シトロエンC5 2.0(FF/4AT)【試乗記】
ワザありのアシまわり 2009.01.22 試乗記 シトロエンC5 2.0(FF/4AT)……401万6250円
シトロエンのミドル級セダン、「C5」。見た目以上に独特だという乗り心地は、はたして“買い”なのか。2リッターのエントリーグレードで試した。
“アイロン掛け”の走り
シトロエンと聞いて、風変わりで特殊なクルマという、一般のクルマとどこかが違うものを想像する人は多いかも知れない。
新型「C5」も、リアウィンドウが逆反りしていたり、ステアリングホイールのセンターパッドが固定されていたりと、意表をつくところがないわけでもない。しかし、現代のシトロエンは、少なくとも外観のデザインにおいてはマトモであり、新奇なものは期待できないかもしれない。
それでもガッカリすることはない。シトロエンのシトロエンたる所以は、その走行性の素晴らしさにあるからだ。何の予備知識もなしに走らせてみても、一般の多くのクルマとの違いは歴然。それは、「路面との隔絶感」。車体が道の上をスーっと水平移動する感覚は、シトロエン独自の個性だ。
4本のタイヤが路面をトレースして上下動する際、お互いが関連して動くような一般車の走行感覚に対して、シトロエンの油圧サスは四輪それぞれのポジションで独立して、車体の水平を保とうとしているかのようだ。あくまでも、ボディが水平であることが最優先される。まるで路面の皺をアイロン掛けしながら進むような、そんな感覚。それは、たとえ直進していても曲がっているときでも同じだ。
シトロエンの、オイルと窒素ガスがもたらす乗り味と似たような乗り物を挙げるとするなら、ホバークラフトかもしれない。
乗り心地は歴代最上
シャシー剛性の高さも、新型C5の長所として挙げられる。一昔前、「エグザンティア」のころは、上下動に関しては完璧であっても、目地段ハーシュネスなど前後のショックはやや苦手だった。しかし、「プジョー」と会社がひとつになったおかげで「407」とのパーツ共有化もなされ、サスペンション取り付け部などのブッシュ類もチューンが進んだ。今や乗り心地に関しては、歴代最上のシトロエンと言える。
旧型「C5」との違いはスフィアの数が増えたことだ。エグザンティアからC5に代わった時点では、「スフィアを小型化して数も減らし、レスポンスを上げて効率化した……」云々の説明があったけれども、考え方として逆行していた。
ふんわりしたあの独特の乗り味はバネレートの低さから得られるもの。油圧サスの場合にも容量を増やせばソフトになるし、硬くしたければオイルラインのオリフィスを閉じればいいわけで、固める方向にはいくらでも応じられる。今回のモデルチェンジでは、クルマの進化は正しい方向に戻ったというわけだ。
ところで、新しい「C5」はボディサイズも大きくなった。このボディを運ぶエンジンには3リッターV6が適していると思われがちだが、今回の試乗車である2リッター4気筒もなかなか捨てがたい。なぜPSA手持ちの2.2リッターを使わないのかという疑問はあるにせよ、税制上も有利な2リッターで何の不満があるものか。最後に検証してみよう。
使い切る悦びがある
ATはお馴染みの「AL4」の改良型。今や、4段では数の上では時代遅れと思われるかもしれないが、C5の2リッターモデルを試すと、根本に立ち返って考え直してみようというメッセージが伝わってくる。
変速機は、文字どおり自動車の変速を司る。このクルマの場合、1速は発進用、2速と3速は加速用、4速は航続用であり、その繋がりはエンジンの回転数でまかなう。
では7段や8段もあるギアボックスは無用かといえば、加速を滑らかに繋げるためには有効である。しかし、その場合にはエンジン回転の上げ下げ幅は少なく、エンジンを楽しむ領域は狭められる。たとえば、減速する時には1段位落としても、ほとんどエンジンブレーキが効かない。ふだん200km/まで使用するとか、幅広い速度域で乗れる環境ならばそれなりの利用価値もあるが、せいぜい最高速度130km/h程度の日本の路上では、有効利用できない領域が多くなる。
決して最新のテクノロジーにケチをつけるつもりはないが、エンジンはエンジンらしく回転を上下させる楽しみがある。2速ギアの強烈で伸びやかな加速フィールや、トップギアからひとつギアを落とした時のエンジンブレーキの効きのよさなど、節度ある加減速のフィールを楽しむには4段で何の不満もない。
ドライビング本来の楽しみを味わうには、このC5の2リッターユニット+4ATは、むしろクルマの持てる能力を使い切る悦びがある。そして巡航に移れば排気量なりの省燃費が期待できるというのも、時代に合った長所と言えるだろう。
(文=笹目二朗/写真=菊池貴之)

笹目 二朗
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