ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)【海外試乗記(前編)】
洗練された軽量ロケット(前編) 2008.06.09 試乗記 ロータス・エリーゼSC(MR/6MT)軽量コンパクトな「エリーゼ」が、過給機でパワーアップ。
名だたるスーパーカーに肩を並べるという実力を、本国イギリスで試した。
『CG』2008年5月号から転載。
スーパースポーツモデル並み
現代におけるライトウェイト・スポーツカーの代名詞、ロータス・エリーゼにスーパーチャージャー付きモデルが加わった。昨年の東京モーターショーで初公開されたこのロータス・エリーゼSC(=SuperCharger)は、車重わずか870kgに最高出力220psの過給機エンジンを組み合わせるという過激なスペック。エリーゼの軽量なアルミ接着構造シャシーに乗せれば、136psのNAエンジンだって充分に速さを見せるというのに。このエリーゼSCの世界観とはいかなるものか、その答えを求めて英国はノーウィッチ・ヘセルにあるロータス本社を訪ねた。
エリーゼSCを簡単に表現すると、トヨタ製1.8リッター直4ユニット(2ZZ型)を積むエリーゼRの過給機付きバージョンだ。スーパーチャージド2ZZを背負うエキシージSのエリーゼ版であると言わない理由は、厳密には同じエンジンではないためである。少々細かい話になるが2車では過給機が異なっており、エリーゼSCのそれはエキシージSよりひと回り小さなイートン製ローターパックを使って、マグナソンが製造するものだ(ロータス・エンジニアリングとの共同開発品)。双方ともに特性そのものはほぼ変わらないとのことだが、エキシージSのエンジンスペック(221ps/7800rpm、22mkg/5500rpm)とほぼ同じ220ps/8000rpmと21.6mkg/6800rpmを実現しつつ、インタークーラーを省略していることがエリーゼSCユニットの大きな特徴で、このため8kgも軽量に仕上がったほか、エンジンフードが盛り上がって後方視界を阻害するという欠点も回避できている。
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見た目で判断するべからず
パワフルなモデルになると「いかにも」という派手なエクステリア・デザインや“パワーバルジ”を持つことが多いなか、このエリーゼSCの場合は、外観の印象はベーシックなエリーゼSとほとんど変わらない。控えめなリアスポイラーが備わることと、新デザインのアルミホイールが与えられていること、そしてテールパイプがセンター出しのシングルであることが、識別点になる。タイアに関しても、フロント175/55R16:リア225/45R17と、全エリーゼ・ラインナップ共通サイズのままを履く。
ロータスが公表しているエリーゼSCの各種タイムは、0-100km/h加速が4.6秒、そして0-160km/hは10.7秒、最高速度は241km/hに達している。CG巻末のテストデータを繰って“机上の空論対決”をするならば、0-100km/h 4.6秒と言えば、ムルシエラゴLP640やフェラーリF430、ポルシェ911GT3の世界だ。しかもエリーゼSCの車重は870kg(オプション未装着時、本国仕様)で過給機ユニットならではの豊かな低中速トルクがあり、タイアは専用スペックのヨコハマ・アドバン・ネオバAD07 LTS。ストレートで追いつけなければブレーキングやコーナーで差を詰めるのはもっと困難な話かもしれない。
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強烈なロケットダッシュ
スペックシートを見て予習しただけでも、これから試乗する車が、間違いなくロードカーでトップクラスの動力性能を持つものだということが嫌と言うほど分かる。見慣れたいつものエリーゼの狭いドアを、いつもよりも断然に緊張してくぐり抜け、シートに収まる。キー一体型へ進化したドアロック/イモビライザー解除ボタンを押し(これまでは別体でキーホルダーにぶら下がっていた)、エンジンスターター・ボタンに手を伸ばす。クラッチペダルの踏力は軽いとは言えないまでも、決して重い部類ではなく、エリーゼSと感覚的にはさほど変わらない。暖機をしている時点では、過激な素性を窺わせる空気感は漂ってこない。
スロットルペダルのストロークは非常に長いため、不本意にパワーが湧出することもなく、街中を移動している限りでは太い低中速トルクによる安楽なドライブが提供された。それは乗り心地も含めての安楽である、と付け加えると驚く人も多いだろう。パワフルなモデルには、それに見合った硬いアシが与えられるという一般法則は、エリーゼには当てはまらない。ダンピングは強力だがストロークのフリクション感が皆無で、鋭いショックを乗員に伝えてくることは極めて稀だった。加えて不整路面などの外乱に対しても耐性が高く、道幅が狭く荒れた裏通りであっても、緊張を強いられない。
高速道路に入り、初めて深々と右足を踏み込んだ。突如として背後でスーパーチャージャーの作動音が高まり、遙か彼方の地平線に向かって押し出されるかのような、猛烈な加速が訪れた。(後編につづく)
(文=八木亮祐/写真=ロータス・カーズ)

八木 亮祐
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