霊柩車にもエコの波が

バーニー・ティーディーは大富豪の未亡人マージョリー・ニュージェントを殺害し、9カ月もの間隠し続けたものの1997年8月に逮捕され犯行を自白した。この事件をリポートした記事を読み、リンクレイター監督が映画化を思い立つ。企画から10年以上たって、ようやく作品が完成したのだ。

バーニーは葬儀屋として優れた技術を持っていただけでなく、得意の美声で賛美歌を歌い(ジャック・ブラックは本当に歌がうまい)、細やかな心配りで遺族に接した。大学の演劇部で指導をしたり、美化運動に取り組んだり、模範的な市民として評価が高かった。誰彼なくフレンドリーに接したので、彼を嫌う人はだれもいなかったのだ。気に入ったものを見つけると大量に買い込んで人にあげてしまうので、彼自身は質素な生活をしていた。

愛車はごく普通の「リンカーン・タウンカー」。ローンで購入していて、時々支払いが滞ることもある。ただ、仕事では別のクルマを使っている。「キャデラック・フリートウッド」だ。特別仕様のワゴン車で、後部には棺を積めるようになっている。要するに、霊柩車(れいきゅうしゃ)である。アメリカでは、葬儀用のクルマとしてキャデラックの改造車が使われることが多いようだ。やはり、最期の時はキャディで運ばれたい、という思いがあるのだろうか。

日本でもキャデラックの霊柩車に乗ることができるようで、リンカーンも人気が高い。輸入車では、ほかに「ボルボV70/V90」「メルセデス・ベンツSクラス」「BMW 7シリーズ」などが使われている。日本車ではやはり「トヨタ・クラウン」ベースのものが多く、変わったところでは「トヨタ・プリウス」をストレッチして霊柩車に仕立てたものもある。死に際してもエコを忘れないというのが、最新のマナーであるようだ。


第55 回:愛車はリンカーン、仕事ではキャデラックに乗る男 『バーニー/みんなが愛した殺人者』の画像 拡大

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「キャデラック・フリートウッド」
1960年から70年代は巨大なフルサイズセダンだったが、80年代なかばにダウンサイズされて「キャデラック・ブロアム」にその座を譲った。日本では、「キャデラック・デビル」が「フリートウッド エレガンス」の名で販売されていたことがある。Bピラーから後ろを改造したものが霊柩車として使われている。
「キャデラック・フリートウッド」
    1960年から70年代は巨大なフルサイズセダンだったが、80年代なかばにダウンサイズされて「キャデラック・ブロアム」にその座を譲った。日本では、「キャデラック・デビル」が「フリートウッド エレガンス」の名で販売されていたことがある。Bピラーから後ろを改造したものが霊柩車として使われている。 拡大
鈴木 真人

鈴木 真人

名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。

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