MINIクーパー・コンバーチブル(FF/6AT)【試乗記】
晴れたらいいね 2009.05.07 試乗記 MINIクーパー・コンバーチブル(FF/6AT)……420万2000円
外観からは大きな変化がないように思える新型「MINIコンバーチブル」。けれども、見えないところが、先代から確実に進化しているのだった。
すっきり、もっこり
これからオープンカーの時代が来るかもしれない、と思ったのはちょうど去年の今頃、マラソンランナーの谷川真理さんにインタビューをした時のことだ。そうです、東京国際女子マラソンやパリマラソンで優勝した、あの谷川真理さんです。20年以上、毎日のように皇居のまわりを走っている谷川さんは、「東京の空は、はっきりときれいになっています」と断言なさったのだ。
20年前は皇居周回コースを4、5周した後で鼻をかむと、ティッシュがまっ黒になった。けれども、今はそんなことはないという。のほほんと暮らしていると実感できないけれど、排ガス対策は効果を発揮しているようだ。
てなことを思い出しながら、「Always Open」という謳い文句とともにニッポン上陸した「MINIクーパー・コンバーチブル」の電動幌を開ける。スイッチ操作ひとつで屋根が開き、所要時間は約15秒。ちなみに、時速30km以下なら走行中でも開閉可能だ。新しいMINIのコンバーチブル(以下、ミニコンと略す)のトップレス姿は、先代ミニコンより少しすっきりした。ロールオーバー・バーが後席の後ろに格納されるようになって、余計なでっぱりがなくなったからだ。
折りたたまれた幌がもっこり盛り上がっているのは先代と同じで、ルームミラー越しの後方視界の邪魔をしていることには変わりない。とはいえ、子どもみたいな感想で恐縮ですがオープンカーはいい。太陽の光と巻き込む風を浴びると、そうした自然の力に負けまいと体がガンバるせいか、体内からエネルギーが湧いてくる(ような気がする)。そしてミニコンというクルマ自体にも、人を元気にさせるキャラクターがあると思った。
クルマのキャラに合ったエンジン
まず、BMWとプジョーがタッグを組んで開発した1.6リッターの直列4気筒エンジンのダイレクト感がいい。どんな場面でアクセルを踏んでもグイッとトルクが盛り上がり、いかにも効率のよさそうな6段ATの助けもあってすばしっこく走る。
「BMW 116i」に積まれるビーエム独自開発の1.6リッター直4に比べると、ミニコンの1.6リッター直4は高回転域での伸びや音の洗練度合いで劣る。一方で、アクセルを踏んだ瞬間にパンとダッシュするパンチ力があるから、小さいながらも生意気に走るというミニコンのキャラに合ったエンジンだ。
このエンジンにターボを組み合わせたクーパーSコンバーチブルもラインナップされる。けれども個人的には、太陽と風をキモチよく感じながら走るコンバーチブルにこれ以上の速さは不要だと思う。6ATモデル同士で比べると、クーパー・コンバーチブルとクーパーSコンバーチブルの価格差は40万円。自分だったら、この差額をオプション装備とか夏の自動車旅行とか、オープンカー用のジャケットや帽子などに充てたい。
路面からの突き上げをガッツンガッツン感じた先代と比べれば、乗り心地はかなり改善された。とはいえ、ミニコンはお世辞にも乗り心地がいいクルマだとは言えない。路面の凸凹を正直に拾って、それをコツコツとドライバーに伝える。特に後席に座った時に感じるショックは、かなりダイレクトなもの。
けれども、これは小気味よいハンドリングとのトレードオフ。交差点とか高速での車線変更といった“普段使い”でもキュッと向きを変える敏捷さを思えば、乗り心地は十分に許容範囲内だ。とにかくアクセルペダルやステアリングホイールから伝わる感触は生き生きとしていて、運転していると少し体温が上がるような気がするのが新型ミニコンだ。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
時流に合った着実な進化
幌を閉じた状態も試してみた。黒い幌に覆われると車内はかなり狭苦しく感じるけれど、この"隠れ家"感が好きだという人もいるかと思う。自分もそのひとり。こういうの、嫌いじゃない。ただし、後席はかなり閉塞感があるから、乗り心地の件とあわせて完璧な4シーターというよりも、2+2ぐらいに考えたほうがいいと存じます。
幌を少しだけ開けてサンルーフのように使うことができる仕組みは、先代から受け継いでいる。せっかくのオープンカーにサンルーフを付けるなんて、ゴジラ松井に送りバントをさせるみたいだと思っていたけれど、実際に使ってみるとかなり便利。特に高速道路では適度に空気と陽光が入ってきて、なかなか快適だ。松井はバントもうまかった。このスライディングルーフ機構は時速120km以下なら作動する。
短時間の試乗だったので燃費を計測することはできなかったけれど、10・15モードでは14.6km/リッター。ちょっと前に300kmほどミニコンで走ったことがあって、高速道路を主体にかなり飛ばしたけれど、それでもモード燃費に近い14km/リッター走った。動力性能と燃費性能のバランス点は高い。ミニコンの直4エンジンに備わるハイテク(可変バルブリフトコントロールとカムシャフトコントロール)が効果を発揮しているのだろう。パッと見た感じでは先代と大差ないし、基本的なコンセプトに大きな変化はない新型ミニコンであるけれど、見えないところが着実に進化しているのは間違いない。
燃費について考えたのも、4月下旬だというのに半袖でも暑いぐらいだったからだ。冒頭で紹介した谷川真理さんも、「東京の空気はきれいになっているけれど、確実に温度は上がっている」とおっしゃっていた。ランナーほどじゃないにしろ、オープンカー乗りも気候の変化に敏感になるんじゃないでしょうか。炭坑のカナリアというか。プリウスやインサイトとは全然違う意味合いだけれど、オープンカーもある種のエコカーなのかもしれない、てなことを考えた。
(文=サトータケシ/写真=荒川正幸)
拡大 |
拡大 |
拡大 |

サトータケシ
ライター/エディター。2022年12月時点での愛車は2010年型の「シトロエンC6」。最近、ちょいちょいお金がかかるようになったのが悩みのタネ。いまほしいクルマは「スズキ・ジムニー」と「ルノー・トゥインゴS」。でも2台持ちする甲斐性はなし。残念……。
-
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】 2026.3.14 英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。
-
プジョーE-3008 GTアルカンターラパッケージ(FWD)【試乗記】 2026.3.11 「プジョー3008」の電気自動車版、その名も「E-3008」が日本に上陸。新しいプラットフォームに未来感あふれるボディーをかぶせた意欲作だが、その乗り味はこれまでのプジョーとは明らかに違う。ステランティスのような大所帯で個性を発揮するのは大変だ。
-
ジープ・アベンジャー アップランド4xeハイブリッド スタイルパック装着車(4WD/6AT)【試乗記】 2026.3.10 「ジープ・アベンジャー」のラインナップに、待望の「4xeハイブリッド」が登場。既存の電気自動車バージョンから、パワートレインもリアの足まわりも置き換えられたハイブリッド四駆の新顔は、悪路でもジープの名に恥じないタフネスを披露してくれた。
-
三菱デリカD:5 P(4WD/8AT)【試乗記】 2026.3.9 デビュー19年目を迎えた三菱のオフロードミニバン「デリカD:5」がまたもマイナーチェンジを敢行。お化粧直しに加えて機能装備も強化し、次の10年を見据えた(?)基礎体力の底上げを図っている。スノードライブを目的に冬の信州を目指した。
-
ホンダCB1000F SE(6MT)【レビュー】 2026.3.7 ホンダから満を持して登場した、リッタークラスの4気筒マシン「CB1000F」。往年のCBをほうふつさせるスタイルと、モダンなパフォーマンスを併せ持つネイキッドスポーツは、先行するライバルを追い落とすことができるのか? ホンダ渾身(こんしん)の一台の実力に触れた。
-
NEW
トヨタRAV4 Z(4WD/CVT)RAV4アドベンチャー(4WD/CVT)【試乗記】
2026.3.17試乗記「トヨタRAV4」が6代目へと進化。パワートレインやシャシーの進化を図ったほか、新たな開発環境を採用してクルマづくりのあり方から変えようとした意欲作である。ハイブリッドの「Z」と「アドベンチャー」を試す。 -
NEW
クルマの内装から「物理スイッチ」が消えてタッチパネルばかりになるのはどうしてか?
2026.3.17あの多田哲哉のクルマQ&A近年、多くのクルマの車内では、物理的なスイッチが電気式のタッチパネルに置き換えられている。それはなぜなのか? トヨタでさまざまなクルマを開発してきた多田哲哉さんに理由を聞いた。 -
いまこそ、かき回したい! 新車で買えるおすすめMT車はこれだ!
2026.3.16デイリーコラム改良型「トヨタ・ヤリス」に、新たに6段MTモデルが設定された。現実的にMT車はレアであり、消滅する可能性もある時代だが……。これを機に、いま新車で買えるMT車のなかで、特におすすめできるモデルをピックアップしてみよう。 -
第331回:デカいぞ「ルークス」
2026.3.16カーマニア人間国宝への道清水草一の話題の連載。首都高で新型「日産ルークス」の自然吸気モデルに試乗した。今、新車で購入される軽ハイトワゴンの8割はターボじゃないほうだと聞く。同じターボなしの愛車「ダイハツ・タント」と比較しつつ、カーマニア目線でチェックした。 -
ポルシェ・タイカンGTS(後編)
2026.3.15思考するドライバー 山野哲也の“目”レーシングドライバー山野哲也が「ポルシェ・タイカン」に試乗。後編ではコーナリングマシンとしての評価を聞く。山野は最新の「GTS」に、普通のクルマとはだいぶ違う特性を感じているようだ。 -
アストンマーティン・ヴァンキッシュ ヴォランテ(FR/8AT)【試乗記】
2026.3.14試乗記英国の名門、アストンマーティンの旗艦車種「ヴァンキッシュ」に、待望の「ヴォランテ」が登場。5.2リッターV12エンジンを搭載した最上級コンバーチブルは、妥協のないパフォーマンスと爽快なオープンエアのドライブ体験を、完璧に両立した一台となっていた。

































