アウディA6 2.7T クワトロ S-line(5AT)【ブリーフテスト】
アウディA6 2.7T クワトロ S-line(5AT) 2004.04.20 試乗記 ……681万4500円 総合評価……★★★★ 2004年のジュネーブショーで、新型が発表されたアウディのアッパーミドルサルーン「A6」。しかし、世代交代が近づいた現行モデルにも衰えない魅力があると、自動車ジャーナリストの金子浩久は語る。
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衰えない魅力
2000年に「アウディA6」が登場した時の衝撃は大きかった。何にも似ていない、ファストバック調6ライトのエクステリアデザインに、非常にクォリティの高いインテリア。動力装置は、アウディ得意の5バルブヘッドV6エンジンにクワトロシステム(前輪駆動版もあり)+ティプトロニックに磨きをかけてあった。乗れば速いし、何よりもクルマ好きにとっては、メルセデスベンツやBMWとは一味違ったスポーティで、フレッシュな存在感が魅力的だった。
その魅力は、2004年のジュネーブモーターショーで新型が発表された今でも、すこしも衰えてはいない。日本の道を1日で500km、ヨーロッパならば1000km以上走りきらなければならないような場合には、A6を選べたらいいと思う。長距離が苦にならず、当然、疲労もすくなく、使い勝手に優れている。のみならず、ドライビングの水準が高く、後席や荷室もおろそかにされていない。“道具”として、“モノ”として愛玩したくなる内容が濃い。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1997年にデビュー、日本では同年9月に販売がスタートした、アウディのミドルサルーン。日本でのラインナップは、2.4リッターV6DOHC30バルブエンジン(170ps)を搭載する「A6 2.4」、3リッターV6DOHC30バルブ(220ps)を積むフルタイム4WD“クワトロ”仕様の「A6 3.0クワトロ」と、豪華装備の「3.0クワトロSE」。そして、ツインターボの2.7リッターV6DOHC30バルブ(250ps)搭載モデルに、エアロパーツなどを付与したスポーティ版「2.7Tクワトロ S-line」の4種類である。トランスミッションは、2.4にCVT「マルチトロニック」、それ以外はティプトロニック付き5段ATが組み合わされる。
(グレード概要)
現行ラインナップのトップグレードが、2003年6月に追加されたスポーティ版「2.7T クワトロ S-line」。スポーツサスペンションや5本スポークアルミホイール+235/45R17サイズのタイヤなどが、S-lineならではの装備。パワーパックは、基本的に「3.0クワトロSE」と同じ。ヒーター付き本革シートやクルーズコントロール、シフトスイッチ付きステアリングホイールなどが標準で備わる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
黒地に映える赤いメーターのフォントと、各部分のアルミニウムを組み合わせたインパネの印象はクールでモダンだ。機能的にも見やすくて使いやすい。主だった装備は揃っている。
「TTクーペ」でも同様だが、標準装備されるシートヒーターの強弱をダイアルで調節できるのはありがたい。なかには嫌いな人もいるけれど、エアコンを完備したA6のようなサルーンでも、シートヒーターの暖かさには格別のものがある。また、細かいところだが、大きなドアポケットが開閉式なのも気が利いている。出し入れしやすいし、地図などの大きなものが落ちにくいのだ。
(前席)……★★★
なんでもないように見えるシートだが、ダンピングもホールドも申し分ない。特に、高速巡航時には適度なリラックス感も与えてくれる。
シートとステアリングホイールの上下、および前後位置の調整幅が大きいのはアウディ各車の美点なのだが、このA6では筆者の場合、なかなかベストポジションが見つからなかった。太めのAピラーが、特に径の小さな右コーナーで対向車の姿を遮ることがあったので、アレコレやってみたのだが、視界をとればドライビングポジションがイマイチとなり、ドライビングポジションを優先すればAピラーに邪魔された。自分のクルマとして所有して乗っていくうちに、どこかで妥協点が見つかるのかもしれない。
(後席)……★★★
シートのでき映えは前席同様に問題ないのだが、やや小ぶりなのが気になる。なぜならば、もうすこし大きなシートにしても十分な空間が取れるはずだから。レッグルームは広い。頭上空間も必要なだけあるが、リアガラスの傾斜がなだらかなぶんルーフが短く、直射日光に後頭部を照らされやすくなっている。
(荷室)……★★★★★
スタイリッシュな後ろ姿からは想像できないほど広大な荷室空間を持つ。その空間も、余計な出っ張りのない四角四面だから、使いやすい。リッターで示される積載容量よりも、出っ張りがないことの方がどれだけ重要かをわからせてくれる荷室だ。なお、前輪駆動版のA6の荷室はこれよりも床が低く、積載量がさらに増える。良心的なクルマづくりだ。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
「オールロードクワトロ」と同じ、ターボチャージャー付きの2.7リッターV6はトルキーで、気持ちのよい加速をする。特定の回転域からドカンとパワーが出ることはなく、全域に渡ってトルクを太らせているから使いやすい。回転の落ち具合も自然でドライバビリティも悪くない……と、不満は何もないが、縁の下の力持ち的な存在である。エンジンが強い自己主張をすることはない。
トランスミッションは優秀だ。ティプトロニックはマニュアル変速モードを持つが、アウディのそれは“D”モードから任意で変速も可能。優秀なのは、“D”モードで変速した約8秒後に再び“D”モードに自動的に戻るところ。一般的なティプトロニックでは、Dからマニュアルでの変速はできても、Dモードへ自動的に戻らない。使い勝手において、この違いは大きい。また、自身の学習機能によって、変速パターンを様々に変化させていくところも賢い。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★
乗り心地はよい。太く扁平率の低いタイヤを履いているにもかかわらず、乗り心地に悪影響を与えていないのは立派。ゴツゴツした乗り心地や、太く大きなタイヤがドタバタしている様子も感じ取れない。「スポーツサスペンション」という単語から想像されるより、ずっと快適な乗り心地だ。
もちろん、速度を上げても、フラットな姿勢を崩すことはなく安定しているので、高速巡航は適度にリラックスできる。空力特性に優れたボディなので、風切り音が耳につきにくく、長距離走行を得意なものにしている。クワトロシステムによって、4本のタイヤはつねに路面を駆動しているわけだが、それによって直進性ばかりが強くなりすぎるようなこともない。小さなコーナーも右に左に、クイックに駆け抜けていく。
(写真=清水健太/2004年4月)
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【テストデータ】
報告者:金子浩久
テスト日:2004年1月22日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年登録
テスト車の走行距離:7797km
タイヤ:(前)235/45ZR17 94Y(後)同じ(いずれもダンロップ SP SPORT 8090)
オプション装備:--
形態:ロードインプレッション
走行形態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:406.0kmkm
使用燃料:60.0リッター
参考燃費:6.8km/リッター

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