フォルクスワーゲン・ニュービートル プラス(4AT)【ブリーフテスト】
フォルクスワーゲン・ニュービートルプラス(4AT) 2003.05.08 試乗記 ……289.0万円 総合評価……★★★★類い稀なるクルマ
日本市場では、「ゴルフ」と肩を並べるフォルクスワーゲンの人気モデルが「ニュービートル」だ。機能は優れているが、いまひとつ購入意欲が湧かないクルマが多いなか、そのエモーショナルなスタイルだけで人を振り返らせる才能を備えたニュービートルは、類い稀なるクルマである。もし、直感的にこのクルマがほしいと思ったら、細かいことは気にしないで買えばいい。クルマとしての基本部分は「ゴルフIV」と共通だからハズすはずはないし、外見から想像するよりもはるかに実用的かつ堅実なつくりを誇る。
確かにデザイン優先という立場から、機能が犠牲になっている部分がないわけではない。でも、「それが嫌なら別のクルマを選べば……」という、ある種の潔さが私は好きだ。
今回のテストは広報車の都合上、豪華仕様の「ニュービートル プラス」に乗ったが、ベーシックモデルの「ニュービートル」でもその魅力は変わらないし、“プラス”より50.0万円安の239.0万円という価格はさらに魅力的である。エンジンが改良され、外観やインテリアにも多少手が加えられた最新版は、オススメの一台だと思う。
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【概要】どんなクルマ?
(シリーズ概要)
世界中の人々に愛された“ビートル”のデザインを、現代によみがえらせたのが「ニュービートル」。1994年のデトロイトショーに、「コンセプト1」の名で出展されたプロトタイプが好評だったため、1998年から市販化された。日本への導入は1999年9月から。オリジナルはRR(リアエンジン後輪駆動)だったが、「ゴルフIV」をベースとするニュービートルはもちろんFF(前輪駆動)である。
エンジンは、2リッター直列4気筒SOHC(116ps)が標準。2001年2月26日から、1.8リッターターボを積む「ニュービートルターボ」が追加された。トランスミッションは、いずれも4段オートマチックのみ。
(グレード概要)
ニュービートルプラスは、ニュービートルNAモデルに豪華装備を付与したモデル。エクステリアに、アルミホイールを標準装備。内装は、シートヒーター付きレザーシートを採用。ステアリングホイールとシフトノブ、サイドブレーキレバーが本革巻となる。
【車内&荷室空間】乗ってみると?
(インパネ+装備)……★★★★
このクルマのデザイン上の特徴として、円のモチーフがいたるところに繰り返されることが挙げられる。インテリアもその例に漏れず、メータークラスターやエアベントなどが円または弧を描く愛らしいデザインに仕上がっている。ダッシュボードにディンプル状表皮、ドア内側にボディ同色のパネルを用いているのもまた楽しい点だ。広いダッシュボード上面だけはいまだに違和感をおぼえるが、クルマのキャラクターを考えると、とりたてていうほどのことではない、と思う。
(前席)……★★★
標準で装着されるレザーシートは、適度に張りのある快適な座り心地で、ゆったりと収まることができる。ステアリングホイールやシフトレバー、ハンドブレーキレバーももちろん本革巻き。多少ざらっとした印象ではあるが、やはり手に触れる部分は革に限る。
気になったのは太いAピラーで、右前方が見にくい場合があるのは確か。今回試乗した最新モデルにはウインカー内蔵型のドアミラーが採用された。すっきりした形状に改められ、左右後方の視野が、以前より改善された。
(後席)……★★
正直いって後席には乗りたくない。ホイールベースが2515mmあるおかげで、膝がフロントのシートバックに付くことはないが、弧を描いたルーフ形状が災いして、身長168cmの私でさえヘッドルームはミニマム。後頭部は日に晒されることになる。荒れた路面では、リヤが跳ねた瞬間に頭が天井にあたる場面もあった。
(荷室)……★★★
リヤパーセルシェルフまでの容量は209リッターで、絶対的には決して大きくはない。しかし、テールゲートをもつこともあって、見た目よりも使い勝手はいい。しかも、ダブルフォールディング式のリアシートを畳めば、スペースは一挙に769リッターまで拡大するので、ふたりで移動するならめったに困ることはないだろう。惜しいのはリアシートが分割可倒式でないこと。ターボモデルが分割可倒式を採用しているので、ぜひこちらにもお願いしたい。
【ドライブフィール】運転すると?
(エンジン+トランスミッション)……★★★★
2リッターの直列4気筒エンジンは、SOHCの8バルブ、最高出力116psと、いまどきのクルマとしてはかなり控えめなスペックだ。けれども、実際に運転するとその数字が信じられないほど活発に走る。3000rpm以下の常用域ではピックアップに優れ、街中でちょっと加速したいときなど、アクセルペダルに載せた右足を少し踏み込むだけで即座にエンジンが反応する。
高回転域ではパンチこそないが、SOHCと思えないほどスムーズに吹け上がる。従来はNV(ノイズ、バイブレーション)の大きさが指摘されたエンジンだが、2003年モデルからバランサーシャフトが採用されたおかげで、十分許容できるレベルに収まっている。
(乗り心地+ハンドリング)……★★★
前ストラット、後トーションビーム付トレーリングアーム式のサスペンションは基本的に現行ゴルフと同じだ。とはいえ、205/55R16サイズのタイヤを履くために15インチタイヤ装着のゴルフよりも硬めの印象だ。おおむねフラットな乗り心地だが、凹凸のある路面ではタイヤとホイールの重さを感じさせられる。
ただ、装着されるタイヤがオールシーズンのミシュラン「MXV4 plus」ということもあって、細かい路面の荒れがボディに伝わることはなく、乗り心地の悪化を最小限に抑えているのは助かる。一方、ワインディングロードでは、安定感はあるものの、重心が高い印象があり、軽快にコーナリ ングするタイプではない。
(写真=郡大二郎)
【テストデータ】
報告者:生方聡
テスト日:2003年3月18日
テスト車の形態:広報車
テスト車の年式:2003年型
テスト車の走行距離:2050km
タイヤ:(前)205/55R16(後)同じ(いずれもミシュランエナジーMXV4)
オプション装備:--
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(3):高速道路(4):山岳路(3)
テスト距離:592.4
使用燃料:61.8リッター
参考燃費:9.6km/リッター

生方 聡
モータージャーナリスト。1964年生まれ。大学卒業後、外資系IT企業に就職したが、クルマに携わる仕事に就く夢が諦めきれず、1992年から『CAR GRAPHIC』記者として、あたらしいキャリアをスタート。現在はフリーのライターとして試乗記やレースリポートなどを寄稿。愛車は「フォルクスワーゲンID.4」。
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