アウディA5 3.2FSIクワトロ(4WD/6MT)/S5(4WD/6MT)【海外試乗記】
端正な顔つきのニューモデル 2007.05.26 試乗記 アウディA5 3.2FSIクワトロ(4WD/6MT)/S5(4WD/6MT)2007年のジュネーブショーで発表された新型「A5」。2ドアボディに4シーターを備えたラクシャリークーペに試乗。イタリアから報告する。
久しぶりの4シータークーペ
アウディ「TTクーペ」や「R8」といった2シーター、もしくはそれに準じたモデルを除けば「このところご無沙汰」だったのがアウディのクーペ。
しかし、自らプレミアムカーメーカーを謳うアウディとしては、それではメルセデスやBMWとの対抗上もウマくない、と思ったのかどうか……。とにかく、この期に及んで久々のリリースとなったフル4シーターを備えるクーペが、「A5」とそのスポーティバージョンである「S5」。
ちなみに、このメーカーから“オリジナル・クワトロ”と称される2ドアクーペが初めて世に送り出されたのは、今を遡ること27年も前の1980年のハナシだ。
そんな最新クーペのデザインを手掛けたのは、同社の日本人デザイナーであるワダサトシ氏。だから「同胞のよしみ」という贔屓目でもないが、例によって“シングルフレーム・グリル”をその顔付きとして備えたそんな最新アウディのたたずまいは、流麗かつ端正でなかなか美しい。
しかし、ルックスの裏には、エンジニアリング上の大きな秘密が隠されている。
フロントアクスルのレイアウトに大きな変更を施し、エンジン本体に対する前輪位置を、「A4」や「A6」に対して100mmレベルで前進させているのだ。ホイールベースは、106mm長い2751mmになった。
レイアウト変更の「理由」とは
アウディではこうした駆動系の抜本的なレイアウト変更を行った理由として、「前後重量配分を理想的な50:50に近づけるため」と謳っている。
しかし、4WD=クワトロモデルはともかくとして、駆動輪上にタップリとした荷重をかけてトラクションを確保する事が不可欠なFWDモデルでは、そうした配分が“理想的”であるはずもない。
ただ、個人的には、今回のレイアウト刷新は「前輪位置を前出しし、フロントのオーバーハングを大幅に詰める事で、(メルセデスやBMWにヒケを取らない!)美しいプロポーションを実現させるため」という理由が非常に大きな割合を占めていると読む。
そしてそれは、思い起こせばかれこれ20年近くも前に、ホンダがとった手法と極めて似ている。
「インスパイア」や「ビガー」は、「重量配分の改善」を謳いながら、実は“8等身美人”なるデザインテーマを実現させようとした。フロントアクスルをクランクケース下から取り出した、直列5気筒エンジン縦置き搭載の“フロントミッドシップ”を謳ったものだ。
こうして、アウディ車としては例外的なフロント・ショート・オーバーハング化に成功したA5/S5は、同時に後輪位置も後ろ寄りとしたことで、クーペとしては後席居住性に優れている。
さすがにヘッドスペースはミニマムだが、クッションはホイールハウスの張り出しに蹴られる事もない。前席下への足入れ性に優れる事もあってレッグスペースはかなりの余裕だ。
455リッターという数字が示すようにトランクスペースも広大だが、パワーパックのキャビン側への侵入量は大きいので、フロントシートでのタイト感はこの点で定評(?)あるBMW車並みという印象。
さらにフロント席で気になるのは、右側フロアに、センター、つまりトランスミッション側から大きな膨らみが及んでいること。日本では全仕様が2ペダルとなるであろうA5はともかく、S5が3ペダルで右ハン化されるとなるとABCペダル+フットレストが無理なくレイアウトされるかいささか心配になる。
AT(CVT)が似合う?
イタリアはヴェローナで行なわれた試乗会でテストしたのは「A5 3.2FSIクワトロ」「S5」の2モデル。前者は日本導入時には8段シーケンシャルモード付きのCVT仕様となるようだが、テスト車として用意されたのはS5も含め6段MT仕様に限られた。
0〜100km/h加速5.1秒を謳う、4.2リッターV8を積んだS5の動力性能は、その8気筒サウンドの心地良さも含めてさすがに圧巻。が、それ以外の点ではA5/S5の総合的な走りに関して、良い意味でもそうではない意味でも「さほど大きな驚きはなかった」と報告したい。
そうした印象につながった理由は、どちらのモデルのMTも、その操作フィールが今ひとつなこと。高いセンターコンソール位置のせいで、シフト時に脇が開きがちとなるため、特にスポーティな感触は味わえなかったのが大きい。と同時に、やはりいずれのモデルもクラッチのストロークが大きく、またそのミートポイントも掴みづらかったため、思い通りのスムーズなクラッチワークが得難かったという理由もある。
見方を変えれば、すでにアイドリング付近から極めて太いトルクを発し、「これならば3速ギアでオールマイティだ」とさえ思わせてくれたS5も含め、AT(CVT)とのマッチングのほうが似合っているように思えた。
というわけで、日本導入時にはそうした希望が(自動的に?)叶えられるのではないだろうか。
静粛性、快適性に優れたクーペ
255/35というファットな19インチシューズ(テスト車はダンロップSPスポーツMAXX)を履いたS5は、50km/h付近をピークとしたタイヤ空洞共鳴音がやや耳についたが、それでもA5ともども静粛性は大変優秀な部類。
路面凹凸を拾っての振動は、そんなS5も17インチシューズを履くA5と大差なく、こちらの快適性にも「優秀」の評を与える事ができる。
一方、ハンドリングの印象には特に“感激”も“落胆”もなかったというのが実際のところ。それでも、ターンイン後のアクセルONで「後輪が蹴る感じ」が強いように感じられたのは、40:60というリア・バイアスの掛けられた前後トルク配分の成せる業だろうか。
というわけで、たとえオーバー350psのパワーの持ち主たるS5であっても、ワインディング路をギンギン攻めるというよりは“アウトバーンの王者”を気取る方が似合っていそうなのがこれらのニューモデル。それを気に入るか否かは、まずはこの新世代アウディのプロポーションをお気に召すか否かにかかっていると言えそうだ。
(文=河村康彦/写真=アウディジャパン)

河村 康彦
フリーランサー。大学で機械工学を学び、自動車関連出版社に新卒で入社。老舗の自動車専門誌編集部に在籍するも約3年でフリーランスへと転身し、気がつけばそろそろ40年というキャリアを迎える。日々アップデートされる自動車技術に関して深い造詣と興味を持つ。現在の愛車は2013年式「ポルシェ・ケイマンS」と2008年式「スマート・フォーツー」。2001年から16年以上もの間、ドイツでフォルクスワーゲン・ルポGTIを所有し、欧州での取材の足として10万km以上のマイレージを刻んだ。
-
フィアット500トリノ ハイブリッド(FF/6MT)【試乗記】 2026.10.13 電気自動車からエンジン搭載車へと華麗に変身! 日本では珍しい、4代目「フィアット500」のマイルドハイブリッドモデルに試乗。1リッターの自然吸気エンジンを6段MTで駆るイタリアンコンパクトは、今のクルマが忘れてしまった楽しさに満ちていた。
-
ボルボES90ウルトラ ツインモーター パフォーマンス(4WD)【試乗記】 2026.10.12 ボルボの電気自動車(BEV)「ES90」のトップモデル「ウルトラ ツインモーター パフォーマンス」を駆り、東京から初秋の新潟へ。往復700kmを超えるロングドライブで分かった新型5ドアハッチバックモデルの実力と、BEVで気になる充電環境のリアルな今を報告する。
-
フェラーリ・プロサングエ ハンドリング スペチアーレ仕様(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.10.8 フェラーリの4ドア4シーターモデル「プロサングエ」に、「ハンドリング スペチアーレ」を名乗るスペシャルバージョンが登場。その走りは従来モデルからどのように変わったのか? 跳ね馬の原産国、イタリアで確かめた。
-
トヨタ・ランドクルーザー“FJ”VX(4WD/6AT)【試乗記】 2026.10.7 新たにシリーズに加わった「ランドクルーザー“FJ”」は、ポップな見た目から簡易版のように思われるかもしれないが、その中身は紛れもなく本物であり、道なき道をグイグイと突き進む。これもまた「どこへでも行き、生きて帰ってこられる」を体現する一台である。
-
スバル・レヴォーグ レイバック プレミアムS:HEV EX(4WD/CVT)【試乗記】 2026.10.6 「スバル・レヴォーグ レイバック」にストロングハイブリッド搭載モデルが登場。高効率なパワーユニットが積まれたのはもちろんのこと、既存の純エンジン車とはデザインやボディーサイズも違っているというから興味深い。上位グレードの「プレミアムS:HEV EX」を試す。
-
NEW
三菱eKクロスEV P(FWD)【試乗記】
2026.10.17試乗記三菱の軽乗用電気自動車(EV)「eKクロスEV」が、一部改良でデザインを刷新! 2022年発売の古参の一台は、台頭するライバルをどう迎え撃つのか? 最新モデルと比べても、キラリと光る魅力はあるのか? 軽EVのパイオニアが擁する一台の実力を確かめた。 -
NEW
写真で解説する「フィアット・グランデパンダ」
2026.10.16画像・写真ステランティスが「フィアットブランドの大きな柱のひとつとなる重要なモデル」と位置づける「グランデパンダ」が日本上陸。その具体的な見どころを、写真とともに解説する。 -
NEW
フィアット・グランデパンダ ハイブリッド ラプリマ(FF/6AT)【試乗記】
2026.10.16試乗記欧州を代表するコンパクトカーの一台である「フィアット・パンダ」が第4世代に進化。新たに「グランデパンダ」を名乗り、日本にやってきた。ずばり新型の見どころは車両の随所にちりばめられた初代モデルへのオマージュである。上位グレード「ラプリマ」の仕上がりをリポートする。 -
スズキの未来を徹底検証! 技術戦略説明会から“10年先のスズキの姿”を夢想する
2026.10.16デイリーコラム年間生産500万台で、Dセグメントまでカバーする巨大メーカーに!? スズキが発表した「10年先を見据えた技術戦略2026」を徹底検証。技術開発に製品開発、インドを核としたグローバル戦略などの中身を通して、「10年先のスズキの姿」を予想した。 -
賢い選択 ――キャデラック「LYRIQ」フラットプランのすゝめ――
2026.10.15投資家も太鼓判! 「キャデラック・リリック」×フラットプランという最適解<AD>クルマが変わり、時代も変われば“持ち方”だって変化する? お金のプロである投資家が、「キャデラック・リリック」の残価保証型リースを勧める理由とは? 夢の「2台持ち」をかなえる、最新電気自動車の賢い選び方を考えた。 -
間もなく正式発表 ミツオカの新型2シータースポーツカー「LA1」を予測する
2026.10.15デイリーコラム光岡自動車が2026年11月26日に正式発表を予定しているアメリカンスタイルの新型2シータースポーツカー「LA1」。現在公開されているLA1の画像とティーザーサイトに掲載された情報から、その特徴を分析する。





























