フィアット・ムルティプラELX(5MT)【ブリーフテスト】
フィアット・ムルティプラELX(5MT) 2003.12.11 試乗記 ……249.0万円 総合評価……★★★★★ 一般的には“奇怪なスタイリング”と思われる、フィアット「ムルティプラ」。しかし、その造形には、合理の精神が隠されている。テストドライブした笹目二朗、性能も含めて大感激!!
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快適・便利・面白い
すべて★5つのフルマークがついた優秀車。一般的要望からいえば、AT仕様が選べないのは販売上不利かもしれないが、クルマの価値評価が下がるわけではない。1.6リッターの小排気量で、大柄なボディをこれだけ活発に走らせるのに、むしろMTの貢献度は高いといえよう。
日本で猛威をふるうミニバンは3列シートが大流行である。ムルティプラは3×2列のシートレイアウトをもって、全長4mという短さで6席を実現した。その手腕は、さすがデザイン立国イタリアの製品ならでは、だ。車検証を見せれば、フェリー料金も4m以下の枠、つまりお安く乗れるはず。本国では本来3999mmだから、「四捨五入されて4mと表記されている」と説明すれば大丈夫だろう。全長の短さが渋滞緩和にも役立つことは周知の通り。ファミリーカーとして、これだけ楽しく快適な便利空間を享受でき、かつお父さんにはスポーツドライビングの面白さを提供してくれる。こんなクルマ、ちょっと他に例を見ない。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
1998年のパリサロンでコンセプトカーとしてデビューしたマルチパーパスヴィークル。日本には、2003年4月5日から正規輸入されている。精神的なオリジンは、1950〜60年代につくられたユーティリティワゴンで、「ムルティプラ」の名前もそこから。全長4mのボディに対し、1875mmと広い全幅、3人がけシート2列のユニークなレイアウトをもつ。運転席を除いて、シートはすべて取り外し可能。荷室の最大容量は1900リッターに拡大できる。
ボディ構造は、ダイキャスト製の軽量スペースフレームに、スチールや樹脂ボディパネルを張ったもの。パワートレインは、1.6リッター直4DOHC16バルブ+5段MTのみ。本国には、1.9リッターコモンレール式直噴ターボディーゼルや、CNG(圧縮天然ガス)の“ブルーパワー”、もしくはCNGかガソリンを必要に応じて選べる“バイパワー”も用意される。
(グレード概要)
当初、日本におけるムルティプラは、「ELX」のモノグレード。快適装備は、ほぼ揃っており、オートエアコン、CDプレーヤー&AM/FM電子チューナー付きオーディオ、燃料消費量や走行距離などを表示できる「マルチファンクションディスプレイ」などが標準装備される。安全装備として、前席デュアル&サイドエアバッグと、側面衝突時に乗員を守るウィンドウエアバッグ、EBD付きABSなどを備える。
2003年12月から、「オプションパッケージPlus」を装着した「ELX-Plus」が追加された。パッケージの内容は、電動デュアルサンルーフ、10連奏CDチェンジャー、オリジナルアロイホイール+195/60R15タイヤと、オーディオコントローラー付きレザーステアリングホイール&シフトノブ。オプション価格約30.0万円分相当だが、装着者はベースの18.0万円高となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★★
初見では突飛な感じがするかもしれないが、計器類やコントロール関係は見やすく操作しやすい。楽しさにあふれるイタリアンデザインながら、その神髄は使いやすさにある。いちいちマニュアルを読まなくとも、見ればわかるのがインターナショナルな製品の妙だ。ダッシュボードの棚の上にも収納部があり、ちゃんとフタがあって物が転がらないし、防犯上も有利。容量もたっぷりある。
(前席)……★★★★★
ユニークな前席3人がけシートはそれぞれが独立しており、運転席を除いて取り外しも可能。中央席も、運転&助手席と同じフルサイズの同格だ。ダッシュボード中央の張りだしに合わせて後方へ下げて使えば、中央に大きな子供を乗せても、両端のパパとママは直視できるし、側方視界を妨げない。高めに座るポジションながら、円弧を描くユニークなドアハンドルバーは心理的な防護柵となる。表皮の布は手触りよく滑りにくい、形状も良好で、横サポート性も優れる。
(後席)……★★★★★
ソフトなシートクッションは座り心地上々。乗り心地が前席と変わりないのも美点だ。ソケット式の固定方法ゆえ前後スライドはしないが、寸法的な不満はまったくない。横方向に広々とした空間ゆえ、ちょっとリムジンに乗った気分さえ味わえる。日本のミニバンのなかには、3列シート式の最後部に乗ると、リアウィンドゥが迫って追突の恐怖にさらされる車もある。ムルティプラはトランク部分の空間が確保されているし、ルーフも高く空間そのものが広大なので、そうした不安要素はない。高い視点からの眺めもイイ。
(荷室)……★★★★★
短い全長にまとめたのが信じられないほど、独立したトランクとしてみても容量は充分。イタリアではタクシーとして使われるのもうなずける。ドライバーシート以外はすべて取り外せるから、それこそ箪笥だって運べる空間が出現する。トノーカバーの剛生も充分だから、すこし重いものでも棚の上に載せられる。バックドアは雨の日に有効な屋根となるが、開けるのには後方空間が必要。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★★
予備知識をもたずに運転すれば、1.6リッターの排気量が信じられないほど活発に走る。特に3速のカバーする範囲は広く、街なかでも、高速域へ引っ張るにも便利だ。高回転域の元気さはもとより、低回転域のトルクもある。巡航燃費もいいという、何とも不思議なエンジンである。1360kgという軽さも味方。インパネシフトの元祖的な存在であり、MTでも操作は簡単、手首の動きでシフト可能。ただしウインカーも左手操作のため、右ハンドル仕様の場合、街角では少々多忙。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★★★
ホイールベースは2665mmと長く、フラットで快適な乗り心地を提供してくれる。その快適さが前席と後席でほとんど変わらないのは魔術のようだ。6人乗りの荷重変化の大きな設定を考慮すれば、見事というほかない。これもIRS(後輪独立懸架)の恩恵。さらに、このIRSは横Gの増加と共に旋回を助ける方向にトー変化するから、いたずらにアンダーステアを強めない。回転半径5.5mと、狭い場所での取りまわしもまずまず。
(写真=中里慎一郎)
【テストデータ】
報告者:笹目二朗
テスト日:2003年11月20日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:1万5834km
タイヤ:(前)185/65R15 (後)同じ
オプション装備:-
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2):高速道路(4):山岳路(4)
テスト距離:490.8km
使用燃料:55.0リッター
参考燃費:8.9km/リッター

笹目 二朗
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