第235回:“軽くて小さくて速くて楽しい”が帰ってきた!
「ダイハツ・コペン」のプロトタイプ試乗会リポート
2014.04.12
エディターから一言
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2014年6月に発表される予定の、新型「ダイハツ・コペン」のプロトタイプに試乗。初代コペンの思い出とともに、気になる2代目の実力を紹介しよう。
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先代が誕生したのは逆風の中
先代ダイハツ・コペンに最後に乗ったのは、2012年1月だった。その年の8月に生産が終了するのを控え、最新の「ムーヴ」と乗り比べてみたのだ。記事の最後にこう書いた。
「コペンの精神にムーヴで培った技術を注げば、きっとクルマの楽しみはさらに広がる」
期待を込めての一文だったのだが、あれから2年、思っていた以上の成果を目の当たりにした。この6月に発表される新型コペンのプロトタイプに乗る機会を得たのだ。小さな特設コースでわずか10分の試乗だったが、完成度の高さは伝わってきた。
20年以上前、軽のオープンカーやスポーツカーが流行した。1991年にホンダから「ビート」が発売され、スズキが「カプチーノ」で後に続いた。翌1992年にはマツダが「オートザムAZ-1」を投入する。ダイハツも「リーザ スパイダー」でこの流れに加わったが、ルーフを切り取っただけの間に合わせだったことは否めない。満を持して先代コペンが登場したのは、2002年の6月になってからのことである。
この年、軽自動車の平成14年度排出ガス規制が発効している。平成17年度規制が普通乗用車に適用されることも決まっていて、スポーティーモデルが相次いで姿を消した年でもあった。「トヨタ・スープラ」「日産シルビア」「日産スカイラインGT-R」「マツダRX-7」などが一斉に生産を終了した。バブルの残り香が漂っていた1990年代初頭と比べると、市場の動向は様変わりしていたのだ。軽自動車にとっても、スポーティーカーにとっても、強い逆風が吹く中でのスタートだった。
スケルトンでも走れる
それでも、先代コペンは10年間で約5万8000台を売り上げている。ビートが約3万4000台だったから、売り上げでははるかに上である。「メルセデス・ベンツ500SL」などの高級車にしか装備されなかった電動格納式ハードトップを採用したのは、販売拡大に大きく貢献したはずだ。スポーティーだけれど日常使いにも適していて、この手のクルマにしては女子率が驚くほど高かった。乗っても楽しいクルマで、当時所属していた自動車雑誌編集部では、持っていたテストカーの中でダントツの人気を誇っていた。長距離の取材でも、みんな喜々として乗って出掛けたものである。
2011年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカー「D-X(ディークロス)」を見た時には、軽いガッカリ感を覚えたのだった。スポーツ方向に寄せ過ぎで、手軽な道具としての魅力が損なわれたような気がした。だから、昨年のモーターショーに出品された「KOPEN」を見てちょっと安心した。大事な要素であるポップ感が戻っていたからだ。ただ、外板の樹脂パネルを交換できるという発表が、どういうことを意味するのかが少々わかりかねていたのも事実である。今回の試乗で、ようやくそれを確かめる機会が与えられた。
発表前ということで、肝心の樹脂パネルには迷彩が施されている。内装は簡素でビジネスライクなしつらえで、市販されるモデルとは大きく異なるものだ。ビジュアル面については、モーターショーの「KOPEN(コペン)」から想像するしかない。ちなみに先代でもショーモデルはKOPENと呼ばれていて、市販モデルになって「COPEN」と改名された。新型も、これで晴れてCOPENのお披露目となったわけである。
ベースとなったのは、「ミラ イース」のシャシーである。とはいえ、補強の概念をはるかに超える変更が施されている。「D-Frame」と称する新骨格構造は、チーフエンジニアの藤下 修氏によると「モノコック構造の破壊」なのだそうだ。ボディー上下曲げ剛性が3倍、ボディーねじり剛性が1.5倍になり、ルーフがなくても骨格のみで強度を確保したのだという。樹脂の外板は剛性には関わっていないので、スケルトン状態でも走ることは可能なのだ。
トランスミッションは、CVTとMTのふたつの仕様が用意されている。最初に乗ったのはCVT版である。オープンにした状態で乗り込んだ。ウインドシールドはかなり寝ていて、ドライバーズシートでの包まれ感はけっこうある。前後対称に近かった前モデルよりも、かなりスポーツカー的なフォルムになっている。スタートボタンを押してエンジンをかけ、コースに進入するといきなりアクセルを踏み込みたくなる。後方から響いてくる排気音が気分を高揚させるのだ。
軽快で燃費もいい3気筒エンジン
お台場の駐車場に作られた特設コースは全長600メートルで、コーナーは最大でも25Rだ。タイトなレイアウトなので、アクセル全開にできる時間は長くない。それでも気持ちのいい音とシンクロした加速に、ライトウェイトスポーツらしい軽快さを感じる。パワーユニットに関しては、少々不安があった。前モデルは軽自動車で最後に残った4気筒エンジン搭載車のひとつで、それがウリでもあった。D-Xが発表された時には開発中の2気筒エンジンが載せられるという話もあったが、実際に採用されたのはDVVT付き3気筒ターボエンジンである。
重厚感では4気筒に軍配が上がるが、今回のパワーユニットは軽快さで上を行く。ライトウェイトスポーツとしては、こちらのほうがふさわしいかもしれない。そして、低回転域のトルク感は、確実に向上していると感じた。前モデルは、発進時に心もとなさがあったように記憶している。燃費はCVT車で25.2km/リッター、MT車で22.2km/リッターになり、エコカー減税の対象になる予定だというからたいしたものだ。
燃費向上のため、軽量化にも力が注がれている。試乗会場の展示スペースに大きめの湯たんぽのようなものが置いてあり、何かと思ったら樹脂製の燃料タンクなのだった。もちろんこれは軽量化ポイントの一例であり、さまざまな方法で涙ぐましい努力が重ねられているのだろう。トータルで75kgの削減に成功したそうだが、安全性の向上などに必要な重量増があって最終的には少し車重が増えてしまった。それでもMT車で850kgになるということで、軽いクルマなのは確かだ。
スタート地点に戻り、ルーフを閉じることにした。電動オープントップは先代と同じベバスト社製で、ボタンを押すと約20秒で開閉する。左右2カ所のロックを手動で行うところも同じだ。クローズドにしても、さほど閉塞(へいそく)感はない。先代に最後に乗った時はあまりの狭さに驚いたのだが、もう少し余裕のあるスペースが確保されているようだ。ただ、やはりこのクルマはオープンにしてこそのものである。2周まわっただけで戻り、MT車に乗り換えた。
やはり低回転域のトルクに余裕があるのか、発進時のストレスは少ない。回転を上げて2速にシフトすると、すぐにコーナーが迫ってくる。3速に入れるチャンスは100メートル強のストレートの終わりに一瞬訪れるだけなので、なんとももどかしい。ワインディングロードに持ち込めば、さぞかし楽しいだろうと想像するだけだ。
オープンにしても低下しない剛性感
シフトの機会は少なくても、コーナリングは十分に楽しい。ステアリングを切ると素直に向きを変え、思い通りの軌跡をたどっていく。実にナチュラルだ。少々乱暴な運転をしても、破綻しそうな気配はまったくなかった。小さくて軽量なボディーだからこその気持ちよさを存分に味わえる。
そして、ふと気がついた。乗り換える前のクローズドの状態と、何ら変わりがないのである。オープンにしても、剛性の差を感じない。実は、先代コペンの最大の弱点がフルオープン時の剛性低下だった。段差を通過するときなどは、あまり歓迎できない種類の振動に見舞われることがあった。それもオープンの味の一つと思い込むようにしていたが、剛性が確保できていなければハンドリングにも影響が出るのは間違いない。新型コペンは、スポーツカーとして明らかなアドバンテージを手に入れている。
この剛性感を支えているのが、前に触れた新骨格構造D-Frameなのだろう。外板全体が支えるモノコック構造では、屋根を切ってしまうと劇的に強度が下がる。そうならないように、新型コペンはフロアとサイドの骨格で剛性を確保しようとしている。それはモノコック以前のフレームシャシーに戻るということではないはずだ。トラックのような作りにしてしまったら、乗り心地も操縦性も悪化してしまう。各部の調整の仕方に秘密のノウハウがあるのだろうが、とにかく歓迎すべき技術である。
この構造によって、11種の樹脂パネルを脱着して自由に意匠を変えられるDRESSFORMATIONが可能になったわけである。走りのよさとデザイン性を実現するためのコア技術がD-Frameというわけだ。正直なところ、着せ替え可能であることがどれだけ若い人々にアピールするのかはよくわからない。乗れば間違いなく楽しいし、価格も8%の消費税込みで200万円を切るというのは朗報だ。スペース効率のいいハイトワゴンもエラいと思うけれど、自動車のわかりやすい楽しさがこのクルマにはある。自動車文化全体のために、ぜひ売れてほしいと思う。
(文=鈴木真人/写真=河野敦樹)

鈴木 真人
名古屋出身。女性誌編集者、自動車雑誌『NAVI』の編集長を経て、現在はフリーライターとして活躍中。初めて買ったクルマが「アルファ・ロメオ1600ジュニア」で、以後「ホンダS600」、「ダフ44」などを乗り継ぎ、新車購入経験はなし。好きな小説家は、ドストエフスキー、埴谷雄高。好きな映画監督は、タルコフスキー、小津安二郎。
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