ランボルギーニ・ウラカンLP610-4(4WD/7AT)
“最楽”のランボルギーニ 2014.09.11 試乗記 “売れっ子スーパースポーツ”「ガヤルド」の跡を継ぐ、ランボルギーニのニューモデル「ウラカン」に試乗。ドライブフィーリングから燃費まで、その実像をリポートする。スイッチだけでも個性的
地を這(は)うような低いシートに身を沈めると、内装がカクカクしているのがまず印象的だった。ダッシュボードの造形も、スイッチやボタン類も、デザインがいちいち角張っている。
センターパネルの質感はけっこうプラスチッキーだ、というか、プラであることを隠そうとしていない。計器類はすべてカラフルな液晶メーター。それやこれやで、コックピットにはどこかゲームマシン的なムードが漂う。しかしこれも外観同様、決してフェラーリと見間違われまいというランボルギーニ渾身(こんしん)の演出と思えば、納得がいく。
変速機のセレクトレバーがすっかりボタンに置き換えられているのは、近年、フェラーリもランボも同じで、ウラカンにはウインカーやワイパーのレバーがない。いずれもスイッチはハンドルの水平スポークに付いている。垂直スポークでひときわ目立つ真っ赤なスイッチは、3択のドライブモード切り替えだ。
駆動系は4WDだが、SUVじゃないからロードクリアランスは見るからに余裕がない。その対策として、フロントの車高を3cm上げるリフティングシステムが備わる。ボタンを押してから、上がりきるまでの反応も早いので、走行中、気になる段差を見つけた時はすかさず車高アップを励行した。
なにしろ、試乗車はおそらくこの時点で日本に数台しかないウラカン。あまり遠くへは行かないでという走行距離制限を申し渡されていた。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
ビッグバイクを思わせる
「ガヤルド」の後継モデルが、ウラカンLP610-4である。“LP”、つまり縦置きミドシップの5.2リッター90度V10ユニットは、新たに筒内噴射とポート噴射の二刀流化などの改良を受けて、ガヤルドLP570-4よりさらに40ps増の610psを得た。
変速機はランボ初のデュアルクラッチ式7段。カーボン繊維強化プラスチックとアルミ混成のモノコックを採用した結果、ガヤルドよりひとまわり大きくなったにもかかわらず、車重は1422kg(カタログ値)に抑えられた。加速性能は0-100km/h=3.2秒。6.5リッターV12を搭載するフラッグシップの「アヴェンタドール」(同2.9秒)には及ばないが、どんなガヤルドよりも速くなった。
ウラカンの核心は、コックピット背後に搭載されたこのパワーユニットである。ドライブモードをノーマルにあたるSTRADAに入れてフツーに走っていると、意外におとなしく、マナーも申し分ない。だが、いったんスロットルを踏み込めば、どこからでもズバン!と猛烈な加速をみせる。ドライブモードをSPORTやCORSA(レースの意)に上げると、排気音はさらに迫力を増し、回転合わせのブリッピングは気がひけるほど派手になる。
加速時の迫力はさすが自然吸気大排気量ユニット、と言いたいところだが、しかし、エンジンの回転フィールそのものは、とても5.2リッターものマスを感じさせない。
センターパネルの“M”ボタンを押し、マニュアルギアモードに入れて引っ張れば、この重厚長大エンジンは8000rpmちょっとまで回る。回すと世界が変わるような“回し甲斐”といい、回転域によって大きくなる金属質のメカ音といい、回転フィールの点で一番似ているのはナナハン以上のビッグバイク用マルチエンジンである。
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
拡大 |
人を選ばぬ高性能
コーナリングはもちろんすばらしく速く、そして楽しい。ステアリングホイール径は36cm。6時の位置にツブシが入った垂直方向は34cmしかない。微舵(びだ)応答の鋭さは笑ってしまうほどだが、決して神経質ではない。
電動アシストされた操舵力はSPORTやCORSAモードでも重すぎることはなく、STRADAでは爽やかに軽い。ガヤルドはメーター枠の上部が、低いアイポイントの視界を邪魔したが、ウラカンの前方視界は広く、清明で、コーナーのインを狙い澄ましたようにつくことができる。
新しいデュアルクラッチ式7段変速機は、スポーツ性と実用性の両面でこれまでのeギアをしのぐ。間髪を入れないダイレクトな変速は、いつでもズバン!と加速するウラカンらしさに大きく貢献しているし、一方、車庫入れ時のような極低速域のマナーも向上した。唯一、ケチをつけるとすれば、シフトパドルがゾウの耳みたいにデッカイこと。ストロークも大きくて、せっかくのパドリングを大味に感じさせてしまうのが残念だ。
虎の子の、最新ランボとのデートはたったの数時間、距離にして180kmほどだったが、そこで感じた結論を言えば、まず、こんなに運転しやすいランボは初めてである。これなら免許取り立ての人でも乗れるね、というのが、この日、つかの間のウラカン体験を味わったスタッフ全員の感想だった。
しかし、ただ扱いやすいだけのスーパーカーなどではないことは、すでに書いた。クルマ好き、わけても「スポーティーに走ることが好きな人」なら、ウラカンに乗ってシビれない人はいないと思う。
運転しやすいくせに、その運転が楽しい。それも楽しさを静脈注射で打たれたようなこんな楽しさは、ちょっと前に乗った「フェラーリ458」にも、新型「911ターボ」にも感じなかった。ウラカンは史上もっともイージー・トゥ・ドライブで、史上もっともファン・トゥ・ドライブなランボである。
(文=下野康史<かばたやすし>/写真=田村 弥)
テスト車のデータ
ランボルギーニ・ウラカンLP610-4
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4459×1924×1165mm
ホイールベース:2620mm
車重:1422kg(乾燥重量)
駆動方式:4WD
エンジン:5.2リッターV10 DOHC 40バルブ
トランスミッション:7段AT
最高出力:610ps(449kW)/8250rpm
最大トルク:57.1kgm(560Nm)/6500rpm
タイヤ:(前)245/30ZR20 90Y/(後)305/30ZR20 103Y(ピレリPゼロ)
燃費:12.5リッター/100km(約8.0km/リッター)(1999/100/EC 複合モード)
価格:2970万円/テスト車=3168万6336円
オプション装備:カーボンセラミックディスク&ブラックキャリパー(12万2688円)/タイヤ空気圧感知システム<TPMS>(11万5992円)/マグネト・レオロジカル・サスペンション<磁性流動体内蔵ダンパー>(32万7456円)/ランボルギーニ・ダイナミック・ステアリング<LDS>(23万2740円)/フル電動&ヒーテッドシート(27万2808円)/パークアシスト<センサー+リアビューカメラ>(38万1888円)/アンチ・セフト・システム<盗難防止システム>(7万5492)/有償インテリア<バイカラーエレガンテ>(13万6512円)/ブランディングパッケージ(11万5992円)/ルーフライニング&ピラー<スムーズレザー>(13万6512円)/フロアマット<レザーパイピング&ステッチ付き>(6万8256円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:1973km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(1)/高速道路(7)/山岳路(2)
テスト距離:258.0km
使用燃料:44.7リッター
参考燃費:5.8km/リッター(満タン法)

下野 康史
自動車ライター。「クルマが自動運転になったらいいなあ」なんて思ったことは一度もないのに、なんでこうなるの!? と思っている自動車ライター。近著に『峠狩り』(八重洲出版)、『ポルシェよりフェラーリよりロードバイクが好き』(講談社文庫)。
-
フェラーリ849テスタロッサ スパイダー(4WD/8AT)【海外試乗記】 2026.7.15 歴史ある車名が与えられた「フェラーリ849テスタロッサ」は、従来型から大幅な進化をとげた高性能スポーツカーだ。では、そのオープントップバージョンの走りはどうか? 日本での発売を前に、フェラーリ通として知られる西川 淳が試乗した。
-
ポルシェ・カイエン ターボ エレクトリック(4WD)【試乗記】 2026.7.15 ポルシェ最新の電動ハイパフォーマンスSUV「カイエン エレクトリック」。そのラインナップのなかでも、最高峰に位置するのが「カイエン ターボ エレクトリック」だ。最高出力1156PS、最大トルク1500N・mという、とてつもないパフォーマンスの一端に触れた。
-
プジョー308 GTハイブリッド(FF/6AT)【試乗記】 2026.7.14 マイナーチェンジで内外装がブラッシュアップされた「プジョー308 GTハイブリッド」に試乗。大胆なデザインのフロントフェイスに目を奪われるが、ステランティス自慢の1.2リッター直3マイルドハイブリッドを搭載する最新モデルの仕上がりと走りやいかに。
-
日産キックスG(FF)/キックスX e-4ORCE(4WD)【試乗記】 2026.7.13 日産のコンパクトSUV「キックス」が、いよいよフルモデルチェンジ! デザインもパワートレインもプラットフォームも刷新された新型は、見ても乗っても長足の進化が感じられる力作となっていた。日産の再生を担う重要モデルの仕上がりを報告する。
-
BYDシーライオン6 AWD(4WD)【試乗記】 2026.7.11 BYDのプラグインハイブリッド車「シーライオン6」の4WDモデルが登場。先に登場したFFモデルにリアモーターを追加したという説明は間違いではないが、実はエンジンが違うばかりか、加速力にも別物といえるくらいの差がつけられている。300km余りをドライブした印象をリポートする。
-
NEW
ホンダCB750ホーネット(6MT)【レビュー】
2026.7.18試乗記ホンダのスポーツネイキッド「CB750ホーネット」が、話題の「E-Clutch」を獲得。ライディングの幅を広げる自動クラッチシステムは、パンチの利いた2気筒のストリートファイターにどんな走りをもたらすのか? その仕上がりを確かめた。 -
人気沸騰「ランクル“FJ”」を手にするもうひとつの方法
2026.7.17サブスク「KINTO」で「ランドクルーザー“FJ”」に乗る<AD>2026年5月に発売されるやオーダーが集中し、受注停止となってしまった「ランドクルーザー“FJ”」。しかし、あきらめるのはまだ早い。“FJ”とのカーライフを実現できる、トヨタの新車サブスクリプションサービス「KINTO」という手段があるのだ。 -
新型「アルピーヌA110」はどんなクルマに? グッドウッドを駆けたテストカーから読み解く
2026.7.17デイリーコラムアルピーヌが次期型「A110」を示唆する「A110フューチャー」を初公開。グッドウッドで走る姿を披露した。そこから分かる未来のA110の姿とは? 電動化がアナウンスされているが、エンジン車の設定はあるのか? 公式発表とテストカーの姿から深掘りする。 -
ベントレー・ベンテイガ スピード(4WD/8AT)【試乗記】
2026.7.17試乗記「ベントレー・ベンテイガ」に最上級グレードの「スピード」が登場。ブランドの在り方をストレートに伝える名称のトップパフォーマンスモデルだが、従来型との最大の違いはその心臓部にV8エンジンが積まれていることだ。およそ不満のあろうはずもないが、最新モデルの仕上がりをリポートする。 -
写真で解説する新型「日産エルグランド」
2026.7.16画像・写真新型「日産エルグランド」は、日本伝統の美をデザインに生かしながら、同社独自の最新技術を組み合わせて“走りのよさ”も徹底追求したという意欲作。その見どころを写真とともに解説する。 -
第970回:クルマの背中に浮かぶ文字たち――空いた字間が語るもの
2026.7.16マッキナ あらモーダ!アナタは自動車のボディー背面に施されたメーカー/ブランドのロゴについて考えたことがあるだろうか? 字間を詰めたり、広げたり、時代によって変わるそのトレンドと、その背景にあるメーカーの思惑を、自動車史にも精通する大矢アキオが語る。





























