ボルボXC90 3.2 AWD/S60 T6 AWD R-DESIGN/XC70 オーシャンレース・エディション【試乗記】
“ボルボ革命”の現場を見た!(後編) 2012.12.05 試乗記 ボルボXC90 3.2 AWD(4WD/6AT)/S60 T6 AWD R-DESIGN(4WD/6AT)/XC70 オーシャンレース・エディション(4WD/6AT)……694万5000円/648万7000円/677万5000円
秋の終わりの裏磐梯で、最新ボルボに試乗。計6台を乗り比べて、筆者の出した結論は?
年輪を重ねた重厚モデル
(前編からのつづき)
ボルボ試乗会の2日目は、前日の雨も上がって気持ちのいい晴天となった。まず試乗したのは、「XC90 3.2 AWD」である。いちばん大きなボルボで、現行ラインナップの中ではいちばん古いモデルでもある。発表されたのは、10年前の2002年なのだ。
乗ってみると、すぐに新世代との違いを発見する。まず、スタートボタンがない! 前日乗った3台はすべて同じ場所にボタンがあったので、機械的に同じ動作をしてしまった。キーシリンダーを見つけて、無事エンジンを始動する。ダッシュボードの様子もずいぶん違う。何より、フリーフローティングセンタースタックではないことに面食らった。シフトセレクターのヘッドも透明ではない。ライトな感覚のインテリアに慣れたせいか、もっさりした形がゾウっぽく見えてしまった。フリーフローティングセンタースタックが登場したのは2004年のことだったが、今やボルボらしさの重要なアイテムとなった感がある。
「V60」や「XC60」が都会的なオシャレ坊やなら、XC90は年輪を重ねた堂々たる体格のおやじのようだ。全幅は1.9メーター超で車重は2トンを優に上回る超ヘビー級なので、3.2リッターエンジンをもってしても軽快に走るというわけにはいかない。そもそも飛ばそうなどとは思わせないクルマなのだ。エンジンは着実にゆったりと回転を上げ、必要以上の加速を促すことはない。懐かしい感覚である。以前のボルボは、そういうクルマだったのだ。
“反逆の青”が似合うチューンドカー
3台目なので慣れてしまったのか、レーベル・ブルーの「S60 T6 AWD R-DESIGN」にはもはや違和感はなかった。というより、このクルマにこそ似合うカラーなのだろうか。S60はV60のセダン版だから、これも最新モデルということになる。試乗車は、ラインナップ中の最上位である直列6気筒エンジンと4WD を備えたモデルだ。この6気筒はXC90に搭載されていたものとは違い、3リッターターボで304psというハイパワーエンジンである。
しかも、このクルマはさらにチューニングが施されていた。「ポールスター・パフォーマンス・パッケージ」を適用してあったのだ。ボルボのレース活動のオフィシャルパートナーであるポールスター社が開発したソフトウエアを導入することで、プラス25psのパワーを得ている。T6エンジン搭載モデルが対象になっていて、価格は20万円だ。このクルマにはそもそも599万円というプライスタグがついていて、これを加えると大きなXC90とさほど変わらなくなる。ポールスターの青いバッジが付くのだが、ボディーカラーがレーベル・ブルーだとまったく目立たないのが寂しい。
乗ってみれば、やはりごきげんなクルマだった。SUVから乗り換えたこともあって、軽快な動きにほれぼれとする。しかし、スペックをよく見ると、車重は1770kgもあった。軽快に感じられたのは、この気持ちのいいエンジンのおかげだろう。ノーマル車と乗り比べたわけではないから、ポールスター社によるチューニングがどれほど効果があったのかはわからない。もともとT6は素性のいいエンジンだから、どこまでも回転が上がっていきそうな感覚を存分に味わい、しばらく山道を走り回った。
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|
精悍な顔つきの実用車
最後に乗ったのは、「ボルボXC70 T6 AWD」である。このクルマで、東京まで戻ることになる。現在このモデルはT6 AWDのワングレードのみが販売されている。ただし、試乗車は特別限定車の「オーシャンレース・エディション」だ。これはボルボがオーガナイズする世界最大のヨットレース開催を記念するもので、レースが開催された時だけの限定モデルとなる。前回の2008年にも、限定車が発売されていた。
ボディーカラーは専用色の「オーシャンブルーメタリックII」だ。専用エンブレムが付くのはもちろん、シートやフロアマットなどにもロゴが入っている。ラゲッジカバーにも誇らしげにOCEAN RACEの文字が入れられ、ストラップはヨットをイメージしたロープ仕様だ。地球を1周半する過酷なレースを主催するのは誇りであり、欧米では実際ブランドイメージの向上に大きく貢献している。日本ではヨットレースがメジャーではないので、敏感に反応する人が少ないのが残念なところだ。
XC70 は、2007年にV70と同時にモデルチェンジされた。1996年に「クロスカントリー」の名でV70のオフロード性能強化版として誕生し、その後「V70XC」と呼ばれたこともあったが、現在は「XC90」「XC60」とXCシリーズを形作っている。タフでハードな悪路走破力を誇る本格的オフローダーではなく、活動範囲を広げることのできる便利な実用車という位置づけだ。
最低地上高はV70と比べて45mm高い190mmとなっている。それだけでも印象が変わるのだが、バンパー、フェンダーなどに樹脂製のプロテクターが付加されているために精悍(せいかん)さが増している。遠くまで走りますよと言わんばかりの風情を漂わせる。
最後に乗ったモデルが“ベストボルボ”!?
1920kgという車重だが、T6エンジンは強力にパワーを供給する。もちろんS60のような軽快さは望めないが、磐梯吾妻スカイラインを楽しみながら走ることができた。紅葉の盛りでビューポイントの近くに路駐するマナーの悪い観光客が散見されたが、狭い道でのすれ違いでも運転席からの見切りがいいのは助かった。ファミリーでの遠出にふさわしいモデルだろう。十分なパワーがあり、運転も楽しめる。後席には余裕があって、くつろぎのスペースになる。荷室にはラフに荷物や土産物を積み込んでいい。
とはいうものの、電子制御サスペンションの「FOUR-C」で「SPORT」や「ADVANCED」を選ぶと、後席では快適な乗り心地とはいえなかった。「CONFORT」にすればある程度は解決するのだが、ドライバーとしては「SPORT」を選びたい。悩ましいところだ。
高速道路では、ACC(アダプティブクルーズコントロール)を試してみた。試乗車には「セーフティー・パッケージ」のオプションが付けられており、「ヒューマン・セーフティー」などとともにACCが備えられていたのだ。カメラとミリ波レーダーで常に前方の道路状況をモニターすることによって、さまざまな制御を可能にしている。
ACCは走行速度と前車との最低時間差を設定することで、自動的にエンジンとブレーキを操作して走行するシステムだ。ステアリングホイールに備えられたスイッチで操作する。これが実によくできているのだ。前方にクルマがなければ勝手に加速していくし、クルマが現れれば一定の間隔を保って追従する。加速と減速の切り替えがスムーズで、とても上手な運転だ。渋滞が始まれば、ちゃんと停止してくれる。ドライバーはハンドルだけ操作していればいい。しかも、うっかり左右に寄ってしまっても「レーンデパーチャーウォーニング」が働いて音で警告してくれるのだ。
早朝からの長時間の試乗だったが、疲労度が少なく帰ることができたのは幸いだった。帰りのクルマがXC70だったのがラッキーである。どの要素も極端に振れすぎない、中庸をわきまえたモデルだ。クルマ単体で高性能を追求するのではなく、乗る人間の快楽が優先されている。今回の試乗は3人のチームで行ったのだが、帰着した時には全員の意見が一致していた。ベストボルボは、このXC70であると。
……しかし、本当はボルボ車すべてに通ずる快適さを、XC70に投影していただけなのかもしれない。最後に乗ったモデルがどれであっても、それをベストボルボだと感じたに違いないのだ。
(文=鈴木真人/写真=郡大二郎)
拡大
|
拡大
|
拡大
|
拡大
|

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
-
ホンダCR-V e:HEV RSブラックエディション(4WD)【試乗記】 2026.6.1 「ホンダCR-V」がフルモデルチェンジ。新型は適切なボディーサイズと高品質な内外装を持ち、乗れば最新のホンダ車らしい気持ちよさが味わえる。ただし、その月販目標は400台。ちょっと弱気ではあるものの、周辺事情にも考えを巡らせると極めて妥当な数字にも思えてくる。
-
トヨタRAV4 GRスポーツ(4WD/CVT)【試乗記】 2026.5.30 新型「トヨタRAV4」のプラグインハイブリッド車ではEV走行換算距離が約150kmにまで到達。もちろん電池容量の拡大によるところも大きいが、何よりも最新のハイブリッドシステムによる効率向上が効いている。「GRスポーツ」をドライブした印象をリポートする。
-
キャデラック・リリックV(4WD)【試乗記】 2026.5.29 キャデラック初の電気自動車(BEV)「リリック」に、最高出力646PSのハイパフォーマンスモデル「リリックV」が登場。“ブランド史上最速”をうたう豪速SUVだが、実際に乗ってみると、高い動力性能がもたらすゆとりや心地よさにも魅力を感じる一台となっていた。
-
DS N°8エトワールAWD(4WD)【試乗記】 2026.5.28 前衛を身上とするフランスのラグジュアリーブランド、DSオートモビルから、新たなハイエンドモデル「DS N°8(ナンバーエイト)」が登場。当代屈指の性能を誇る電気自動車であり、かの地では大統領専用車にも選ばれる一台の、独創の魅力に触れた。
-
メルセデスAMG GLC53 4MATIC+(4WD/9AT)【海外試乗記】 2026.5.27 「メルセデス・ベンツGLC」にスポーティーな「メルセデスAMG GLC53 4MATIC+」が仲間入り。「43」と「63」の中間、AMGとしては松竹梅の竹にあたるモデルだが、今後はそのポジションの重要性がさらに増すことになるという。本国ドイツでドライブした印象をリポートする。
-
NEW
レクサスES350h(FF/CVT)/ES350e(FWD)/ES500e(4WD)【海外試乗記】
2026.6.3試乗記「レクサスES」がフルモデルチェンジ。シャシーがFFベースというのは歴代モデルと同じだが、新型ではボディーサイズがググッと拡大。「LS」の6輪ミニバンコンセプトが登場したこともあり、今後のレクサスセダンの総代を担うことになる。北米で乗った印象をリポートする。 -
NEW
ミドシップ化で運動性能はどう変わる? 「GRヤリスMコンセプト」の現時点での完成度を体感
2026.6.3デイリーコラム「GRヤリス」をベースとしたミドシップ4WDとして市販化を目指す「GRヤリスMコンセプト」。現在もスーパー耐久に投入されるなどして鍛えられているが、その開発車両をドライブできた。普通のGRヤリスとの運動性能の違いや、新開発エンジンの印象などをリポートする。 -
NEW
第115回:メイク・アメリカ・グレート・アゲイン!(後編) ―デザインもサイズも規格外! 魅惑のアメリカ車はなぜ“主役”になれないのか?―
2026.6.3カーデザイン曼荼羅トヨタ&ホンダが発表した、米国生産車の日本導入計画。しかしアメリカには、規格外に面白いクルマがまだたくさんあるのだ! カーデザインの識者とともに魅惑の日本“未”導入車を探すとともに、魅力的なアメリカ車が、それでも主役になれない理由を考えた。 -
どうしてピアノブラックの内装材は多用されるのか?
2026.6.2あの多田哲哉のクルマQ&Aよく目にするピアノブラックの内装材は、「キズや脂汚れが目立つ」などネガティブな評価もしばしば。それでも多用されているのはなぜか? 車両開発者の多田哲哉さんに聞いてみた。 -
BSAゴールドスター650(5MT)【レビュー】
2026.6.2試乗記かつて一世を風靡(ふうび)した英国の名門、BSAが復活! 新生第1号モデルである「ゴールドスター650」は、クラシックで優雅なお散歩バイク……と思いきや、ツインカムの大排気量シングルで、ライディングも前のめりに楽しめるマシンに仕上がっていた。 -
レストモッドがイメージ 特別なオニツカタイガーの魅力に迫る
2026.6.1オニツカタイガーの新作ドライビングシューズを知る<AD>オニツカタイガーが、“レストモッド”と呼ばれるクルマのレストア&カスタム手法に着想を得たドライビングシューズを発表。4タイプ製作された、「MEXICO 66 DRIVING」のスペシャルバージョンの魅力に迫る。





























