クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック
【スペック】 全長×全幅×全高=4915×1855×1435mm/ホイールベース=2845mm/車重=1790kg/駆動方式=4WD/2.8リッターV6DOHC24バルブ(210ps/5500〜6800rpm、28.6kgm/3000〜5000rpm)/価格=628.0万円(テスト車=763.0万円/SEパッケージ=35.0万円/S-lineパッケージ=52.0万円/リアビューカメラ付APS=20.0万円/アダプティブクルーズコントロール=28.0万円)

アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【試乗記】

待ちに待ったベストモデル 2007.09.05 試乗記 生方 聡 アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)
……763.0万円

2007年8月29日に追加発売された「A6 2.8 FSIクワトロ」。バルブリフトシステムを搭載した新型2.8リッターV6FSIモデルの走りを試す。
【webCG】クルマを高く手軽に売りたいですか? 車一括査定サービスのおすすめランキングを紹介!

シェア拡大の切り札

ドイツのアッパーミドルクラス市場では、「メルセデス・ベンツEクラス」や「BMW5シリーズ」と互角に戦う「アウディA6」なのに、「Eクラス」と「5シリーズ」が圧倒的な強さを誇る日本では、そう簡単にシェアを伸ばせないのが悩みのタネ。そんな厳しい現状を打破するために投入されたのが「A6 2.8 FSIクワトロ」である。

これまでA6には、セダン、アバントともに、FFの「2.4」とフルタイム4WDの「3.2 FSIクワトロ」「4.2 FSIクワトロ」の3グレードがあり、エントリーモデルの2.4ならなんとか600.0万円を切る価格がつけられていた。しかし、アウディご自慢のクワトロとなると一気に700.0万円以上に跳ね上がるため、2.4と3.2 FSIクワトロのギャップを埋めるクワトロが待ち望まれていたのだ。

2.8 FSIクワトロはまさにそんなモデルで、価格はセダンが628.0万円、アバントが654.0万円と、3.2 FSIクワトロに比べてなんと88.0万円も安い設定となっている。それでいて、エンジン以外の装備はほぼ同じというのだから、ずいぶん思い切った値付けをしたものだ。アウディのこのモデルにかける意気込みが伝わってくる。

アウディ A6 の中古車webCG中古車検索

アウディ初の可変バルブリフト制御

しかし、2.8 FSIクワトロのハイライトは価格だけではない。搭載される新エンジンにも注目したい。2.8リッターV6直噴ガソリンエンジンは、3.2リッターV6のショートストローク版で、最高出力210ps/5500〜6800rpm、最大トルク28.6kgm/3000〜5000rpmを誇るのだが、アウディとしては初めて可変バルブリフト制御を採用したのが特徴。
「アウディバルブリフトシステム」と呼ばれるこの機構は、部分負荷、すなわち、アクセルペダルをあまり踏み込んでいないときと、全負荷のときとで、吸気バルブのリフト量を切り替えるというもので、シリンダーごとにふたつある吸気バルブは、全負荷ではともに11mm、部分負荷ではひとつが5.7mm、もうひとつが2mm開くようになっている。

それは、「ホンダ・シビックタイプR」などのように、高回転域でさらなるパワーを絞り出すためではなく、部分負荷時の燃費を向上させるのが目的である。一般的なガソリンエンジンでは、部分負荷時はエンジンに取り込む空気の量を制御する“スロットルバルブ”を絞って吸気量を減らしているが、この状態は燃費に悪影響を及ぼす“ポンピングロス”が大きい。そこで、アウディはスロットルバルブをあまり絞らないかわりに、吸気バルブのリフト量を小さくして空気の量を調整し、ポンピングロスを少なくする作戦に出た。そういった意味では、BMWのバルブトロニックやトヨタのバルブマチックの発想に似ている。


アウディA6 2.8 FSIクワトロ(4WD/6AT)【試乗記】の画像 拡大
2.8 V6FSIクワトロには、新しいバルブコントロールシステム「アウディバルブリフトシステム」が搭載される。
2.8 V6FSIクワトロには、新しいバルブコントロールシステム「アウディバルブリフトシステム」が搭載される。 拡大

A6の主力になること間違いなし!

難しい話はこれくらいにして、さっそく新エンジンを搭載したA6 2.8 FSIクワトロを試すことにしよう。都心で開かれた試乗会でステアリングを握ったのは、セダンモデルで、オプションの“S-lineパッケージ”や“SEパッケージ”などが奢られた豪華仕様だ。

アクセルペダルに軽く足を載せると、クルマはスムーズに走り出した。力強い感じこそないものの1.8トン弱のボディを前に押しやるには十分なトルクだ。若干低められた最終減速比が貢献しているのだろう、3.2 FSIクワトロと比べても遜色はない。低回転域でエンジンそのものがスムーズなのもうれしい点。2500rpm以下で街なかを走るような場面では、エンジンのレスポンスのよさも手伝って、とても扱いやすい。

アクセルを深く踏み込み、エンジン回転が上がっていくと、3000rpmあたりからトルクの盛り上がりを見せ、そこからは心地よいサウンドを奏でながらレブリミットを目指す。ふたつのバルブリフトは、アクセルペダルの踏み具合や走行状況などにより、700〜4000rpmの間で切り替わるはずだが、いつ切り替わったかはわからず、それにより急激にトルクが変化することもない。

最高出力は210psと控えめな数字だが、体感上は数字以上にスポーティな印象で、高速で追い越しをかけるような場面でも、ストレスを感じることはなかった。上を見ればキリがないが、2.8リッターで十分と思わせる性能の持ち主であるのは確かなようだ。

S-lineパッケージ装着車ということで、標準より1インチ大きい245/40R18サイズのタイヤとスポーツサスペンションが付くぶん、舗装の悪い場所ではドタバタした乗り心地を示すものの、スピードが上がればそれも気にならなくなる。個人的にはオプション価格52.0万円のエクストラを払って、せっかくの快適さを失うのはどうかと思うが、それはともかく、今回の試乗でA6 2.8 FSIクワトロがA6のラインナップのなかでベストなチョイスだと確信した私。アウディならやっぱりクワトロがほしいという人にとっては、実にうれしい選択肢となるに違いない。

(文=生方聡/写真=荒川正幸)

生方 聡

生方 聡

モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。

試乗記の新着記事
  • 日産エクストレイルNISMOアドバンストパッケージe-4ORCE(4WD)【試乗記】 2025.12.3 「日産エクストレイル」に追加設定された「NISMO」は、専用のアイテムでコーディネートしたスポーティーな内外装と、レース由来の技術を用いて磨きをかけたホットな走りがセリングポイント。モータースポーツ直系ブランドが手がけた走りの印象を報告する。
  • アウディA6アバントe-tronパフォーマンス(RWD)【試乗記】 2025.12.2 「アウディA6アバントe-tron」は最新の電気自動車専用プラットフォームに大容量の駆動用バッテリーを搭載し、700km超の航続可能距離をうたう新時代のステーションワゴンだ。300km余りをドライブし、最新の充電設備を利用した印象をリポートする。
  • ドゥカティXディアベルV4(6MT)【レビュー】 2025.12.1 ドゥカティから新型クルーザー「XディアベルV4」が登場。スーパースポーツ由来のV4エンジンを得たボローニャの“悪魔(DIAVEL)”は、いかなるマシンに仕上がっているのか? スポーティーで優雅でフレンドリーな、多面的な魅力をリポートする。
  • ランボルギーニ・テメラリオ(4WD/8AT)【試乗記】 2025.11.29 「ランボルギーニ・テメラリオ」に試乗。建て付けとしては「ウラカン」の後継ということになるが、アクセルを踏み込んでみれば、そういう枠組みを大きく超えた存在であることが即座に分かる。ランボルギーニが切り開いた未来は、これまで誰も見たことのない世界だ。
  • アルピーヌA110アニバーサリー/A110 GTS/A110 R70【試乗記】 2025.11.27 ライトウェイトスポーツカーの金字塔である「アルピーヌA110」の生産終了が発表された。残された時間が短ければ、台数(生産枠)も少ない。記事を読み終えた方は、金策に走るなり、奥方を説き伏せるなりと、速やかに行動していただければ幸いである。
試乗記の記事をもっとみる
アウディ A6 の中古車webCG中古車検索
関連キーワード
関連サービス(価格.com)
新着記事
新着記事をもっとみる
車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。