第314回:新型「ジープ・ラングラー」試乗!
つくづくクルマは“クルマじゃなくって道”だ!
2007.03.27
小沢コージの勢いまかせ!
第314回:新型「ジープ・ラングラー」試乗!つくづくクルマは“クルマじゃなくって道”だ!
コイツは新種の生き物か!?
不肖小沢、ふ、不覚にも「ジープ」に乗って、生まれて初めて感動してしまいましたっ!
先日富士山麓で行われた新型ラングラーの試乗会。『webCG』でもビシバシ紹介されてて、ボディが大幅に大きくなってる上に、エンジンが直6からV6になって、さらにラングラー初の4ドアモデルまで登場して大幅に使いやすくなってるんだけどそういう問題じゃないんだよねぇ。
実際に感動したのは、道のほうなんです。
今回クライスラーさんが用意してくれたのは、山麓のテストコース。これがジープの聖地として有名な悪路“ルビコン”を想定してるかはわかんないんだけど、激しいアップダウンアリ〜の、ぬかるみアリ〜の、でこぼこ岩アリ〜の、いわば人もマトモに歩けないような場所。で、モータージャーナリスト生活はや15年以上の俺。悪路走るのはもちろん初めてじゃないけど、ここまで本格的なのは記憶にないようで、単純に感動しちゃったわけよ。
だってこの新型ラングラーの本格悪路仕様「ルビコン」、そこをナメクジよろしく突起物を吸収するようにヌメヌメ登っていっちゃうんだから。唯一、タイヤ両輪が同時にハマっちゃうところは抜けれなかったけど、ホント、クルマっていうより新種の生き物に乗ってるみたいでした。
あと4WDマニアの人には笑われちゃうんだろうけど、ジープってマニュアル車でも全然エンストしないんだよね。驚き。悪路用の一番低いギアを選択しとけば、トルクが太いからブレーキを思いっきりかけてもエンストしない。ホント、ジープ・ラングラーってステキです。
ナイフが良くても、魚がないと……
ってなわけで今回つくづく、ドライビングで大切なのはクルマではなく“道”だと思いましたね。
これは昔からの俺の持論なんだけど、クルマってのは極端な話、レストランにおけるナイフやフォーク、つまり食器のような存在でしかない。もちろんその道具に凝る場合もあるし、良く切れて美しい芸術的ナイフってのもたしかにステキなんだけど、根本はその食器で食べる料理、つまり“道”が大切なのだ。
日本の古典的クルママスコミが昔から「なぜスポーツカーが売れないのか?」とか「なぜセダンが売れないのか?」とか疑問を投げかけてるけど、そんなの当たり前で、だって走るところがないんだもん。スポーツカーで走って楽しいと思える道がないし、そもそもスピードが出せない。セダンに乗ってても「ミニバンよりいい」って思えるところもない。
俺たちがしょっちゅう高級ホテルみたいなところで、セダンのようなフォーマルカーのよさを実感してたり、アウトバーンみたいな道で、セダンの静粛性を日々実感してるんならともかく、これだけ低速で、せいぜい家族や仲間とドライビングすることでしかクルマを楽しめない日本においては、ミニバンばかりが売れるのは当然なのだ。
日本製スポーツカーやセダンのデキが悪いからでもなんともないと、俺は思う。だっていくら良く切れるナイフがあっても、それで食べる肉や魚がなかったらしょうがないじゃない。
硬派モデルも発売
だからマジメな話、これから自動車メーカーや自動車マスコミに求められるのは、原理的には政治ではないかと思う。つまり高速の速度制限を130km/hにすることや、高速道路をタダにすることなどなど。それの実現がクルマを楽しくする。ま、ハッキリいって相当難しいけどさ。
ところで一応新型ラングラーの話をしとくと、そうやって悪路を楽しんで初めて今回の改善の意味がわかりましたね。ボディが30cm近くも長くなって、幅も1.9m弱にまで到達。これで室内が大幅に広くなると同時に、さらにベースにホイールベースを50cm以上も伸ばした4ドアボディを新たに追加。それからエンジンは、4リッター直6が3.8リッターV6になってパワーは逆に24psもアップと。ついでに4WD通に言わせると一部乗用グレードにパワーウィンドウと集中ドアロックが標準装備されたのが驚きらしいです。
つまり、一言で言ってラングラーの歩み寄りですな。いままでストイックすぎたのを改善し、ガンコ爺だけど一般客に笑顔を向けられるようにしたと。
ただ、それと同時にテストコースで俺が乗った「ルビコン」も新発売。コイツは今まで以上のスーパーローギア比のトランスファーを持つヘビーデューティ仕様で、親しみやすくすると同時により硬派にもなっている。
さらに細かくいうとフロントウィンドウが平面から曲面ガラスになったり、フェンダーがボルト留めになって外れやすくなったてり、ちらほらモダン化とマニアック化が同時に進められてる。
ホント、ジープ・ラングラー・ワールドってすごいのね。と思った今日この頃です。
(文と写真=小沢コージ)

小沢 コージ
神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 YouTubeチャンネル『小沢コージのKozziTV』
-
第454回:ヤマダ電機にIKEAも顔負けのクルマ屋? ノルかソルかの新商法「ガリバーWOW!TOWN」 2012.8.27 中古車買い取りのガリバーが新ビジネス「WOW!TOWN」を開始。これは“クルマ選びのテーマパーク”だ!
-
第453回:今後のメルセデスはますますデザインに走る!? 「CLSシューティングブレーク」発表会&新型「Aクラス」欧州試乗! 2012.7.27 小沢コージが、最新のメルセデス・ベンツである「CLSシューティングブレーク」と新型「Aクラス」をチェック! その見どころは?
-
第452回:これじゃメルセデスには追いつけないぜ! “無意識インプレッション”のススメ 2012.6.22 自動車開発のカギを握る、テストドライブ。それが限られた道路環境で行われている日本の現状に、小沢コージが物申す!?
-
第451回:日本も学べる(?)中国自動車事情 新婚さん、“すてきなカーライフに”いらっしゃ〜い!? 2012.6.11 自動車熱が高まる中国には「新婚夫婦を対象にした自動車メディア」があるのだとか……? 現地で話を聞いてきた、小沢コージのリポート。
-
NEW
これがおすすめ! 東4ホールの展示:ここが日本の最前線だ【ジャパンモビリティショー2025】
2025.11.1これがおすすめ!「ジャパンモビリティショー2025」でwebCGほったの心を奪ったのは、東4ホールの展示である。ずいぶんおおざっぱな“おすすめ”だが、そこにはホンダとスズキとカワサキという、身近なモビリティーメーカーが切り開く日本の未来が広がっているのだ。 -
NEW
第850回:10年後の未来を見に行こう! 「Tokyo Future Tour 2035」体験記
2025.11.1エディターから一言「ジャパンモビリティショー2025」の会場のなかでも、ひときわ異彩を放っているエリアといえば「Tokyo Future Tour 2035」だ。「2035年の未来を体験できる」という企画展示のなかでもおすすめのコーナーを、技術ジャーナリストの林 愛子氏がリポートする。 -
NEW
2025ワークスチューニンググループ合同試乗会(前編:STI/NISMO編)【試乗記】
2025.11.1試乗記メーカー系チューナーのNISMO、STI、TRD、無限が、合同で試乗会を開催! まずはSTIの用意した「スバルWRX S4」「S210」、次いでNISMOの「ノート オーラNISMO」と2013年型「日産GT-R」に試乗。ベクトルの大きく異なる、両ブランドの最新の取り組みに触れた。 -
NEW
小粒でも元気! 排気量の小さな名車特集
2025.11.1日刊!名車列伝自動車の環境性能を高めるべく、パワーユニットの電動化やダウンサイジングが進められています。では、過去にはどんな小排気量モデルがあったでしょうか? 往年の名車をチェックしてみましょう。 -
NEW
これがおすすめ! マツダ・ビジョンXコンパクト:未来の「マツダ2」に期待が高まる【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!ジャパンモビリティショー2025でwebCG編集部の櫻井が注目したのは「マツダ・ビジョンXコンパクト」である。単なるコンセプトカーとしてみるのではなく、次期「マツダ2」のプレビューかも? と考えると、大いに期待したくなるのだ。 -
NEW
これがおすすめ! ツナグルマ:未来の山車はモーターアシスト付き【ジャパンモビリティショー2025】
2025.10.31これがおすすめ!フリーランサー河村康彦がジャパンモビリティショー2025で注目したのは、6輪車でもはたまたパーソナルモビリティーでもない未来の山車(だし)。なんと、少人数でも引けるモーターアシスト付きの「TSUNAGURUMA(ツナグルマ)」だ。
