第69回「ボルボS60ポールスター」

2014.10.03 水野和敏的視点 水野 和敏

800万円クラスの高級車なら……

今回の主役は「ボルボS60ポールスター」です。北欧随一のハンサムカー「ボルボS60」を、同じくスウェーデンのポールスター社がトータルチューンしたモデルです。ポールスター社はボルボのレースパートナーで、1996年の設立以来、BTCC(イギリスツーリングカー選手権)やWTCC(世界ツーリングカー選手権)などのレースを戦ってきました。ボルボにおけるポールスターバージョンの位置付けは、BMWでいうところの「M」、メルセデス・ベンツの「AMG」を目指したモデルと考えればわかりやすいでしょう。

試乗したS60ポールスターだけでなく、ワゴンの「V60ポールスター」もあり(販売台数から見たら、むしろこちらの方が主役かもしれません)、2車種合わせて全世界で750台の限定販売となっています。日本へはS60が30台、V60が60台割り当てられています。価格はS60ポールスターが799万円、V60ポールスターが819万円です。

さて、実際に車両を見ていきましょう。カタログモデルのどれよりも高価な800万円のボルボ……とちょっと驚きながら外観をチェックしていくと、この「レーベルブルー」と呼ばれる鮮やかなボディーカラーの、塗装の仕上がりが気になりました。塗装面への映り込みが歪(ゆが)んでしまっているのです。800万円という車両価格を考えると、もうちょっと頑張ってほしい……と思ってしまう塗装コンディションです。

車両の後部に回ると、トランクリッドにも気になるところがありました。リッドを支えるダンパーがかなり強力なので、大の大人でも、思いのほか力をこめないとスムーズに閉められないのです。私のような男性でもそう思うのですから、小柄で力も弱い女性にとっては決して楽ではないはず。また、これだけダンパーが強いと、雨上がりのリッドが汚れた状態で閉めたときに、手の汚れだって気になります。

ささいなことのようですが、こうした操作感は、「高級であること」に直結する重要な要素なのです。800万円を超える高級車なのですから、お客さまへの配慮がもっとあってもいい。厳しいことを言わせてもらいますが、こと「高級」に関して、メルセデス・ベンツやBMWと比較して、ボルボはまだ勉強すべきことがあるように思います。

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