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スバルWRX S4/WRX STI 開発者インタビュー

ディテールのすべてに理由がある 2014.08.28 試乗記 佐野 弘宗 富士重工業
スバル商品企画本部
舟橋 悟(ふなばし さとる)さん

ファンの期待を一身に背負って登場したスバルの新型スポーツセダン「WRX」。開発者に、他のスバル車とのちがいと、こだわりのポイントを聞いた。
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「レガシィB4」からの乗り換えをねらう

――舟橋さんも含めて、「WRX」と「レヴォーグ」の両方に関わっているエンジニアの方が多いようですが、WRXとレヴォーグは実際に共通部分が多いのですか?

レヴォーグのもともとの発想は、「A-Line(先代のWRX STIにあったATモデル)」のステーションワゴン版があったら、魅力的なんじゃないか……というもので、企画当初のレヴォーグは社内で“A-Lineワゴン”と呼ばれてたりもしていました。レヴォーグは新しいWRXの「S4」とともに“走りも良くて、スペースユーティリティーもあるクルマ”というコンセプトで一緒に開発しました。

――ということは、S4はやはり、これまでのA-Lineの後継機種というわけですか?

そういう意図も当然あるのですが、それ以上に、今回のS4では従来の「レガシィB4」のターボ車のお客さまを強く意識しました。インテリアの質感なども、レガシィから乗り換えても違和感のないよう仕上げたつもりです。
5代目レガシィは旧型から乗り換えていただけるお客さまが想定よりも少なく、4代目以前に大切に乗り続けていただいている“待機ユーザー”のお客さまが多かったのは事実です。レヴォーグもそうですが、特に今回のS4はそのあたりの掘り起こしをねらいました。

これまでのA-Lineは細かいところではブレンボ社製ブレーキも含めて「見た目はSTIなのに2ペダル」という部分が重要でした。新しいS4はアイサイトを標準装備しています。そのためにリアのキャリパーのEPB(電気式パーキングブレーキ)を電子制御する必要があるんですが、現時点でそれに対応できるブレンボ社のキャリパーはないんです。

試乗会場に並べられた「WRX S4」。動力性能だけでなく、環境性能や安全性能、上質な乗り心地なども重視した、新型のスポーツセダンである。
試乗会場に並べられた「WRX S4」。動力性能だけでなく、環境性能や安全性能、上質な乗り心地なども重視した、新型のスポーツセダンである。 拡大
インテリアでは、ダッシュボードの広範囲にソフトパッドを採用。加飾パネルにはカーボン調のデザインを用いている。
インテリアでは、ダッシュボードの広範囲にソフトパッドを採用。加飾パネルにはカーボン調のデザインを用いている。 拡大

2003年から2009年に販売された4代目「レガシィ」のセダンモデル「B4」。写真は2リッターターボエンジンとビルシュタイン製ダンパーを備えた「2.0GT spec.B」。


	2003年から2009年に販売された4代目「レガシィ」のセダンモデル「B4」。写真は2リッターターボエンジンとビルシュタイン製ダンパーを備えた「2.0GT spec.B」。
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<プロフィール>
1985年、富士重工業に入社。シャシー設計部に配属され、以来19年にわたり「サンバー」「ジャスティ」「インプレッサ」などのブレーキシステムの開発に関わる。2005年に商品企画本部に異動。先代「インプレッサWRX STI」の開発のとりまとめを経て、今回の「WRX」についても高津益夫プロジェクトゼネラルマネージャーのもとで開発のとりまとめを行う。


	<プロフィール>
	1985年、富士重工業に入社。シャシー設計部に配属され、以来19年にわたり「サンバー」「ジャスティ」「インプレッサ」などのブレーキシステムの開発に関わる。2005年に商品企画本部に異動。先代「インプレッサWRX STI」の開発のとりまとめを経て、今回の「WRX」についても高津益夫プロジェクトゼネラルマネージャーのもとで開発のとりまとめを行う。
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足まわりにこだわりあり

――S4はスバルでいう「スポーツトロニック=CVT」ですが、海外ではいまだにCVTへの拒否反応が強いと聞きます。

CVTは海外だと“モーターボート・エフェクト”などという言葉で、エンジン回転一定で速度だけが上がっていく特性がネガティブにとらえられていて、われわれもその点はかなり気にしました。そこで、今回はステップ変速なども採り入れて、CVTのネガなイメージをいかに解消するかに苦心しました。

――従来型の5段ATを使うという選択肢はなかったのですか?

従来の5段ATはトルク容量が350Nm(35.5kgm)で、今のDITエンジンには耐えられません。エンジンをディチューンすれば5段ATを使えないことはないですが、それでは本末転倒だろうという判断です。

――WRXでもレヴォーグと同様に、2種類のダンパーが用意されていますね。レヴォーグと比較すると、WRXのほうがダンパーによる乗り味の差が小さい気がしますが。

レヴォーグでは、標準ダンパーが正立式で、ビルシュタインが倒立式……というレイアウトのちがいがあります。キャンバー剛性などは倒立式のほうが確実に高いです。それに対して今回のWRX STIは標準ダンパーもビルシュタインと同じ倒立式になっています。
また、WRXのフロントのロワアームは、全車が後ろ側のブッシュをボールジョイントにした鍛造アルミ製なんです。その点、レヴォーグの標準ダンパー仕様は前後ともゴムブッシュの標準的なロワアームで、ビルシュタイン仕様のみが鍛造アルミ。そのあたりがWRXの走りに出ていると思います。

「WRX S4 2.0GT-S EyeSight」
「WRX S4 2.0GT-S EyeSight」 拡大
「DIT」と呼ばれる、「WRX S4」の2リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジン。「レガシィ」や「レヴォーグ」にも搭載されているもので、最高出力300ps、最大トルク40.8kgmを発生する。
「DIT」と呼ばれる、「WRX S4」の2リッター水平対向4気筒直噴ターボエンジン。「レガシィ」や「レヴォーグ」にも搭載されているもので、最高出力300ps、最大トルク40.8kgmを発生する。 拡大
「WRX S4」に搭載される高トルク対応型のCVT。なお、海外仕様には6段MTも用意されている。
「WRX S4」に搭載される高トルク対応型のCVT。なお、海外仕様には6段MTも用意されている。 拡大
「WRX」シリーズは、全グレードでフロントサスペンションに鍛造アルミ製のロワアームを採用している。
「WRX」シリーズは、全グレードでフロントサスペンションに鍛造アルミ製のロワアームを採用している。 拡大

エンジンパワーをフルに使うために

――STIのパワートレインは先代からのキャリーオーバーですね。その上でシフトフィールなどを改良しているそうですね。

基本ハードウエアはキャリーオーバーです。その意味では余計なコストはあまりかかっていないのですが、細かい部分では、エンジニアがアイデアを出しあって改良しました。
EJ20型エンジンもたしかにハードウエアは変わっていませんが、例えばアクセル操作に対する“ツキ”は大きく向上しています。簡単にいうと、従来モデルでは、アクセル操作に対してエンジンのスロットルを意図的に“ジワッ”と開けるようにしていました。それはリアサスペンションに(新型WRXと比較すると)少し緩いところがあって、あまり唐突にパワーを出すと、不安定になる部分が少しあったからです。
しかし、新型WRXはシャシーやボディーを相当ハードに仕上げてあって、そういう場面でもグッと粘ってくれるんです。そのおかげで、エンジンの特性をよりフルに近いカタチで使っても、走ってくれるんです。

――最後に素朴な疑問なんですが、STIの大きなリアスポイラーは本当に効いているのですか?

もちろん効いていますよ(笑)。新型WRXはリアのトランク形状などを工夫して、なにもつけない素の状態でゼロリフトになっています。スポイラーのついたSTIではそこからさらにダウンフォースを発生させていますが、空気抵抗そのものはスポイラーがあってもなくても変わりません。
純粋な空気抵抗がもっとも小さいのは、S4にリアのリップスポイラーを追加した状態で、それですと、ほぼゼロリフトのままCd値が0.002ポイント上がっています。

(インタビューとまとめ=佐野弘宗/写真=高橋信宏)
 

「WRX STI Type S」
「WRX STI Type S」 拡大
「WRX STI」に搭載される「EJ20」型2リッター水平対向4気筒ターボエンジン。最高出力308ps、最大トルク43.0kgmを発生する。
「WRX STI」に搭載される「EJ20」型2リッター水平対向4気筒ターボエンジン。最高出力308ps、最大トルク43.0kgmを発生する。 拡大
「WRX STI Type S」に標準装備されるリアウイング。「WRX STI」にもオプションで用意されている。
「WRX STI Type S」に標準装備されるリアウイング。「WRX STI」にもオプションで用意されている。 拡大
 
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佐野 弘宗

佐野 弘宗

自動車ライター。自動車専門誌の編集を経て独立。新型車の試乗はもちろん、自動車エンジニアや商品企画担当者への取材経験の豊富さにも定評がある。国内外を問わず多様なジャンルのクルマに精通するが、個人的な嗜好は完全にフランス車偏重。

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