フォルクスワーゲン・ザ・ビートル カブリオレ(FF/7AT)
ビートルズを口ずさみながら 2013.05.23 試乗記 初夏の富士を「ザ・ビートル カブリオレ」でドライブ。スペックシートからは読み取れない、その魅力に触れた。
世界は平和に満ちていた
「ザ・ビートル カブリオレ」に乗って走りだすなり、そう思った。最前までMINIの限定モデル「ジョンクーパーワークスGP」に喜々として乗っていた。闘魂スペシャルたるGPの過激なセンチメンタリズムに酔いしれていた私は、「ゆるキャラ」的ザ・ビートル カブリオレを、男の乗るものではない、と見なしていた。
堅い屋根のMINIから、屋根を開け放ったザ・ビートル カブリオレに乗り換えると、自分のまわりに世界が広がっている実感があった。富士五湖周辺。初夏の日差しは強めだけれど、空気は澄みわたり、ちょっぴりひんやりしている。屋根を開けて走るのにうってつけの日だ。広い青空を飛ぶ鳥がいて、野辺に咲く花があり、河口湖にはバス釣りをする若者たちがいた。戦後このかた、わが日本国はどこの国とも戦火を交えることがなかった。やっぱり平和っていいなぁ、と思った。
いまやジョンクーパーワークスGPは遠き日の思い出になった。自動車の人間の精神に及ぼす影響たるや、誠に大である。かくして私はこのような境地に至った。
汝(なんじ)、争うことなかれ。
コンペティションとは無縁の世界。乗り心地は極めて快適で、1.2リッターターボエンジンは最高出力たったの105ps。7段DSGは気がつくと7速トップに入っていて、エンジンは常に1500rpm近辺をのんびり回っている。アクセルを踏めば、過不足のないトルクが立ち上がる。