレクターから学ぶ人生訓
2026.6.4マッキナ あらモーダ!イタリア在住の大矢アキオが、トリノで著名なフィアットグッズのコレクターを取材。若き日の苦労を経て大成した人物が語る、人生で大切なものとは? フィアットやイタリアの歴史を物語る、貴重なコレクションの数々とともに紹介する。 -
NEW
気づけばすでに4モデル スバルのBEV戦略と水平対向エンジンの未来を考える
2026.6.4デイリーコラム「ソルテラ」に続き、「トレイルシーカー」「アンチャーテッド」「ゲッタウェイ」と、いつの間にか4モデルが顔をそろえたスバルのBEV。伝統的な水平対向エンジンやシンメトリカルAWDはこの先どうなるのか? スバルの未来戦略を探る。 -
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。






























