BMW X4 xDrive35i Mスポーツ(4WD/8AT)
意外の連続 2014.10.31 試乗記 2014年10月に国内デリバリーが始まった、BMWの新型クロスオーバー「X4」。既存のBMW車とはどう違う? その価値はどこにある? パワフルな最上級モデルで確かめた。「ワタシ、遊びもやりますよ」
毎度私事で恐縮だが、数カ月前、生まれて初めてBMW(中古の「335iカブリオレ」)を買って以来、乗るたびに経験したことのないエリート感に酔っている。それは、高い背広を着ている感覚だ。
なにせ、高い背広など着る機会がまったくない(持ってない)自営業者なので、とても新鮮なのである。こういう感覚は、ドイツのプレミアムブランドだけのもので、イタフラ車や国産車では味わえない。
購入当初、回転が重かった3リッター直6ツインターボエンジンも、本線料金所からのダッシュを10発くらいかましたところ、見違えるように回るようになった。この緻密な回転感こそジャーマンクオリティー。偉くなったような気分満点だ。
が、人間ゼイタクなもので、ただエリートなだけでは満足できず、「遊びもやりますよ」というポーズを見せたい。私はそれを、メタルトップのカブリオレで表現しているが、このX4は、SUVとスポーツクーペの合体テイストでアピールする。
まずSUV(BMWはSAVと言っているが)というだけで、8割がた遊びに振っているわけだが、ここにスポーツクーペの要素が加わると、フォーマル感と肉食感と金持ち感が加算される。
フォーマル感は、スピード志向がトラディショナルな価値観であるがゆえ。肉食感は、直線だけでなくコーナーでも負けたくないという意思が垣間見えるため。金持ち感は、結局そんな欲張りな人間は金持ちに違いないという雰囲気が漂うからである。
価値ある“金持ち感”
初めて「X6」を見た時は、「いくらなんでもやりすぎだろ!」と思ったものだ。象がチーターと競争しようというんだから。自然との調和を大事にする東洋人としては、どこまで貪欲なんだとあきれた。
が、X4には、ボディーサイズが手頃な分、そこまでの欲張り感はない。クルマにそれほど詳しくない人が見れば、ちょっとシュッとした中型SUVに見えるだろう。
しかし、「X3」と並べると、明らかに少しフォーマルで肉食で金持ちっぽい。価格差は約20万円だが、100万円くらい高く見える。なぜ100万円かといわれると根拠はないが、なにしろよりフォーマルで肉食で金持ちっぽいので、それくらいは違って見える。この時点で、X4の存在意義は「ある」。
今回乗ったのは、トップモデルの「X4 xDrive35i Mスポーツ」。エンジンはわが愛機の進化型たる3リッターツインパワーターボだ。なにしろこのエンジンは、とてつもなく美味だ。低中速でのシルキーな回転フィールも甘美だが、絶対性能も素晴らしい。これさえ載ってれば、「7シリーズ」だろうがなんだろうがガツンと走らせられる。
そう思っていたのだが、意外にガツンと走らない。もちろん十分速いが、もっとガツンと来ると思ったので少し拍子抜けした。
スペックを見ると、車両重量1900kg。こんなに重いのか……。見た目が割とシュッとしているので、ここまで重いと思いませんでした。先日乗った「435iグランクーペ」はガツンと加速しまくったが、あれはこれより300kg軽かった。さすがに300kgの差は大きい。しかもX4は四駆、駆動抵抗も大きい。こんなもんで妥当ですね。
らしからぬコーナリング
それより素晴らしいのは足まわりだ。まず乗り心地。近年のBMWらしく、ダイレクトかつしなやかでエリート感満点だ。さすがにタイヤ/ホイールサイズが大きいので、バネ下のバタつきは乗用車系より強いが、車高および着座位置の高いSUVの弱点である横方向の揺れがとても少ない。
SUVの弱点は、路面の凹凸でボディーが左右に揺れて、乗員の脳もゆさぶられる点にある。後席だと、何かにつかまっていないと体もぶつける。これはSUVの宿命だが、X4はそれがほとんど感じられない。
コーナーでのロールも最小だが、日常走行では、歩道の段差を斜めに乗り越える時などの、左右への「ユサユサッ」というのが実に小さい。ゴンという突き上げはしっかり吸収するが、大きなロールは決して許さない先進のサスペンションテクノロジー。これがスポーツ走行時だけでなく、コンビニへの進入時も遺憾なく発揮される。さすがBMW。
コーナーを攻めると、SUVのハンディはほぼまったく感じない。なにしろロールがほとんどないし、重心の高さも感じない。公道ならほぼニュートラルステアで曲がりまくる。「きっとクルマが何かやってんだろうな」というのには今や慣れっこだが、間違いなくクルマが「何かやって」、速く安定して曲がってくれる。
使えるスポーツカー
四駆を含む元の素性もさることながら、BMW自慢のパフォーマンス・コントロール・システムが、コーナリング中にアンダーステアの兆候を察知すると、コーナー内側のリアホイールに軽くブレーキをかけると同時に、エンジンの駆動トルクを増加させ、外側のホイールへの駆動力を高めて、ニュートラルで曲げてしまう。
クルマが何かやってなきゃこんなに速く安定して曲がるはずがない! という予感はするが、フィーリングはまったく自然。あくまで速すぎるがゆえに「何かやってんな」と勘繰るのみだ。さすがBMW。
つまりこのクルマ、重い分加速では若干ハンディがあるが、走りの総合評価ではSUVのハンディはほぼゼロで、見晴らしがいい分がプラス査定、ということになる。とにかくスポーツカーのように走ります。
最後にスペースユーティリティーをチェックすると、これが意外と広い。前席は「3シリーズ」以上、後席のヘッドクリアランスも「4シリーズ グランクーペ」より余裕がある。見晴らしもいいので、全体に広く感じる。
ラゲッジも、BMWとしては左右幅がある。5リンクにしてはリアサスの出っ張りが小さいと思ったらさにあらず、単に全幅が広い分、ラゲッジ幅も広いだけのようだが、クーペ風のルーフラインからして容量に期待しないので、期待値を上回る広さがあり、まったくもって実用的だ。
ラゲッジには国産コンパクトカーでおなじみのレジ袋フックが? と思ったら、セパレートネット固定用のフックでした。こんなところにレジ袋引っ掛けませんよね。だいたいドイツにはレジ袋がないか。
いずれにせよ、見た目に似合わず実用的でフレンドリーな肉食獣でした。これで約800万円。高いけど、思ったより高くない。
BMWは、いっそSUVでバリオルーフのカブリオレを作ってくれないか。小粋なバブルバカグルマができるだろう。
(文=清水草一/写真=郡大二郎)
テスト車のデータ
BMW X4 xDrive35i Mスポーツ
ボディーサイズ:全長×全幅×全高=4680×1900×1625mm
ホイールベース:2810mm
車重:1920kg
駆動方式:4WD
エンジン:3リッター直6 DOHC 24バルブ ターボ
トランスミッション:8段AT
最高出力:306ps(225kW)/5800rpm
最大トルク:40.8kgm(400Nm)/1200-5000rpm
タイヤ:(前)245/40R20 99Y/(後)275/35R20 102Y(ピレリPゼロ<ランフラット>)
燃費:12.1km/リッター(JC08モード)
価格:790万円/テスト車=855万3000円
オプション装備:アドバンスド・アクティブ・セーフティー・パッケージ(18万5000円)/電動ガラスサンルーフ(17万5000円)/BMWコネクテッド・ドライブ・プレミアム(6万1000円)/Mライト・アロイ・ホイール・ダブルスポーク・スタイリング310M(14万5000円)/メタリックペイント(8万7000円)
テスト車の年式:2014年型
テスト開始時の走行距離:3502km
テスト形態:ロードインプレッション
走行状態:市街地(2)/高速道路(8)/山岳路(0)
テスト距離:128.1km
使用燃料:16.8リッター
参考燃費:7.6km/リッター(満タン法)/7.4km/リッター(車載燃費計計測値)

清水 草一
お笑いフェラーリ文学である『そのフェラーリください!』(三推社/講談社)、『フェラーリを買ふということ』(ネコ・パブリッシング)などにとどまらず、日本でただ一人の高速道路ジャーナリストとして『首都高はなぜ渋滞するのか!?』(三推社/講談社)、『高速道路の謎』(扶桑社新書)といった著書も持つ。慶大卒後、編集者を経てフリーライター。最大の趣味は自動車の購入で、現在まで通算47台、うち11台がフェラーリ。本人いわく「『タモリ倶楽部』に首都高研究家として呼ばれたのが人生の金字塔」とのこと。
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