クルマ好きなら毎日みてる webCG 新車情報・新型情報・カーグラフィック

第9回:危険なコージの新提案
今こそ燃費、ちょっと忘れてみませんか!?

2013.08.17 小沢コージの勢いまかせ!! リターンズ 小沢 コージ

ニッポンの低燃費競争はもう行きすぎ?

先日の世界陸上、ほっとしましたねウサイン・ボルト。100m 9秒77であいかわらず世界最速! ……っていきなりハナシずれちゃいましたか(笑)。
というのも不肖小沢、最近、つくづく不思議なんですわ。燃費、なぜにみんなこれほど夢中になるんでしょう? それも陸上短距離みたいにコンマいくつのレベルまで。

既に報道されまくってるけど、ご存じ9月発売予定の「ホンダ・フィットハイブリッド」。JC08モードで現時点最高の36.4km/リッター! でも、今までトップの「トヨタ・アクア」の35.4km/リッターとどれくらい違うかってアータ、1km/リッターですよ、たった1km/リッター!

さらに激烈なのが軽の燃費競争で、驚異の80万円以下カー「ダイハツ・ミラ イース」がモード燃費で30.0km/リッターを達成したのが2011年の9月。直後にスズキは、30.2km/リッターの「アルト エコ」でやり返した。スズキはさらに、今年(2013年)2月のアルトエコの改良で33.0km/リッターを達成。と思ったら8月にはミラ イースが33.4km/リッターまで伸ばす始末。
他の車種を見ても、2012年9月に元祖トールワゴンの「スズキ・ワゴンR」が新技術エネチャージ他を採用して28.8km/リッターを達成! その年末にはガチンコライバルの「ダイハツ・ムーブ」がマイチェンで29.0km/リッター! 2013年6月には今までノーマークだった三菱&日産陣営が「三菱eKワゴン」「日産デイズ」で29.2km/リッター! さらに先の7月にはワゴンRが1年も経たずに改良されて30.0km/リッター! ……もう、こうして書いてるだけで目が回る。

ガソリンのコンパクトカーも同じようなもんよね。ホンダ・フィットのガソリン車が26.0km/リッターかと思ったら、「スズキ・スイフト」がデュアルジェットって技術で26.4km/リッター。ある意味、重箱の隅をつつくようなギリギリのレースが繰り広げられているのだ。

軽トールワゴンナンバーワンの低燃費を誇る「スズキ・ワゴンR」と、従来モデルから大幅に燃費を改善した「スズキ・スイフト」を前に、不肖小沢が大胆提案をかまします。
軽トールワゴンナンバーワンの低燃費を誇る「スズキ・ワゴンR」と、従来モデルから大幅に燃費を改善した「スズキ・スイフト」を前に、不肖小沢が大胆提案をかまします。
    拡大
「スズキ・スイフト」は2013年7月に一部改良拡大。新開発のデュアルジェットエンジン搭載車で、26.4km/リッターの燃費を実現した。
「スズキ・スイフト」は2013年7月に一部改良。新開発のデュアルジェットエンジン搭載車で、26.4km/リッターの燃費を実現した。
2011年9月に登場し、軽における燃費競争の契機となった「ダイハツ・ミラ イース」。モーターなどの「飛び道具」を使わずに30.0km/リッターのカタログ燃費を実現した。
2011年9月に登場し、軽における燃費競争の契機となった「ダイハツ・ミラ イース」。モーターなどの「飛び道具」を使わずに30.0km/リッターのカタログ燃費を実現した。
    拡大

良くなったといっても月200円レベル?

確かに低燃費なほどエコなのはわかるし、サイフに優しいのもわかる。特に欧州なんかだとCO2総量規制が厳しいんで、より厳密に追求する事情も理解しております。
でもね、冷静に考えると、今の日本って世界的に最も燃費を気にしなくていい国とも言えるのよ。なんせ長距離走らないし、高速でもあまり走らないから。

考えてもみてください。今や乗用車が年間1万km走らないといわれるニッポン! 多めに見積もって月1000km走るとして、モード燃費通りに考えるとアクアが月に使うガソリン量は1000km÷35.4km=28.25リッター。ソイツがフィットハイブリッドになったとして1000km÷36.4km=27.47リッター。つまりその差わずか0.78リッター!
もちろんこれはカタログ燃費なんで、実燃費だと3~4割ガソリン消費が増えるとしても、両者の差は1リッターちょい。ガソリン代にして200円ぐらいしか変わらないのだ。まあ確かに、CO2排出量に換算するとその差は約2.3kgだからデカいっちゃデカいが、それでも2.3kg。私にはそれほどとは思えない。

昔は確かに意義があったのよ。例えば実燃費5km/リッターのアメ車があったとして、10km/リッターの国産車に乗り換えたら省燃費効果はマジでハンパない。月1000km走るとして、200リッター使っていたのが、100リッターに減るから、その差100リッター!! リッター160円として実に1万6000円であり、CO2削減効果はもちろん、コスト削減効果がハンパない。今なら、ぶっちゃけ安いスマホが買えちゃいますよね(笑)。

だが、今やカタログ燃費で30km/リッター前後、実燃費で20km/リッター台はいく時代。するともともとのパイが大幅に減って、削減効果もその分小さくくなる。ガソリンは月にせいぜい使って40~50リッター。削るっていっても半分は無理で、その上、日本人は昔ほど長距離走らなくなってるから、ますますガソリンを使わなくなってる。実際、「プリウス」やアクアのユーザーだと「月に1回満タンにするかしないか」「月に使ってガソリン代5000円」って人も多いんでしょ?

燃費にこだわるのは、それはそれで素晴らしいことなのだが、冷静に見るともはやこれ以上は自己満足的領域に入りつつあると思うのだ。

デビュー秒読み段階となった新型「ホンダ・フィット」。ハイブリッドの燃費は「トヨタ・アクア」を超える36.4km/リッターをうたうが……。
デビュー秒読み段階となった新型「ホンダ・フィット」。ハイブリッドの燃費は「トヨタ・アクア」を超える36.4km/リッターをうたうが……。
    拡大
先代「プリウス」ゆずりのハイブリッドシステムを搭載し、最高で35.4km/リッターのモード燃費を実現した「トヨタ・アクア」。
先代「プリウス」ゆずりのハイブリッドシステムを搭載し、最高で35.4km/リッターのモード燃費を実現した「トヨタ・アクア」。
    拡大
ちなみに、webCG編集部員のアシとして活躍する「トヨタ・プリウス」の実燃費は、だいたい20km/リッター前後。プリウスのガソリンタンクは45リッターなので、1回の給油で900kmは走る計算となる。
ちなみに、webCG編集部員のアシとして活躍する「トヨタ・プリウス」の実燃費は、だいたい20km/リッター前後。プリウスのガソリンタンクは45リッターなので、1回の給油で900kmは走る計算となる。
    拡大

欧米は事情が全然違う

そんな日本と比べると、欧米は全然違ってやたらシビア。欧州では年間2.5万km、多い人だと4万kmぐらい平気で走る。さらに、ドイツなんかだと当たり前に100km/h、200km/hのハイスピードで走るから、いくら自動車の燃費性能が良くなってきてるとはいえ、燃料代がハンパない。
不肖小沢も数年前に「ゴルフTSI」のガソリン車を借りて1週間で2000km走ったことがあるが、確か250~300リッターぐらい使ってガソリン代は500ユーロ台、日本円にして7万円以上!! 当時はユーロ高だったこともあるが、ガソリン代ハンパね~と思った。こりゃもちろんディーゼル車乗るよね、と。

こうした海外市場ならまだしも、日本では実際のところ、ハイブリッドカーを買ったとしても、もとを取るには何年もかかるし、価格差を考えると取れない場合も多い。マジメなハナシ、単純にコスパで考えると中古のプリウスで十分であり、最新のJC08モード燃費の一桁データに一喜一憂する意味はない。
なのになぜにそこまでエコカーにこだわるのか。日本人のエコ感覚って、やっぱり不思議だ。

もちろん、メーカーのエンジニアの努力や、技術革新による燃費の改善そのものを否定しているわけではない。環境を大局的に見るお役所の方々が、燃費性能を重要視するのもわかる。国民1人が1円貯金しただけで1億円の貯金に変わる世界だからさ。スケールメリットを考えると、1リッターあたり1kmでも0.1kmでも上がると良いんでしょう。

でも、いわゆる国民レベル、一人一人の人間としての感覚は違う。もしも月500km走るか走らないかって女性がいたとして、安くなったとはいえ、150万円のハイブリッドカーを買う意味がどこにあるのか。月々わずか200円のメリットですよ?
10年、20年前のクルマに乗っているならいざしらず、ここ2~3年に出ている国産車は小沢に言わせると「ほぼすべてエコカー」というレベル。個人的には型落ちのスイフトなんて悪くないと思う。

もちろん最新エコカーが欲しいキモチもわかるし、どうせならいいやつを……というのはパソコンでもスマホでも一緒。
でもクルマは高いし、そもそも本当にエコを追求したいのなら、運転の仕方を変える手もあるのだ。駐車場ですぐエンジンを切るとか、エアコンをちょっとガマンするとか、急発進をやめるだけで1km/リッターぐらいはすぐに変わる。

つくづく、ここに来てカタログ燃費ってなんだと思うのよ。ウサイン・ボルトの100m走が9秒58なのか、9秒57なのかは、確かに大違い。でも、私たちユーザーが、35km/リッターや36km/リッターといった値にそこまで神経質になる必要はないんじゃない?
今回はそんな、自動車ジャーナリストしては若干問題発言かもしれない大提案でありましたっ!!(笑)

(文=小沢コージ)

※文中で紹介される各車の燃費は、いずれもJC08モード。
 

日本よりはるかにユーザーの平均走行距離が長く、速度域も高めの欧州では、燃料代の問題は日本以上にシビア。燃費のいいディーゼル車が売れるのもうなずける。
日本よりはるかにユーザーの平均走行距離が長く、速度域も高めの欧州では、燃料代の問題は日本以上にシビア。燃費のいいディーゼル車が売れるのもうなずける。
    拡大
こちらが小沢コージオススメの先代「スズキ・スイフト」。某有名中古車情報サイトを見たところ、今年で2度目の車検を迎える2008年式の相場はおおむね70~80万円。こうなると、最新のエコカーでも「燃費でもとを取る」のは実質不可能。
こちらが小沢コージオススメの先代「スズキ・スイフト」。某有名中古車情報サイトを見たところ、今年で2度目の車検を迎える2008年式の相場はおおむね70~80万円。こうなると、最新のエコカーでも「燃費でもとを取る」のは実質不可能。
    拡大
クルマの性能だけでなく、運転の仕方次第でも燃費は変わる。燃費が気になる人は、クルマ選びはもちろん、普段の自分の運転も見直してみよう。
クルマの性能だけでなく、運転の仕方次第でも燃費は変わる。燃費が気になる人は、クルマ選びはもちろん、普段の自分の運転も見直してみよう。
    拡大
小沢 コージ

小沢 コージ

神奈川県横浜市出身。某私立大学を卒業し、某自動車メーカーに就職。半年後に辞め、自動車専門誌『NAVI』の編集部員を経て、現在フリーの自動車ジャーナリストとして活躍中。ロンドン五輪で好成績をあげた「トビウオジャパン」27人が語る『つながる心 ひとりじゃない、チームだから戦えた』(集英社)に携わる。 ホームページ:『小沢コージでDON!』

車買取・中古車査定 - 価格.com

メルマガでしか読めないコラムや更新情報、次週の予告などを受け取る。

ご登録いただいた情報は、メールマガジン配信のほか、『webCG』のサービス向上やプロモーション活動などに使い、その他の利用は行いません。

ご登録ありがとうございました。

webCGの最新記事の通知を受け取りませんか?

詳しくはこちら

表示されたお知らせの「許可」または「はい」ボタンを押してください。